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西野亮廣が「シンプルに頑張る」との誓いとともに チャレンジングな舞台に立つ——舞台『たけしの挑戦状 ビヨンド』

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西野亮廣 撮影=河上良

舞台『たけしの挑戦状 ビヨンド』上演決定ーーー。1986年12月10日発売された、ビートたけし監修によるファミコン用ゲームソフト『たけしの挑戦状』。所帯持ちのサラリーマンである主人公が南海の孤島に眠る財宝を探しに行くという冒険ストーリーなのだが、そのゲームにはビートたけし監修ならではの奇想天外な仕掛けが埋め込まれすぎており、攻略本をもってしてもクリアできないと出版社に苦情が殺到。“クソゲー”と呼ばれながらも話題が話題を呼んで80万本という驚異の売り上げを誇ったこの作品が、発売より34年を経て舞台化するというのである。


1986年発売のクソゲーを/34年経って/舞台にする。それこそ挑戦だらけのこの『たけしの挑戦状 ビヨンド』、主演を務めるのが西野亮廣(キングコング)だ。謎が多くチャレンジングにも程があるこの作品が「おそらく主演舞台は最初で最後になる」という西野亮廣に、今の思いを語ってもらった。

西野亮廣

——とにかく挑戦要素ばかりのこの作品ですが、主演のお話が来た時の第一印象から教えてください。

まずは「危ない」と思いました。ゲームの……しかもクソゲーの舞台化ですから、これは本当に企画会議で悪ふざけして通っちゃったやつなんだろうなと。でもその一方で、僕はあれやこれやと好き勝手自分のペースで仕事をやらせていただいているので、それだと自分ができる範囲内のことばかりになってきちゃうんです。それはそれで問題だなあと思っていて、自分のハンドルが効かないところに出ていかないといけないなと思っていたところにこのお話が来たという。危ないとは思ったんですけど、この舞台を手掛けられるのが上田(誠/ヨーロッパ企画)さんだと聞いて、死ぬかもしれませんが上田さんとなら面白そうだと思いましたね。

——お話を聞いたときに、どんな内容の舞台になるのかという想像はつきましたか?

いや……上田さんに「どんな舞台になるんですか」と聞いたら、知らないですと言われました(笑)。ちょっと前の段階では『たけしの挑戦状』をやること、自分が出ること、上田さんが脚本演出をやることと、座組みも決まっているのに、どんな内容でするのか誰も知らなかったんですよね。

——それこそ謎らだけですよね。じゃあ主演のお話が来て、それが何役なのかもイメージできなかった?

最初は『たけしの挑戦状』の中に出てくる人なのかなと思ってたんですよ。ゲームの中の人。要は『たけしの挑戦状』というゲーム内でのことを舞台で再現するのかなと思っていたんですけど、ポスター撮影から察するに、『たけしの挑戦状』をやってる人なんだろうなという感じでしたね。

——どんな舞台? と聞かれたら答えにくかったですよね。

はい。これは本当に「わかんねえ」と言うしか……わかんないけど、一生懸命頑張るってことだけは言ってましたね。とにかく一生懸命やる、努力します! と。

——そんなふうに努力します! とストレートに宣言しちゃうほど、この舞台に出ようと思えた理由はあったんでしょうか。

20代の頃はよそさまのところに出ていって何かする、ということばかりやっていたんですけど、30代になってからは基本的に自分がちゃんと舵をとって、予算や広告も含めてという仕事のやり方を10年ぐらいやってきて、ある程度自分の都合のいいように、心地のいいようにコントロールできるようになったんですけど、やっぱり「これでいいんだっけ?」というのはあって。これはよく言っているんですけど、以前『ゴッドトタン』という番組に出させていただいていた時に、おぎやはぎさんと劇団ひとりさんがいつも、そんなとこ突っ込んでいってどうなるんだ! ということばかりするんですね。僕も含めた4人でなんの脈絡もないところにせーので突っ込んで行って、だいたい失敗するんですけど、でもその時々でこうやったら面白いなとポイントが見つかる瞬間が面白くて。その時って絶対自分のハンドルの外側のアクションなので、「あ、こんな面白いことあんの?」 ということが見つかった時はすごいうれしかったというのを、今度はここに求めています。

