Yahoo! JAPAN

演出家と俳優という立場では待望の初顔合わせ! 赤堀雅秋と三宅弘城が語る、新作舞台『白昼夢』

SPICE

(左から)赤堀雅秋、三宅弘城

参加公演が中止になるなどして、共に約1年ぶりの舞台に取り組むことになった、赤堀雅秋三宅弘城。役者同士では共演経験があるものの、演出家と出演者という立場では意外にもこれが初顔合わせとなるこの二人。果たしてその相性は? と、期待は高まるばかりだ。

物語の中心となるのは、とある家族。年老いた父と、少し離れて暮らす長男、そして引きこもりの次男。家庭内暴力、“8050問題(80代の親が50代の引きこもりの子供の経済的支援をするという問題)”などを抱える彼らのもとに、少々怪しげなNPO法人の職員の男女も加わって、不毛と希望が綯い交ぜになった会話が繰り広げられる……。

この父親を風間杜夫、長男を三宅弘城、次男を荒川良々、NPO法人の男女を赤堀雅秋と吉岡里帆が演じる。個性の強い演技派ばかりが揃うため、それぞれの味がどういうバランスで生かされるかにも、ぜひ注目したい。

取材当日はまだ脚本執筆中だった赤堀と、これが念願の初赤堀作品となる三宅に、作品への想いを語ってもらった。

ーーまず、赤堀さんから今回の新作『白昼夢』がどんな作品になるか、ヒントをいただけますか。

赤堀:基本は“8050問題”をテーマに書きたいなというのが、最初の足掛かりでした。これは今に始まったことではなく、以前からそういう想いを抱いてはいたものの真正面から描いたことがなくて。それが今回、風間さんや三宅さん、荒川さん、吉岡さんというキャストの顔ぶれが揃った時に、ここできちんとこの問題を描いてみたいなと改めて思ったんです。だからといって、これは社会問題ではあるけれどもそれをお客さんに対して何か啓蒙したいということでもなく、そして今はこういうコロナ禍の大変な時期ではありますが、そこに特化するわけでもなくて。今、ここに漂っている空気感という言語化できないものを、どうやって掴みとって作中に生かせるかが劇作家としての自分の仕事だとは思っています。

赤堀雅秋

ーー三宅さんは今回、赤堀作品に初参加となりますが。

三宅:赤堀さんの作品を初めて観たのは『女の足の裏』で、あれが2002年だったからほぼ20年来の夢が叶った気分です。ことあるごとに、シャンプー(THE SHAMPOO HAT:赤堀が作・演出していた劇団)に出たいとマネージャーに言っていたんですが、なかなかタイミングが合わなくてなかなか実現しなくて。その間にも赤堀さんがナイロン100℃に出演されたりしていたので、役者同士として共演経験はあるんですけどね。今回ようやく、念願の赤堀作品に出られることになりました。

ーーなぜ、そんなに出たいと思われていたんですか。

三宅:赤堀さんの書く世界と、演出される空気感がものすごく好きなんです。劇的なエンディングを迎えたりすることはあまりないんですけど、それよりも、僕としてはそういう劇的なエンディングや、起承転結がなきゃ駄目、みたいなことは演劇に求めていないんです。それよりも、その場の空気感や、役者がちゃんとそこにいるかどうか、そういったことを体験したいタイプで。その点、赤堀さんの演出は僕の目指すこと、やってきたことと方向性が似てるなと思ったので、ぜひご一緒してみたかったんです。

赤堀:それにしても、20年近く前にやった『女の足の裏』が初めてだったなんて。あんなトチ狂ったような作品で(笑)。

三宅:観に行ったきっかけは、あの作品にナイロンの峯村(リエ)さんや新谷(真弓)さんが出ていたからだったんですけど。

三宅弘城

赤堀:しかし僕も、なんであんな芝居をやっちゃったかなあ。あのタイミングでもうちょっとウェルメイドな作品ができていれば今頃、大河ドラマの一本くらい書いていたかもしれないのに(笑)。劇団が最も注目されていた時期に、一番わけのわからないことをやってしまったんですよね。

