双見と梨田の手助けもあり、ねこのての成長が見られた第11話。花井さんのお芝居を聴いて、彼女の決断の重みを再認識した──アニメ『笑顔のたえない職場です。』ねこのて役・花井美春さん×原作・くずしろさん対談インタビュー
くずしろ先生が描く、漫画業界を舞台にした“ワーキングガールズコメディ”『笑顔のたえない職場です。』(講談社「コミックDAYS」連載)。本作のTVアニメが、2025年10月6日(月)よりTOKYO MX・AT-Xほかにて放送中です。
アニメイトタイムズでは本作をより深く楽しむためのインタビュー連載を実施中。第8回となる今回は、漫画家を目指す、双見のアシスタント・ねこのて役の花井美春さんと、原作のくずしろ先生が登場!
ねこのての成長が見られた第11話の振り返りや、花井さんのお芝居を聴いてくずしろ先生が感じたこと、さらにはくずしろ先生のアシスタント時代のお話などを語っていただきました。
【写真】アニメ『えがたえ』ねこのて役・花井美春×原作・くずしろ【連載インタビュー:第8回】
ねこのては漫画に対する熱量とピュアさを意識して演じた
──まずは、くずしろ先生のぬいぐるみと一緒に写真撮影をされた感想からお聞かせください。
ねこのて役・花井美春さん(以下、花井):(ぬいぐるみが)もっちもちで可愛かったです!実際に先生に見守られながらの撮影は中々ないことだったので緊張しました(笑)。
──(笑)。それでは、ねこのて役で出演が決まったときの気持ちからお聞かせください。
花井:原作を読ませていただいて、すごくアットホームな空気感がある、ハートフルでほっこりする作品だなと感じていたので嬉しかったです。
ねこのてちゃんはお仕事に対する姿勢がすごく真面目で、「漫画が大好き!」という熱が高い子なので、その熱量を大事にしつつ、初々しさ、ピュアさも表現できるように頑張って演じました。
──先生は、花井さんのお芝居を聴いていかがでしたか?
原作・くずしろさん(以下、くずしろ):何よりまずは「可愛い!」となりました。
ねこのては青森出身のキャラクターですが、作中では敬語キャラにしたかったので、方言色はあまり強く出していなかったんです。そこを花井さんは青森なまりでオーディションのテープを録ってくださっていたのが嬉しかったです。ちゃんと原作を読んで、そのうえでご自分の解釈で演技をしてくださっているんだなと……!
──声でのお芝居に加え、映像が付いた状態を見た際はいかがでしたか?
くずしろ:動きが付くとさらに可愛いですね。特に小動物的な言動が多いキャラクターなので、何倍にも増して可愛いなと思いました。
──お話にあったように、青森弁も含めて準備されていたのですね。
花井:きっと多少のなまりがあるだろうと思ってオーディションに臨んだのですが、そのことをアフレコが終わった後に先生が直接仰ってくださって。「そこも見てくださったんだ!」と嬉しかったです。
くずしろ:結果、方言色はアニメでも出さない方向になったのですが、その細やかさや気遣いが、ねこのてらしいなと。多分ねこのても、よく考えて、気を遣って、それ故にたまに縮こまってしまうような繊細な子なんですが、そんな部分を細かく表現してくださっているなと思いました。
──アフレコ現場で印象に残っていることなどはありますか?
