唯一無二の馬券師・弥永明郎『伝授』第22回 パドックを見ていて「先出しする馬」や「小柄な馬」をどう考えるか?
パドックを見ていて、読者の皆さんはどう判断していいのか分からない事があるかもしれない。前回に引き続き、パドックでの馬の見方について俺なりの考えを伝授したい。
・先出しは気性の問題
パドックからコースへ先出しをする馬を気にする人はどれくらいいるだろうか?
先出しする馬は気性が悪いことがほとんど。JRA側はなるべく先出しにしないで欲しいと言っているけど、先に出さないとテンパってしまう馬は申請すると先出しできる。
パドックで他の馬たちと一緒に歩いていると、気持ちが高ぶり過ぎてしまうから、はやく広い馬場に出して、気持ちを楽にさせた方が良いよねと思う馬ばかり。
パドック行って気性の悪そうな馬の調教師に「これ先出しする?」と聞くと、だいたい「するわ」という。
馬券的には、それほど気性的に不安があるなら、買いたくないと思うということもある。レースでコントロールが利かないからな。
馬番が若いにもかかわらず、パドックの一番後ろを歩く馬がいる。あれは前に牝馬がいると嫌というケースが一番多い。他には前後にうるさい馬がいて影響を受けてしまうとか、パドックで後ろから突かれるのが嫌という場合もある。
不思議なもので、こういった注文の付く馬が多い厩舎というのがある。その調教師が少し心配性だということもあるし、ルールの範囲内で少しでも自分の馬にとってのマイナス要素を減らしたいと考えているのだろう。
・小柄な馬はコースによって取捨を判断
400キロ前後しかない小柄な馬は、俺はコースによって割り引くか判断する。例えば中山競馬場のような坂があるところは、やはり坂を駆け上がる時にパフォーマンスが落ちる。
また小さい馬は馬の間に入ると動けないので、頭数が多くて内枠に入った場合も嫌う。風が強い時にも、風力に負けて走りがブレてしまう。
2021年の大阪杯を逃げ切ったレイパパレは422kgと小柄だった
それと、軽い馬はダートが、あまり良くないと思っている。特にフットワークが軽い馬はダメ。例えば、1ハロンだけを全力で走らせるのだったら、小柄な馬でもそれほど遜色がないはずだ。だけど、ある程度の距離を走ると馬格のある馬の方が勝つことが多いのはスタミナのロス加減に差があるからなんじゃないかな。
ただ最近は砂が軽いケースがあるから、400キロそこそこしかない馬でも、坂のない北海道や新潟なら走る。だから平坦コースなら全く気にならない。とはいえ勝負になるのは1勝クラス、2勝クラスくらいまでで、重賞に行くような馬はほとんどいないけどね。
・日本のパドック周回時間は長いけれど、ファンあっての競馬だから仕方がない
昨年のジャパンカップを勝ったフランスのカランダガン陣営は「日本はパドックをとても長く歩き、馬たちは長い時間、プレッシャーをかけられます」とコメントしていたように、確かに日本のパドックの周回時間は外国と比べて長い。関係者に聞くと、パドックの周回は馬にとってある程度のストレスがあるという。
ただ、馬券の売り上げが重要だから馬は商品なわけで、「今から走る馬をパドックで見せますので、この中から選んで馬券を買ってください」というJRAサイドの意図があるから仕方がない。これが馬券じゃなくて高級ブランド品だとして、商品をぜんぜん見せてくれない店じゃ買わないだろ?
俺は同じ馬のパドックは1周目と2周目を見れば十分。1周目でもう見なくていいと思う馬が半分くらいいるから、それ以外を2周目でチェックする。だから3周目にもなると飽きてくるから引き揚げるよ。
とはいえ、パドックで馬を見ること自体が楽しいと感じる競馬ファンもいるはず。馬券に役立つかどうかは別として、好きな人は納得するまでパドックを見て、自分の感性で買う馬を選んだらいい。
弥永 明郎(やなが・あきお)
唯一無二の馬券師。デイリースポーツ「馬サブロー」の美浦取材班・看板記者。グリーンチャンネル中央競馬中継のパドック解説でもお馴染み。狙った穴馬は決して逃さない「競馬界のゴルゴ13」。業界歴は長く、騎手、厩舎関係者、馬主など人脈も幅広い。