Yahoo! JAPAN

蚊の飛ぶ仕組みの研究成果が、すごい未来につながる!?

TBSラジオ

間もなく9月。猛烈な暑さは少~し落ち着いてきましたが、これで元気になるのが蚊!

蚊はマラリアやデング熱などを媒介することから、人間を一番殺している生き物などとも言われており、様々な分野・確度から、世界中で蚊の研究が行われています。

なぜ、蚊は床や壁にぶつからずに飛べるのか?

その蚊の研究の中でも、ちょっと珍しい研究をしているのが、千葉大学大学院工学研究院准教授の中田敏是先生。

中田先生は飛ぶロボット、ドローンなどの研究が専門なので、昆虫の飛行の上手さに注目。特に蚊は真っ暗闇でも壁にぶつからずに飛べるのはなぜ?ということで、蚊の飛び方の研究を始めたのですが、どんなことが分かったのか。中田先生のお話です。

千葉大学大学院工学研究院・准教授 中田敏是さん

「飛ぶ仕組みですね。羽を羽ばたかせてどうやって力を出してるかとか、周りの環境をどうやって認識してるかとか、どうやって人間を見つけてるかとかって、すぐに役に立つか分からないんですけど、とにかくまあ敵を知る、で、知れば何かしら対策が出てくるかもしれないので。

蚊っていうのは、狭く速くパタパタパタパタって羽ばたくんですね。で、そうやって羽ばたくおかげで、ほかの虫では見ないようなちょっと変わった渦が出たりして、それで力を出して飛べるっていうのが、我々の研究で分かってきたことです。

蚊って触角があって、空気の振動を触覚で感じ取れるんですね、で、飛行の話に戻って、こう羽ばたいて飛ぶと、空気が乱れるじゃないですか。それで、地面とか壁とかに近づくと、その乱れ方がちょっと変わるんですね。ちょっと乱れが変わった、ってことはこっちの方向に床があるから近づかないでおこう、みたいなことが、どうも出来るんじゃないか、っていうのが、さらに分かってきたことです。」

蚊の飛び方は他の虫とはかなり違って、狭く速く羽ばたくことで独特の渦を発生させて飛ぶ力を得ていることが判明。

(映像提供:中田先生)

しかも、自分の羽ばたきによる空気の振動を、常に触角で感じながら飛んでおり、その空気の振動の乱れで、床や壁の存在を把握しているようだ、ということも分かってきました。

(千葉大学大学院の中田敏是准教授:研究スぺースにお邪魔しました)

一匹ずつ蚊をびっくりさせて、どう叩くのがいいか、検証中!!

中田先生が今回の研究成果を発表したところ、「蚊は横から叩くより上から叩いた方がいいって言われているのは本当なの?」と、すごく多くの人から聞かれるようになったので、これも検証を始めました!

羽の上に独特な渦を作る、渦は台風の渦と同じで空気を引き込む、つまり上向きの力が生じる、という仕組み。ということは、基本的には下向きの力を起こすことはできないわけです。

となれば、人の手から逃げる時も上に逃げるしかないのでは?という仮説が成り立ちます。そこで、蚊をびっくりさせて叩く機械を作って実験開始。実験担当の千葉大学融合理工学府基幹工学専攻機械工学コース2年生の小枝大桃さんに機械を動かしてもらいながら、お話を伺いました。

千葉大学融合理工学府基幹工学専攻機械工学コース2年生 小枝大桃さん

「これが、実際叩く装置になっておりまして、で、このディスクの部分がこんな感じで、勢いよくバッって出るっていうそういう仕組みになってます。蚊はここのステージの上に乗せます。(蚊をここに一匹乗せて)そうですね。それでこれでバーンと叩くと

。これを、上にしたり斜めにしたりも自由にできるので、これで色んな方向から叩いて、実験をやっているところです。高速度カメラで蚊の動きを見ることで、実際逃げるのにどれくらいの時間がかかった、とか、何回中、何回、ぶつかったかとか、そういったことも詳しく見ることが出来る感じですね。今、このケースで実験してる中では、上というか斜め上方向に逃げることが多いかなという印象ではありますね。」

長さが40センチくらいの細長い実験装置で、片側の端に8インチCDくらいの円形のアクリルの板の付いた叩き棒が設置されていて、スイッチを押すとシュッと飛び出します。モーターで動きますが、そのスピードは人間が蚊を叩くときの手の速さと同じくらい。

(蚊をびっくりさせる機械での実験をする小枝大桃さん。)

そして、もう片側には小さい円柱形の台があって、そこが蚊のスタート位置。プラスチックの試験管のような容器に蚊を一匹入れて、円柱形の台に、筒の口を下にして立てて、上の方をトントン叩いて、蚊を下の台まで下ろします。蚊が台に着地したなというタイミングで筒をパッと外して、同時に叩き棒のスイッチをオン!

(これを少なくとも1000回はやっていきます。しかも蚊にとって快適な25~30℃の密室・・・大変!)

この実験で、蚊の逃げ方、逃げがちな方向が分かれば、確率的には縦に叩く方がいいですよ!と言えるかも、ということでした。羽音はするけど叩いても空振り続き・・・ということが減ればうれしいですよね!

蚊が持つ人間を見つける能力を搭載したドローン!?

そして、中田先生の研究は、次なるステージに進み始めています。

千葉大学大学院工学研究院・准教授 中田敏是さん

「今、共同研究みたいなのをやってるんですけど、信州大学の照月先生っていう方たちが、虫の触角、その方たちはカイコガっていう虫を使ってるんですけど、カイコガってオスが触角でメスの匂いを見つけることが出来るんです。で、電気回路で、その触角から出てくる信号を拾ってあげて、メスに向かって飛ぶドローンを作った、そういう技術を持ってる方たちがいて。

蚊もやっぱり触角とか、そういうのを使って飛んでるんです。で、人間が出してる情報をとにかく色々使って人間に近づいて来ます、蚊っていうのは。じゃあ、電気回路で、その触角から出てくる信号を拾ってあげてドローンに乗せてあげれば、人間を見つけるドローンというのが出来るじゃないですか。そうすると、例えば街に地震が来た時に、人がどこに埋まっているかというのを見つけないといけないんですよね。そういうときに蚊の触角を使ったドローンっていうので人間を見つけられると、ものすごく助かる人が増えるんじゃないかなって思うんです。

どっからともなくね、ふわ~って集まってくるでしょ。ああいう能力をロボットにも持たせられたらいいなと思ってますけど。」

これはすごいロボットですよね!!

触角から信号を取るのも大変だし、蚊が人の情報(汗などの匂いとか)を感じるのは分かっているが、匂いを感じた後、どう行動したら人間に到達でいるのかなども調べなければいけないので、課題はたくさんあります。しかし、これはやり遂げたいと、中田先生は話していました。

鬱陶しいばっかりだと思っていた蚊ですが、ビックリ!(蚊を見る目が変わりそう?)

蚊の持っている技術が人を助ける。研究の進みに期待したいですね!

(TBSラジオ『森本毅郎・スタンバイ!』取材・レポート:近堂かおり)

【関連記事】

おすすめの記事