三宅:ハハハ。逆にそれが、面白かったんですよ。

赤堀:あれを喜んでくれたのは、三宅さんと村岡(希美)さんとケラさんくらいでしたよ。

三宅:あと、城山羊の会の山内(ケンジ)さんもね。終わったあと「面白かったねえ~」って、かなり盛り上がりましたから。

ーー三宅さんは、赤堀さんから今回の作品の内容を聞いてどう思われましたか。

三宅:いや、内容に関しては別に赤堀さんが書くものだったらなんでもいいや、みたいなところがちょっとあるので。たとえこれがラブストーリーだったとしても、もちろんやりたいし。赤堀さんが書いて演出するものなら、もうね、なんでもいいんです(笑)。

ーー全幅の信頼を寄せていらっしゃる(笑)。共演者の顔ぶれについては、いかがですか。

三宅:超個性的な方々ばかりなので、唯一無二なものができる気がしますね。風間さんとは僕、初共演なんですけど。怖くないですよね?(笑)

赤堀:いやいや、優しい方ですよ。いつも、とても前向きですし。

三宅:優しい人ですよと聞いても、まだ非常に緊張しています(笑)。でも、どうやらサウナがお好きらしいので、サウナの話題で打ち解けられればと思っています。

赤堀:ハハハ、それはいいですね。

(左から)赤堀雅秋、三宅弘城

ーー荒川さんと兄弟役というのも、面白そうです。

三宅:ねえ(笑)。どうだろう、ちゃんと兄弟に見えるかなあ。

赤堀:見えるんじゃないですか、大丈夫ですよ。

ーー吉岡里帆さんの印象もうかがっておきたいのですが。どんな女優さんだと思われていますか。

赤堀:そこが今、僕としては一番悩んでいるところなんです。彼女はCMとかではほんわかした可愛らしさがあって、そこが魅力なんでしょうけど。でも今回はそこではなく、女優としての彼女の内面でうごめいているものを引っ張り出したいというか。そこにはCMから感じる癒しとは程遠い面も当然あるでしょうし、可愛らしさだけでは済まされない部分もあるでしょうし。せっかくご一緒させていただくなら、そういうグロテスクな部分をいかに引き出せるかが、面白みに繋がるのではないかと思っているんです。

三宅:僕は『あさが来た』(NHKの連続テレビ小説、2015年)で、大阪での撮影期間が一緒だったので。その頃、大阪はカレーがアツくて、よく一緒にカレーを食べに行ったりしていました。その時に『四丁目の夕日』(作:山野一)というかなり個性的なマンガがあるんですけど、それを貸したらすごく喜んでくれて。「読み終わった後、涙が出てしまいました」って連絡が来ましてね。

赤堀:えっ、あれで泣いたって? そうか……そっち側の人間か(笑)。ちなみに僕は、そのマンガを荒川良々からもらいました。

ーーなぜ、そのマンガをオススメしたんですか?

三宅:いや、話をしていた時に彼女ならこの面白さをわかってくれるかもしれないと思ったので。

赤堀:なるほど。いい話を聞かせてもらいました(笑)。

赤堀雅秋

ーー役者同士、共演経験はあるとのことですが、お互いの役者としての魅力とは。

赤堀:目の前で言うのも、なんだか恥ずかしいですけど(笑)。作品に取り組む姿勢や本番中のたたずまいはもちろん、もっと面白くしたいとか、何かをもうちょっと打破したいとか、常にそういう前向きな想いでいらっしゃるところがすごく尊敬できるなと思っています。

三宅:赤堀さんは、ものすごく真面目で。本番前には毎回、何度も自分のセリフを返されていましたから。

赤堀:ビビりなんですよ。

三宅:いやいやとても大事なことですよ。あと、いつも赤堀さんが舞台に出てきた途端に場が生々しくなって、リアリティが出てくる気がします。あれは意識して出せるものではなく、自然と醸し出されるものだと思いますけど。そういうのを共演者として目の当たりにして、ますます一緒にやりたくなったというところもあります。

