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松本人志も泣いた⁉ 特撮ヒーロー「超人バロム・1」水木一郎がついに雄叫びデビュー!

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1972年04月02日 日本テレビ系特撮ドラマ「超人バロム・1」放送開始日

私たちの記憶の中に鮮明に残っている「超人バロム・1」


変身ヒーロー番組が量産された昭和46〜48年頃に幼少期を過ごした男児は、好むと好まざるとに関わらず、その数々の番組の洗礼を少なからず受けている。

やがて歳を重ね、多くの男児はこの種の番組から卒業していくが、幼少期にどんな番組を見ていたかという話題で盛り上がる時、ほぼ間違いなく「見てたわ、見てた!」と、必ず名が挙がる番組が『超人バロム・1』である。

『ウルトラマン』や『仮面ライダー』などのようにシリーズ化された訳でもなく、それどころか放送開始後1年も経たずに全35話で終了しているこの番組がなぜ、私たちの記憶の中に鮮明に残っているのか?

原作は劇画界の巨匠、さいとう・たかを


この『超人バロム・1』は1972年4月2日、すなわち今から52年前に放送が開始された。

制作を手がけたこの時期の東映は『仮面ライダー』をはじめ、『変身忍者嵐』『人造人間キカイダー』『ロボット刑事』など、等身大ヒーロー番組を多く世に送り出し、その大半は石森(のちに石ノ森に改名)章太郎先生の原作によるものだったが、この『超人バロム・1』は、『ゴルゴ13』『無用ノ介』『サバイバル』などで著名な劇画界の巨匠、さいとう・たかを先生が原作者である。

また『仮面ライダー』等がテレビ化を前提とした企画だったのに対し、「ぼくらマガジン」誌に連載された原作劇画『バロム・1』は、テレビ化の企画があがった時点では、すでに連載が終了しており、テレビ化にあたり基本設定以外は大幅なアレンジが施されている。

友情のバロメーターが頂点に達し、バロム・1に変身


地球にやってきた悪のエージェント “ドルゲ” 、そしてそれを阻止せんとする正義のエージェント “コプー”。戦いの末、力尽きたコプーは地球の少年、木戸猛と白鳥健太郎の二人に正義の力を託す。そして彼らは互いの腕を交差させた“バロム・クロス” による合体変身によって正義のエージェント、超人バロム・1となり、ドルゲの送り出す魔人たちと戦いを繰り広げるのだ。

この番組において特筆すべきは、『仮面ライダー』の変身ベルトに代わる新機軸 “ボップ” の存在がある。コプーによって与えられたアイテムであるボップは、猛と健太郎の友情のバロメーターであり、同時にドルゲ魔人の存在を知らせる探知機でもあり、更にはバロム・1の愛車、マッハロッドにも変形するという夢のような存在であった。

そして、このバロム・1というヒーローのアキレス腱は、猛と健太郎の “友情のバロメーター” が頂点に達しないと変身できない、という点にあった。つまり2人が仲違いしている状態ではいくらバロム・クロスをしても変身できない訳で、しばしばその弱点を敵に突かれることがあり、番組をサスペンスフルに盛り上げた。

クチビルゲ、ノウゲルゲ、ヒャクメルゲ、ウデゲルゲ、カミゲルゲ…インパクト絶大の人体魔人


当時の男児にとってバロム・1の魅力は、少年ふたりが主役ということで容易に “ごっこ遊び” ができるところにあった。誰が猛(わんぱくな番長)を演じ、誰が健太郎(頭脳明晰だがやや臆病)を演じるかということと、誰があのドルゲ魔人を演じるのか、ということであった。

『仮面ライダー』におけるショッカー怪人があらゆる生物をモチーフとし、中には敵ながらカッコいい奴も混じっていたのに対し、ドルゲが送り込む魔人は、地底や海底にうごめく生物——オコゼ、オケラ、アンコウ、ナマコ、ゲジゲジ、ウミウシなど—— をモチーフとした、実にいやぁな連中ばかりで、誰も演じたいとは思わなかった。中でもヤゴゲルゲが歌う「♪ヤゴヤゴヤーゴの子守唄〜」のメロディーは悪夢度が極めて高く、忘れ難いものがあった。

さらにシリーズ後半では “人体魔人” が登場。クチビルゲ、ノウゲルゲ、ヒャクメルゲ、ウデゲルゲ、カミゲルゲなど、今なら存在自体が放送禁止なのではないかと思われる連中が続々と現れる。中でもそのエグい見た目と絶妙なネーミングが忘れ難い、クチビルゲのインパクトは絶大だった。

特ソンの歴史に残る名曲となった「ぼくらのバロム1」


そして『超人バロム・1』を語る時に決して外せないのが、強烈な印象を残す主題歌「ぼくらのバロム1」であるが、なんと当初この曲の歌詞は、「♪ブロロロロー ブロロロロー ブロロロロー」「♪ギュンギュギュン ルロルロロ ズババババーン…」と、ほとんどが擬音だけで構成されていたという。

さいとう・たかを先生の『ゴルゴ13』等の作品に親しんでいる方ならピンと来るかもしれないが、さいとう先生の劇画は擬音が非常に特徴的で、自動車の走行音は大抵「ブロロロロ…」と表現されている。そしてこの歌詞も、さいとう先生へのオマージュを込めたものであったらしい。

しかし作曲を担当したアニソン・特ソン界の巨匠・菊池俊輔先生にしてみれば、とてもこんな詞に曲は付けられない!というわけで東映のプロデューサー・平山亨氏に訴え、結果的に擬音の間に「マッハロッドでぶっとばすんだ 魔人ドルゲをやっつけるんだ」という言葉が挟み込まれたことにより、以下のような歌詞となった。

 マッハロッドで
 ブロロロロー ブロロロロー ブロロロロー 
 ぶっとばすんだ ギュンギュギュン
 魔人ドルゲを ルロルロロ
 やっつけるんだ ズババババーン
 バロムクロスで キューンキュン
 ふたりがひとり バロローム
 みんなでよぼう バロム ワン
 必ずくるぞ バロム ワン
 超人 超人ぼくらの バロム ワン

これが “雄叫びデビュー” となった水木一郎アニキの熱唱と相まって、特ソンの歴史に残る名曲となったこの曲について、とあるバラエティ番組でダウンタウンの松本人志さんは、「♪ふたりがひとり バロローム」の部分を聴くと必ず泣きそうになると語っていた。

居合わせたスタジオの芸人たちの同意は残念ながら得られていなかったが、テレビの前で菊池節信奉者の私が激しく同意したことは言うまでもない。菊池俊輔先生によるヒーローソングの根底には常に “哀愁” があり、この曲も擬音の激しさに紛れてはいるがその実、非常に哀愁に満ちたメロディーなのである。

—— さて冒頭で私は、この『超人バロム・1』が「なぜに私たちの記憶の中に鮮明に残っているのか?」と記した。しかしそれは愚問だったといえよう。これだけ魅力的な設定、魅力的な敵、魅力的な音楽で彩られた番組である。時を経ても忘却の彼方に消えゆかないのは当然のことではないか!

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