陶人形作家の今田和子さん 庄内地方の農村の人々の生活を再現【流山市】
柏に住み、流山に工房を構える今田(こんだ)和子さん(70)。
重労働の農作業をこなしながら心豊かに暮らしていた母の姿を中心に、60年ほど前の山形県庄内地方の農村の人々の生活を、陶人形で再現してきました。
技術より思いと感謝を大切にして
今田さんの作る人形たちの着ている着物は、本物と勘違いするほど布の質感が出ていて驚かされます。
作品「うたた寝」の掛け毛布は粘土を厚さ0.5ミリまで延ばしてしわを作ることで、自然な布の柔らかさを表現したそうです。
藁紐などの小物まで、全て陶で作られています。
「自分が年を重ねるほどに母が農作業をしている姿が鮮明に思い出され、陶芸を始めて『土』に触れているうちに『農婦』が出来上がりました」と今田さん。
決して作陶の長い経験があるわけではなく、工房を構えたのは仕事を退職してからのこと。
「技術があるから作れるのではないのです。あの時代、重労働の米作りに励んだ農家の人たちへの思いと感謝の気持ちが、これらの人形を作らせるのです」と話します。
そして、「八十八の手間をかけて作られる米の一粒を大切にすることは、人間を大切することにつながります」とも。
それは今田さんの創作のテーマの一つでもあります。
小さな安堵と幸せが平和のもと
以前、金沢で開催された国際平和美術展に出展した時のこと。
農作業を終えた母親をモチーフにした作品「田畑で一休み」の前で、若い女性が「仕事を終えた後のこの安堵(あんど)の表情こそ、一番の平和なのですね」と、涙を流しながら伝えてくれたそうです。
その言葉に、「平和とは、大きな活動から得られるものではない。一つ一つの小さな安堵と幸せが、集まって長く続くことが本当の平和なのだと気付かされました」と今田さん。
2019年に沖縄県「壺屋焼物博物館」で開いた個展は、NHKのニュース番組で紹介されました。
その後は毎年、海外の美術展に出展し、高く評価されています。
「作った人と見る人が思いを共有できる。私はそういう場に出合いたくて、全国の展示会に参加し、見てくださる人と語り合っています」と、にこやかに話してくれました。
2024年は9月3日(火)~16日(月・祝)に、東京・コレド室町ちばぎんひまわりギャラリーにて個展を開催予定とのことです。
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