——予想の外側を見てみたい、と。

そうですね。やっぱりもう20年やっていて、上田さんも絶対そうだと思うんですけど、こうやったらこれぐらいの結果が出るというのも、こういうことをやれば大体満足してもらえるんだろうなあというのもなんとなくわかる。でも、余生をその繰り返しで生きていいんだっけ? と、上田さんも僕もそんなところにぶち当たる世代だと思うんです。これはもうできたじゃん、次行こうとなった時に、誰も登ったことのない山を登ろうというのが今回の舞台だと思うんですけど、登るパートナーとして上田さんや共演者のみなさんが一緒に登ったら楽しそうだしというところですね。

西野亮廣

——先ほどから上田さん愛が止まらないんですが、そこまで上田誠という人に心掴まれる理由というか、西野さんへの口説き文句はあったんですか?

上田さんの口説き文句は……そんなになくて、LINEで「あざっす、おねがいしゃっす!」 みたいな感じなんですよ。舞台や脚本や演出上、非常に有名な方ですが、普段は基本的にあれやこれや喋る人ではないんです。ただ、以前京都で一緒に飲んだんですけど、その夜が非常に楽しかったんです。実はわざわざ新幹線に乗って行ったんですよね、京都まで。ふたりで飲もうって約束をして、それで行きます? と。上田さんが用意してくださったお店で飲みました。

——わざわざ! よっぽどいい夜だったんでしょうね。

はい。そこでずっとずっとエンタメの話をしたんですが、それが非常に面白かったんですよ。ずっと面白かったんです。この方といつかお仕事したいなあと思っていたそのちょっと後ぐらいにこのお話いだたいて、是非是非と。

——おふたりで飲んだ時に強烈に覚えていることはありますか?

すごく面白いなあと思ったのは物語を作るうえでの話で、「人は基本的には横の移動を把握できない」と。つまり、『ONE PIECE』とかも、どれだけ漫画の中で西の海とかグランドラインとか説明されても、ほとんどわかってないと思うんです。みんな地図の平面ではわかってない。でも唯一『ONE PIECE』の中で空島は、あぁ上に行ったんだなと理解できている。どうやら人は縦移動は把握できるけども、横移動は把握できないとなった時に、縦移動の物語を書く方がその世界観を覚えてもらいやすいですよね、みたいな話で盛り上がって。そういうのがいちいち面白かったという7、8時間の飲み会でしたね。​

——自分の予想のちょっと外側を上田さんが突いて話してくれるのがツボに入った?

そうですそうです。面白かった。あと、説明することが非常に下手だというのもあるんですが、よく人から「何言ってんの?」と言われるんですね、僕。例えば海外で日本人に会ったら、すごく安心することないですか? あ、喋れる人いた! と一気に好きになる感じ。上田さんはあの感じに近いですね。

——あぁ、共通言語を持つ人を見つけたみたいな!

そうそう。年に1人2人現れるんですよ、そういう人が。会話ができるって本当に嬉しいんですよ。

——その出会えた喜びを上田さんに伝えたことはあるんですか?

本人に言うのは恥ずかしいんで言ってないですけど、京都で飲んだ帰り道はずっとニヤニヤしてましたね。嬉しいと思って。面白い人いた、みたいな感じで。

——そんなふうにいい関係性って飲み会から生まれることも多いですよね。

そうですね。会議の場とかだといいこと言わないといけないというのが乗っかってるんで、飲み会の時はその人の話の聞き方だとか、どういう質問が飛んでくるとか、どういうところを膨らますかというのは全部出ますよね。

西野亮廣

——上田さんは共通項を感じたうえで、自分のまだ見えない部分を引き出してくれそうと思えたということですか?

はい。あとやっぱり会話ができるってこんな安心なことはないです。どんな難しい問題がきても一緒に会話ができる人だったら、何とかこれを解こうというふうになる。それこそ会話ができなかったら難しいんですけど、上田さんは話を聞いてくださるんで、絶対に面白いんだろうなというのはあります。大変な問題が来ても「これどうやって解きます?」 みたいな、絶対楽しくなるんだろうなという安心感はありますよ。

——努力したい! とお話される一方で、別のインタビューでは「逃げると後悔する」と仰っていました。どこかに逃げたい気持ちがあったということかなと思ったのですが、その逃げたい気持ちはどこからか湧いていたんですか?

