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月謝を払っているのにスクールコーチが何も教えてくれません問題

サカイク

Jクラブのスクール入会時、「選手コースはビシビシやるけど、スクールは楽しくやっている」と方針説明があった。それでも上手くなりたくて入会したけど、何も教えてくれない。

スクール生はただの養分なの? 人によっては選手コースより高い月謝を払っているのに教えてもらえないのは不憫で......。と嘆くお母さんからのご相談。

今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、悩めるお母さんにアドバイスを送ります。
(文:島沢優子)

(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)

 

<<威嚇するS級コーチのもとに卒業までいさせていいのか問題

 

<サッカーママからのご相談>

うちの子(12歳・小6)はJクラブのスクールに通い、チームはスポーツ少年団でやっています。

少年団の練習プラスでもっとサッカーが上手くなりたいという気持ちからスクールに入る事にしました。

スクールに入る時に、スクール担当の元プロのコーチが言った「スクールは緩く楽しくやっています。選手コースはビシビシやってます」という言葉に残念に思いましたが、上手くなりたくて目的を持って入りました。

しかし「コーチは何も教えてくれない」と息子は残念がっております。親から見てもスクールと選手コースへの熱意が違うのが明らかです。

月謝を払って通っている、ましてコースによっては選手コースよりも高い月謝を払うにも関わらずその様な対応に疑問に思います。

ただの経営の為の金集め? なのかと思うと上手くなりたくてスクールに入ってる息子が可哀想になります。

近くにスクールがない田舎なので選択肢がなくて悩んでます。どうしたらいいでしょうか。

 

 

<島沢さんのアドバイス>

ご相談いただき、ありがとうございます。

最初に断っておきます。私はこれからお母さんに若干厳しいことを言います。

 

■最近は教え込む指導をしなくなっている

「コーチは何も教えてくれない」と息子は残念がっていて、親から見てもスクールと選手コースへの熱意が違う、と書かれています。これは恐らく、その通りなのでしょう。

実は現在の少年サッカーの指導は、まだ過渡期です。ひと昔の手取り足取り教えこんでコーチが指示したようにプレーさせるのではなく、「自分で考えさせる」「子どもの選択を尊重する」という新しい考え方への転換が見られます。

ただし、自分で考えさせるにも、ベースの部分を与えて、そこから一緒に考えていくかたちがよいのですが、その過程を飛び越えて「自分で考えろ」と放置してしまうケースもあるようです。もっと学んでほしいなと思うのですが、そのあたりが成熟していないようです。

若いコーチでも自分で学んだり、良い師に恵まれて参考にしている人もいますが、多くは自分が教えられたように教えてしまいます。

 

■子どもの伸びる時期はそれぞれ、もっと長い目でみるようにしよう

その逆で、子どもが楽しくプレーしてサッカーを好きになってもらうことを第一に考えながら、問いかけて考えさせる指導をしているコーチも多数いらっしゃいます。

そのひとりで首都圏のスクールやクラブで指導するコーチは以前、親御さんたちから「スクールでドリブルを上手くしてほしい」と要望を受けたり、「入れたのにちっとも伸びない」とクレームがあることを嘆いていました。

そして「子どもが伸びる時期はそれぞれで、スクールに通い始めるとすぐにうまくなる子もいれば、もっとあとになって技術の向上が見られる場合もある。長い目で見てほしい」とも話していました。

 

■「教えてくれないと上手くなれない」という考えでは成長できない

お子さんが通っているJクラブのジュニアコーチが単に放置しているのか、楽しくサッカーをしながら子どもの成長を見ているのかは私もわかりません。ただ、ひとつ言えるのは、「コーチが何か教えてくれないとうまくなれない」と考えてしまうと成長できないということです。サッカーにしてもほかのスポーツにしても、指導者は環境を整えるためにその場にいると考えてください。

親御さんのほうが「うまくしてくれない」「熱心に教えてくれない」と、相手に何か求めるばかりでは、お子さんも「僕がうまくならないのはコーチのせいだ」と思うようになるかもしれません。しかも「上手くなりたくてスクールに入ってるのに可哀想」とお母さんが思ってしまうと、子どもは余計に他罰的になります。

「選手コースはビシビシやってます」と話したようですが、思わず本音が出たのでしょう。「ビシビシ」の意味はわかりませんが、もしかしたら全国優勝するためとか、プロにするためにビシビシ鍛えています、ということかもしれません。クラブ側は「スクールは緩く楽しくやっています」と最初に説明しているのですから、「何も教えてくれない」と言ってしまうのは少し違うかなと思います。

こう話すと、島沢さんはJクラブの肩を持つのかと感じるかもしれませんが、そういうことではありません。

 

■今の状態は「高いお金を払って塾に行かせているのに成績が上がらない」と嘆くのと同じ

私は、お母さんに「親子ともに受け身のままでは、良いことは起きませんよ」と伝えたいのです。誰かに何かを期待する。教えてくれるのを待っていては、サッカー以外の勉強にしろ、どんなことも伸びていくことはできません。

お母さんは月謝を払っているのに、と書き、費用対効果の低さを嘆いています。これは高いお金を払って塾に行かせているのに成績が上がらないと嘆くお受験に熱心なママたちと似ています。また「選手コースよりも高い月謝を払うにも関わらず、その様な対応を疑問に思う」とのことですが、選手コースの子どもはある程度ふるいにかけられていて、活躍をクラブから期待されている。そのために特別な料金設定になっているとも考えられます。

ただの経営の為の金集めだったとして、それを私たちが論じても、クラブ側が決めることなのでお母さんの力では何ともなりません。自分の力の及ばないところはばっさり切り捨てる。そして自分と向き合う。相手に変わって欲しいと念じるよりも、自分たちが変わったほうが絶対に効率的です。これはスポーツ心理学でもよく言われることです。

ここはアッサリと「受け身では何も解決しないよね」と、親子ともに思考を180度変えてみてはいかがでしょうか。

 

■払った金額の見返りを期待するより、子どもを伸ばすために意識したいこと

(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)

 

もう12歳。小学6年生ですよね。スクールに行くときに「今日はこんなことを試してみよう」とか「どうしたらいいのかコーチに聞いてみよう」といった探究心があるといいなと思います。高いお金を払ってその見返りを期待するのではなく、そんなふうに意欲的な子どもに育ててください。

「プレーするのは君だからね」という姿勢を、まずはお母さんが持つことが肝要です。子どものために良い環境を用意するのは大事なことです。

 

島沢優子(しまざわ・ゆうこ)スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実 そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート 夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てる テニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。最新刊は『世界を獲るノート アスリートのインテリジェンス』(カンゼン)。

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