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フジ村瀬健P「TBSの日曜劇場をやりたい」局を越えた“交流戦”を望む理由

フジテレビュー!!

村瀬健プロデューサー(以下、村瀬P)が、局の垣根を超える“夢”を明かしました。

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木曜劇場『silent』『いちばんすきな花』(ともにフジテレビ)、『14才の母〜愛するために 生まれてきた〜』(日本テレビ)、映画「帝一の國」など、ヒット作を手がけてきた、フジテレビの村瀬P。

このたび、初の著書「巻き込む力がヒットを作る “想い”で動かす仕事術」(KADOKAWA)を上梓しました。時代をつかむ感覚や、才能を集めて仲間にする口説き術、企画を動かす決断力・行動力など、ドラマ・映画プロデューサーとして培ってきた知見を、余すことなく綴っています。

フジテレビュー!!は、村瀬Pにインタビュー。アイデアのインプット方法や、影響を受けた人物、テレビドラマの今後について聞きました(全3回中3回目)。

「前例がない」をひっくり返した、月9初の時代劇『信長協奏曲』

――村瀬Pは「前例がない」という言葉が嫌いだそうですが、それをくつがえしたエピソードがあれば、教えてください。

たとえば“月9史上初の時代劇”と言われた『信長協奏曲』(2014)。別に、月9初の何かを探していたわけではありません。「戦争より平和がいい」という感覚をどうドラマにするか考えていたときに原作コミックに出会い、戦国時代をやるなら月9が面白そうと思ったら、たまたま史上初だった、というだけです。

でも、簡単ではなかったですね。「時代劇だから、美術セットに砂を撒(ま)きたい」と言ったら、フジテレビのスタジオに砂や土を撒いた前例がなかった。床が砂の重量に耐えられないというんです。だけど、作品のためにも僕は、絶対に本物の砂を入れたかったので、結果、重量オーバーギリギリの量の砂を撒きました。

他にも、前例にないことをやろうとするたびに、当時の上司たちが何とかしてくれて形になり、その後の映画版も大ヒットしました。

前例がないことにも、面白いと思ったら応えてくれるところが、フジテレビのいいところだと思います。

――村瀬Pは日頃から、いろいろな作品を観てインプットするそうですが、膨大な数の作品から、どのように選んでいますか?

勘です。「面白そう!」という感覚だけは、自分にしかないですから。でも、全部は観られないから、気になっている俳優が出ているとか、興味のある劇作家が書いているとか、何か引っかかる作品を観ています。

ただ、勘が働くスピードは、最近ちょっと落ちてきました。昔みたいにもっとインプットしなきゃとは思っていますけど、子どもの面倒も見ないといけないですし。

――お子さんがいることで、インプットの幅は変わりましたか?

そうですね。たとえば僕、ポケモンにまったく興味がなかったんですけど、子どもが小学生になってポケモンにハマり出して、見てみたらすごく面白くて。ゲームとしてのクオリティの高さや、日本発で世界をとった理由がわかってきて、「俺、こんなに面白いものを見逃してたんだ!」と思いました。今では、「ポケモンGO」に子ども以上に夢中になってハマってます(笑)。

僕は、どこからでも何かを“持って帰る”のが好きなんです。今日やったことに意味を持たせたい。「これいいな」って感動したらすぐ泣くし、すぐ喜ぶし。もらったお菓子がおいしかったら、その日はうれしい、みたいな感じです。

「俺には無理だ」日テレからフジテレビへ来て受けた衝撃

――本のタイトルにちなみ、村瀬Pが「“想い”に巻き込まれた」と感じる人はいますか?

先輩プロデューサーの皆さんです。『月の恋人〜Moon Lovers〜』(2010年)の後藤博幸さん、『PRICELESS〜あるわけねぇだろ、んなもん!〜』(2012年)の牧野正さん…フジテレビのプロデューサーって、皆すごく面白いんです。

どちらのドラマも主演は木村拓哉さんでしたが、後藤さんや牧野さんを見て、スター・木村拓哉さんとの会話や、木村さんや他の役者さんとの向き合い方を学びました。そういう“スターシステム”によるドラマ作りこそ、僕がフジテレビに来て勉強したかったことだったので、巻き込まれたというより“美味しいところをいただいた”感じですね。

――先輩Pの仕事を間近で見て、どう思いましたか?