ーー三宅さんをキャスティングしたのは、引きこもりの弟がいる兄という役どころに合わせてだったんでしょうか。

赤堀:それがもともとは逆で、三宅さんには引きこもりのほうを演じてもらおうかと思っていたんです。僕の感覚では、三宅さんってあまりそういう印象の役で見たことがなかったので。荒川くんも最初は牧歌的で明るい弟みたいな設定だったんですけどね。でも逆のイメージにしたほうが面白くなりそうな気がしたので、変えてみました。いずれにしても今まで見たことない三宅さんや荒川くんを、もちろん吉岡さんと風間さんもそうですけど、劇作家、演出家として引き出せるか。それは今回に限らず、毎回そういう思いで作っているつもりではいるんですけど。みなさんの新鮮な魅力をどうやって引き出すか、そこをまさに今、考えている最中です。

ーーご自身も出演者として登場されますが、劇作家としては役者のご自分をどう思われていますか。

赤堀:たとえセリフ3行でも文句を言わない、一番都合のいい脇役です。僕くらいのキャリアの別の役者を使えばおそらくもっとギャラもかかるでしょうしね、すごく重宝なんですよ(笑)。

三宅:それでいて、本番では一番オイシイところを持っていっちゃったりもするんですよね(笑)。

赤堀:いやいや今回は5人という少人数ですが、ものすごく素晴らしいメンツなので。がっぷり四つでやれるようなものができたらいいなと思っています。本当にいいキャストだと思います。吉岡さんは正直まだ不透明ですが、みんながみんな違う種類のダメ人間というか。自分勝手に役で突っ走るというよりは、ちゃんと舞台の上で反応し合えるような人たちばかりだと思うので、そこでの化学変化も楽しめそうな気がしています。

ーー“8050問題”をテーマにしつつ、それを「謙虚に、人間や人生を肯定する喜劇にするつもりです」とリリースではコメントされていましたが。どういう風に笑いにつなげるのかも期待するところです。

赤堀:まあそれは今回に限らず、毎公演そういう精神ではいるんですけどね。そこで起きる出来事や登場人物たちを笑ってしまうことで、ちょっとした救いになればいいなというのも喜劇にする意義だと思うんです。それも、決して上から目線ではなくて。

三宅:赤堀さんの書かれるものは、いわゆるわかりやすいコメディというより、観る側が見つけていく面白さもあると思うんです。そのあたりの加減が僕は好きなんです。「さあ、面白いですよ!」ではないというか。

三宅弘城

ーー「さあ、ここで笑いましょう!」という描き方ではなくて。

三宅:そうそう。だからこそ粋だと思うんです。

ーーということは、やはりお客さんの反応も毎回違ったりしますか。

赤堀:そうですね。基本的には笑ってほしいんですが、それでいてあまり安易に笑ってほしくないという矛盾する気持ちもあるというか。

三宅:ああー、わかります。

赤堀:あまりに笑われ過ぎていると、自分が描いた人物を「ちょっと、バカにしてんのか?」って思っちゃったりして(笑)。

ーーちなみに今回、お二人にとっての一番の楽しみというと。

赤堀:本当だったら、稽古や本番のあとにみんなで美味しいものを食べに行ったりしたいところなんだけど。

三宅:そうですよね、今回は地方での公演もありますし。

赤堀:それができないご時世ですから。粛々とものづくりに励むしかないですよね。

三宅:僕も、稽古場に毎日通うとか、同じ場面を何回も繰り返して稽古するとか。そういう今まで当たり前だったことができる喜びを、改めてありがたく感じつつ楽しみたいです。

(左から)赤堀雅秋、三宅弘城

取材・文=田中里津子  撮影=山本れお

【関連記事】

おすすめの記事