花井:先生が毎回のアフレコ後に「こういうところが良かった」と、詳しく言ってくださることが嬉しかったです。原作の先生から直接感想をいただける機会って、あまりないですから。
くずしろ:制作スタッフの方々はキャストさんに細かい指示を出されていたのですが、「先生、どうですか?」と振られても私は「可愛い! 何も言うことはないです!」としか言えず、もはや遊びに来ているのかと(笑)。
花井:(笑)。
くずしろ:でもみなさん本当に素晴らしい演技で、その感想を直接伝えられるのは、こちらとしてもまたとない機会でした。とてもありがたかったです。
双見と梨田の手助けもあり、ねこのての成長が見られた第11話
──第11話は、ねこのてが東京に来て双見や梨田からアドバイスをもらう、彼女の成長が描かれる回となりました。
花井:ねこのてちゃんがたくさん出てくる回でした。中でも「佐藤さんとの打ち合わせがうまくいかなかった」と言っているシーンがすごく印象的です。
双見先生も梨田さんも普段はわちゃわちゃしているけれど、後輩のねこのてちゃんが悩んでいるときは頼れる先輩になってくれるんですよね。落ち込んでいるところを二人が盛り上げてくれて、最終的には佐藤さんに連絡することができて、(再度の打ち合わせの)OKももらうことができて。ほんわかしましたし、先輩たちがいたからこそできたことだなと思いました。
くずしろ:双見の家にねこのてが来たときの声がめちゃめちゃ震えていて。「私が思っている以上に、勇気を出して都会に出てきたんだね」と……そこで泣きそうになりました。花井さんが仰っていたように、双見と梨田が先輩風を吹かせて(笑)、佐藤との打ち合わせもうまくいって。その後の梨田と塔子のデートを尾行するところでは、ねこのてもちょっと余裕ができて。東京観光を楽しむ、可愛い高校生らしい一面が見られたのも良かったです。
花井:尾行そっちのけでゲームセンターとかで遊んでいましたね(笑)。
くずしろ:(笑)。ねこのての成長が見られて、幸せな回だなと。
花井:双見先生と梨田さんがああいう感じだからこそ、打ち解け合うのも早い……精神年齢が割と近いといいますか(笑)。ねこのてちゃんはむしろ精神年齢が高めですよね。
くずしろ:そうですね。ねこのては自信がないだけだったりします。なので(3人のバランスが)ちょうどいいなと思っていて。
花井:ねこのてちゃんは不安な気持ちや心のモヤモヤがあった中で東京に出てきたと思うのですが、あの瞬間はマイナスな気持ちを忘れていられたのかなと。楽しげに遊ぶねこのてちゃんが見られて、すごく嬉しかったです。
──ねこのては、どのようにして生まれたキャラクターなのでしょうか。
くずしろ:なんとなく「年下ポジション」「後輩キャラ」が欲しいなと思っていた記憶があります。
花井:実際に先生の周りにいる人をモデルにする、みたいなことはあるんですか?
くずしろ:要素を混ぜ込んで、ということはありますが、やはりファンタジーの部分が強いですね。
私のアシスタントさん全員に言えることなんですが、頑張りすぎなところがあって。その生真面目過ぎるところって、引いて見ていくと「可愛げ」になってくるんです。ねこのては、その「可愛げ」をさらに誇張させた感じなんです。
でも気付いたらツインテールだったし、マスクをしてたし、パンダのパーカーを着ていました(笑)。私がキャラクターを考えるときは、すごくちゃんと考えなきゃいけないキャラクターと、気付いたらそこにいた人、という2パターンがあるんです。ちなみに梨田は後者です。
花井:あんなにクセが強いのに(笑)。
くずしろ:(笑)。ねこのてもあまり考えずに出てきたので、きっとこの子はどこかで生きているんだろうなと思います。
花井さんのお芝居を聴いて、ねこのての決断の重みを再認識した
──花井さんのお芝居を聴いて、新たに見えた「ねこのて」の一面などはありますか?
くずしろ:先ほども少しお話ししたように、ねこのての声が震えていて。嬉しさ、怖さ、緊張、疲れなどいろんな感情が混ざっている演技をしてくださったおかげで「漫画家になりたい」という気持ちや行動が、彼女の中で勇気が必要な決断だったんだなと再認識できました。
そのおかげで、ねこのてがより真摯に漫画と向き合っていって、成長速度が上がったような気がしています。可愛いだけでも、梨田に振り回されるだけでもなく「こうしたいんです!」とちょっとずつでも前進していく様を描けるようになったので、花井さんのおかげで成長させていただいたなと思います。
花井:もう……嬉しすぎます……! 天にも昇る気持ちです(笑)。ありがとうございます。めちゃくちゃ気が早いですが、第2期があればまた演じたいです。
くずしろ:あったらいいですね。ねこのての成長した部分を演じていただきたいです。
花井:皆さん、よろしくお願いします!(笑)
──続いて、本作のアニメならではの面白さについてお聞かせください。
花井:やはりキャラクターが見せてくれる一個一個の動きがアニメならではだと思います。ねこのてちゃんはもちろん、みんなのちょっとした目の動きだったり、表情の変化を見ていただきたいなと思います。
あとは、双見先生と周りのみんながわちゃわちゃしているシーンの掛け合いや、ボケとツッコミのテンポ感がすごく良くて、クスっと笑える部分なので、そういったところもアニメの魅力かなと思います。
──先生は、アニメで動くねこのてを見て、どんなところに魅力を感じましたか?