当時、僕がフジテレビに来てはっきりと思ったのは、キャストとスタッフの距離が近い、ということ。皆すごく仲良しで、監督やプロデューサーだけでなく、助監督も美術さんも、みんなキャストと連絡先を交換して飲みに行ったりしてて。打ち上げがど派手だったのも驚きでした。今はわかりませんが、当時の日テレにはない空気で、びっくりしました。

あと、皆とにかく、しゃべりがうまくて“ガハガハ”笑っている。もともと、僕もしゃべることは嫌いではないので、日テレでプロデューサーになって、それなりにイケてると思っていたんです。でもフジテレビに来たら、どのプロデューサーも話が面白すぎて、「レベルが違う。これは俺には無理だ」と思いました。

それで、本気でしゃべりを勉強したんです。芸人さんのトークを聞いたり、ライブでアーティストのMCを見て勉強したり。気づいたら、今やフジテレビで一番しゃべるプロデューサーになっていました(笑)。

『VIVANT』(TBS)に大ジェラシー「悔しいです」

――昨今は、配信ドラマも台頭しています。現在のテレビドラマについてどう思いますか?

もう一度面白くなるチャンスだと思っています。NetflixとかYouTubeとか、新しいメディアが来て苦しいけれど、こんなの初めてではないじゃないですか。テレビには、何度も何度もそういう黒船が来ては飲まれそうになって、なんとか生きてきた。

今まではとにかく視聴率が指標で、みんな苦労してきました。でも『silent』は、視聴率はそんなに良くなかったのに、配信の再生回数だけで初めて“大ヒット認定”された。時代が変わり、面白いものを作れば物差しすら変えられるということを、おこがましいけれど、僕は『silent』で証明できたと思うんです。他局のプロデューサーも「よくぞやってくれた」と言ってくれます。

――著書で、企画を考える際に「同業他社ウケ」も意識すると書いていました。

それで言うと、今年は『VIVANT』(TBS)にやられましたね。悔しいです。最初の宣伝では、詳しい情報を一切明かしていなかったじゃないですか。新しい何かをやろうとしていると思って、僕はもう大ジェラシーでした。『silent』より、はるかにお金をかけて作って、再生回数も視聴率も取って。すごいですよね。

今のフジテレビの財力、および僕の向き不向きから、ああいうドラマはなかなか作れません。だからこそ、『VIVANT』チームに拍手を送りたいです。向こうも、『silent』に対してそう思ったと言ってくれました。同じようにドラマ作っている人間は、局を越えて仲間だと思っているので、皆でドラマ全体を面白くしていきたいです。

――今後やってみたいことを教えてください。

まずは、なかなか出会えない才能の持ち主である、脚本家の生方美久さんと、『silent』『いちばんすきな花』に続く、集大成のような作品を作りたいです。

そしてもうひとつ、TBSの日曜劇場をやらせてほしい。本気ですよ。日曜劇場のお客さん(視聴者)はフジテレビにはいないから、そういうドラマはこの会社では作れない。だから、やってみたいんです。退職してフリーになってではなく、フジテレビの社員のまま。最初はアシスタントプロデューサーとして、予告編を作らせてもらうところからお願いします(笑)。

今はみんなに笑われるけど、何年後かには、そういう時代が来るかもしれません。逆に、TBSの福澤克雄ディレクター(『半沢直樹』『VIVANT』)が、うちの月9を撮るの見たくないですか?僕と塚原あゆ子監督(『MIU404』『下剋上球児』)が組むの、見たくないですか?僕はそういうことをやりたい。

野球は、人気復興のためにセ・パ交流戦を始めました。テレビも今こそ“交流戦”をやるべきですよ。

――村瀬Pが言うと、実現しそうな気がします。

そう言ってもらえるような立場になってきたからこそ、本気でやりたいと思っています。まだ誰もやっていないことをグイグイやって、可能性を広げていきたい。そうすれば、日本国内でもまだまだ面白いドラマを作れると思っています。

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