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東京パラ女子マラソン 弱視選手の「目」となり伴走 川島町の主婦・山口遥さん〈横浜市保土ケ谷区〉

タウンニュース

弱視選手の「目」となり伴走

9月5日に閉幕した東京2020パラリンピック競技大会の陸上女子マラソンに川島町に暮らす主婦・山口遥さん(34)が選手を伴走するガイドランナーとして出場した。日本選手団最年長となる66歳、足がけいれんを起こし何度も立ち止まりながら、懸命にゴールを目指した西島美保子選手の「目」となり、励まし続けた道中。親子ほど年齢の離れた選手を前向きに、そして冷静にサポートし、ゴールテープを切った。

幼少期から「走ることが好きだった」という山口さんは西谷中学に入学すると陸上部に入部。当初は短距離選手を志したが、顧問の進言を受け長距離に転向し、県大会で入賞するまでの選手となった。

県内のインターハイ常連校に進み、全国レベルの選手が集まる強豪大学でも競技を継続。「全国大会にも出ていないし、目立った成績はない」が、大学卒業後もクラブチームに所属し、「楽しみながらも、本気で競技と向き合う生活」を続けている。

最強市民ランナー

23歳の時、初めてフルマラソンに挑戦。3時間切りを目指したが記録は3時間0分13秒。初マラソン以降、紆余曲折を経ながら徐々にタイムを縮め、一昨年には大阪国際女子マラソンで実業団選手顔負けの快走を見せ、日本人選手2位となる2時間26分35秒でフィニッシュした。

これまでに50回以上のフルマラソン歴を持ち、32歳にして自己最高となるタイムを記録した「鉄人」は「最強市民ランナー」の異名も持つ。

「力を引き出す」

3年前、ブラインドマラソンの強化委員長を務めている所属クラブのコーチから「パラマラソン伴走者」の話が持ち掛けられ活動をスタートした。今年6月、東京パラに出場する西島さんを伴走することが決定。「西島さんの力を引き出すことだけを考えた」

44歳の時に陸上競技を始めた西島さんは5年前のリオデジャネイロパラリンピックにも出場したが暑さに苦しみ途中棄権。7月から今大会で共に西島さんをサポートした男性伴走者と合宿生活を共にする中で、「完走したい」と目標を話す西島さんに「もっと上を目指そう」と発破を掛け続けた。

パラ大会が開幕したその日、水泳競技で14歳の選手が日本パラ史上最年少でメダルを手にした姿を目にした66歳のランナーは大きな刺激を受けた。「初日に日本選手団最年少の選手がメダルを獲った、最終日には最年長の私メダル獲る」と宣言し、選手村に入った。

アクシデントも冷静対応

迎えた大会最終日、ガイドロープで結ばれた男性伴走者とスタートを切り、順調に歩を進め、21Km過ぎで後半の伴走を担当する山口さんにバトンタッチ。「前の選手が見えているから、追い抜いていこう」。視野がぼやける弱視障害で景色や人物をはっきりと認識することができない西島さんの「目」となり、前を行く選手との距離や状態を的確に伝えた。

徐々に順位を上げていた30Kmを過ぎた頃、それまで順調に走ってきた西島さんの異変に気付く。「猫背で、すり足になり、つんのめるような感じ」。両足にけいれんを起こしていた。

競技中、伴走者が選手の体に触れたり、ガイドロープの手を放してしまうと失格となる。「自分が焦ったら、西島さんが不安になるだろう」。何度も立ち止まり、時より転びそうになる西島さんの走りに冷静に対応しながら、2人はゴールを目指した。

何度も何度も「大丈夫」と声を掛け続け、たどり着いた無観客の新国立競技場のトラックを走り、迎えたゴールのその瞬間を、山口さんは西島さんの数十センチ後ろで迎えた。2人の手には約21Kmの道中を共にしてきたガイドロープがしっかりと握られていた。「もっと格好いいフォームでゴールしたかったけど、娘と走っているみたいで楽しかった」。そう声を掛けられたという。

結果は3時間29分12秒の8位。山口さんは「悔しい思いもあった」と率直な気持ちを話す。そこには伴走者であると同時に、「楽しみながらも、本気で競技と向き合う生活」を続け、「最強市民ランナー」と称されるアスリートとしての本能も垣間見える。

日の丸への思い

競技者として一時期は日の丸を背負い走る姿を思い描いたこともあるという「最強市民ランナー」はこの夏、人生初となる日本代表のユニフォームをまとい戦いに挑んだ。「西島さんのお陰で初めて日の丸を付けて走ることができた。これから先、伴走を頼まれることがあれば、自信を持ってお受けできるよう走力を高めなければ」。その先にいち競技者として高みを目指す強い思いをのぞかせた。

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