くずしろ:やっぱり小動物的な可愛さがありますよね。あと、ねこのては基本マスクをしている関係で口元の情報が少ないのですが、目や髪の動きなど「声に付いている表情」がすごいんです。口元が見えなくても感情が伝わるところが本当に魅力的だなと。なので、マスクをさせなきゃよかったな、と(笑)。
花井:え!? トレードマークじゃないんですか?(笑)
くずしろ:トレードマークではあるのですが、表情ってやっぱり目と口なんです。「口隠しちゃった~……!」と思っていたのですが、そこも見事に花井さんが演技力でカバーしてくださって、素晴らしかったです。
くずしろ先生にとって大きな転機となったアシスタント時代
──せっかくの機会ですので、花井さんから、くずしろ先生に訊いてみたいことはありますか?
花井:皆さん訊かれていることかもしれませんが、くずしろ先生の原点がすごく気になっていて。どうして漫画家になったのかとか、何の作品に影響を受けたのかとか……。
くずしろ:うーん(少し考えて)一番大きい影響というとパッと思いつかないのですが、影響を受けたのはあだち充先生の『H2』と……あと『ボボボーボ・ボーボボ』(澤井啓夫先生)ですね。
一同:(笑)。
くずしろ:『H2』は、父があだち先生が好きで読んでいたので、自分も追うようになって、途中からは自分自身が好きな漫画として楽しんでいました。
『ボーボボ』は学生の頃に初めて読んで「漫画って自由なんだ!」ということを教えてもらった作品です。それが原点な気がするけれど……本当にそうなのだろうか?(笑)
講談社担当編集:あとは『えがたえ』になぞらえた話ですと、少女漫画なら『ベイビィ★LOVE』(椎名あゆみ先生)なども子供の頃にお好きだったとおっしゃっていましたよね。
くずしろ:そうですね。姉が買っていた「りぼん」なども読んでいて「自分も描いてみたいな」とは思っていたものの、別に漫画家を志していたわけではなく、単純に「お絵描きが好きな人」だったんです。でも高校三年生のときに「一回描いておきたい」と思って出したものが小さい賞に引っかかって。それはそれとして大学受験をして。「でもせっかくなら描くか」と思って……そんな流れで、気が付いたら漫画家になっていました。
花井:すごい……! それにしても、まさか『ボーボボ』が出てくるとは思わなかったです(笑)。
くずしろ:ウケ狙いみたいになってしまいました(笑)。でも「この人みたいになりたい!」といったものはあまりなく、フラっとここまで来てしまった感じがあります。
ただ、大学生のときに週刊連載の現場にアシスタントに行かせてもらったんです。本当に良い師匠で、そこでいっぱい勉強させていただいて、今があります。なので、原点というならそこから始まった気がします。あの時期が一番楽しい時代というか、青春でした。
──まさにねこのてのように活動をしていた時期があったのですね。
くずしろ:師匠がいて、同期のアシスタントさん、先輩のアシスタントさんがいて、わちゃわちゃ言いながら仕事をして。
花井:泊まり込みだったんですか?
くずしろ:私は通いでしたが、基本泊まりでした。徹夜することもあって、ヘロヘロになりながら。段々みんな意識がなくなっていって(笑)。
──それでも笑顔はたえないと。
くずしろ:そうですね(笑)。徹夜でヘロヘロになっていても、師匠が『北斗の拳』のアニメをずっとつけていました。「これ何回目の〈愛をとりもどせ〉だろう?」とか言いながら(笑)。
あのときに楽しかったことを、ねこのてに経験させてあげたいと思いながら描いています。師匠には迷惑をたくさんかけましたが、アシスタントをやっていたときが一番楽しくて。それまでは漫画の話ができる友達もいなかったので「『○○』読んだことあります?」「知ってる、面白いよね」という会話ができる場所が貴重だったんです。話が通じすぎて、幸せな空間でした。(花井さんに対し)これ、答えになっているでしょうか……?(笑)
花井:貴重なお話をありがとうございます……!
──ありがとうございます。最後に、今後のアニメの見どころを教えてください。
花井:ねこのてちゃん本来の明るさ、年相応な姿や等身大な素顔が、終盤になるにつれてどんどん見られるようになっていきます。ぜひ楽しみにしていただけたらと思います!
【インタビュー・編集:西澤駿太郎 撮影:小川遼 文:篭法】