『たけしの挑戦状』を舞台化するというところですね。クソゲーの舞台化というのがどうなんだろうと……。クソゲーの舞台化を面白そうだなと思ってくれる方も一部いると思うし、今の段階では、「どうなんの?」 という意見が大半を占めてると思いますね。

——謎は多いなとは思いますが、ヨーロッパ企画が手掛けるならこんな感じなのかなという想像は少しだけならつきます。

はい。でもそれぐらいですよね。そういった作品に手を出しておかなかったら、絶対後悔すると思ったんです。例えば、終わってからあの舞台めちゃくちゃ面白かったよということを第三者から聞かされた時に、絶対に後悔するなと。もう、月並みですが、後悔だけはやっぱりしたくないですよね。後悔だけは。やってやらなきゃよかったなということはこれまでになくて、やっといたらよかったという後悔は過去何度か……。その後悔だけは絶対したくないと思うんです。

——それだけこの作品が「逃した魚はデカい」ということになるだろうと。

そうです。それだけは絶対に嫌なんですよ。言ってしまえばおおよその結果が見えてるものならば、別にそれを受けなくてもおおよその結果が出て、作品面白かったよと聞いても、まあそうだろうなあってぐらいなので後悔することは全然ないんですけど、今回のこの作品に関してはやらなかったら後悔しそうだなあっていうのは大きかったですね。。

西野亮廣

——舞台の公式HPにアップされているYouTubeの対談では上田さんに「なんでこの企画が通ったんですか?」と質問をされていましたけど、逆に西野さんはなぜこの企画が通ったんだと思いますか?

いや、疲れてたんじゃないですかね? みなさんが(笑)。会議が長くて、そういうのないですか? あれ、深夜だったから面白かったよねっていうの。

——確かにありますよね。でもそういう時に選んだものが面白くなることも多々ありますよね。

そうですね。ただ、1年目の方が制作スタッフさん含めてやるのと、実績を積まれて修羅場くぐられたスタッフさんがやるのとは全然違うと思っていて。同じ深夜の思いつきでも後者の方はなんとかする腕力はやっぱりあるんで(笑)。しかも遊びの部分をたくさん持っているし、腕力の出ししろはあるんだろうなという。

——ということは舞台が始まってからもいろんなことがどんどん変化して行きそうですね。

むちゃくちゃ変化しそうですよね。メンバーもクセ強そうな人ばっかりだもんなあ。

——そう考えるとここ大阪公演が最後になるので……。

なるほど! もう違う作品になってるんじゃないですか?面白いですね。

——そんな4月上旬から5月上旬の1カ月間の上演期間を走り切る決意表明するとしたら、どんな言葉になりますか?

もう、「逃げない」ことですよね。絶対に逃げない。難しいのはもうわかっているし、一番大変なのは上田さんだと思うんですけど、上田さんの気持ちを勝手に代弁しているような感じになっておりますが、ひとつは逃げないこと。逃げないで頑張る! シンプル! むっちゃ頑張ると決めたんです。珍しく。多分、自分が舞台に出るというのは最初で最後のはずなんです。10年後に撤回しているかもしれませんが、次の誕生日で40歳になるんですけど基本的に表に出るつもりはもうなくて、裏方でやっていくというのは決めていて。こういった形でドンと前に出るのは、舞台ではおそらく最初で最後だろうなと思うので。期間中の他の仕事なるべく断ったんですよ。この期間中はとにかく集中して、全力でやると決めました。

——大人が「シンプルに頑張る」ってちょっとスゴそうです。

でも、頑張るって決めたんです。

——ちなみに今年、節目の40歳となる西野さんの頑張りどころとは?

一応、ディズニー超えるとか言っちゃってるんですよ。言っちゃってるので、まずは年末の『映画 えんとつ町のプペル』が初陣なので、内容はもちろんですが、いわゆる観客動員数として勝つ、と決めました。まずは日本で勝ってというところですかね。オンラインサロンの『西野亮廣エンタメ研究所』の方でも、世界中に小学校を作ったり、広告代理店みたいなことをやったり、映画を作ってサロン内だけで見られるようにしたり、本当にいろいろやってますね。全部頑張ります。練習とか努力とかコツコツやするの大好きなので、頑張ります!

『たけしの挑戦状 ビヨンド』

取材・文=桃井麻依子 撮影=河上良

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