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TVアニメ『スナックバス江』リレーインタビュー② バス江ママ役・斉藤貴美子

Febri

TOPICS2024.01.04 │ 12:00

TVアニメ『スナックバス江』リレーインタビュー②


バス江ママ役・斉藤貴美子

北海道最大の繁華街「すすきの」から5駅離れた「北24条」の小さなスナックを舞台に、歴戦のママ&キレキレなチーママのコンビが、ひと癖もふた癖もある客を基本ふんわりと、ときに激しく、桃色の吐息で受け止める……。そんな『スナックバス江(以下、バス江)』の魅力を支える大黒柱、バス江ママを演じる斉藤貴美子に、作品に宿る「スナック」の精神をたっぷりと聞いた。

取材・文/前田 久

インタビュー_TOPICSスナックバス江声優斉藤貴美子

こんな人たちが身のまわりにいればいいのに

――まずは原作の印象から聞かせてもらえますか?
斉藤 今回のお仕事のお話をいただいたことがきっかけで知ったんですけど、読んだらすっかりハマりました。今となっては大ファンで、連載を追いかけています。

――どんなところが斉藤さんのツボにハマったんですか?
斉藤 描かれている世界が「大人」なところですね。話されている内容のバカバカしさだったり、納得できるところだったりの塩梅みたいなものが、とても「大人」の雰囲気なんです。こんな人たちが私の身のまわりにいればいいのに、私もこの世界に行けたらいいのに……と思わせてくれた。(原作者の)フォビドゥン澁川先生は天才だと思います。

――ちなみにスナックに行ったことは?
斉藤 初めて行ったのは大学生の頃……20歳くらいだったかな。バイト先の先輩に連れて行ってもらったんです。お店の人も、お客さんも仲よくしてくださって、みんなでわいわい楽しく飲んで。それ以来、「スナックって楽しいところだな」とずっと思ってはいたんですけど、当時はなかなかひとりで飲みに行く勇気が持てなかったんですよ。でも、20代の後半になった頃に、ひとり飲みのハードルを越えたところからいろいろなお店に通うようになって、30代になると居酒屋よりもスナックのほうが入りやすくなりましたね。いろいろなタイプのお友達もできましたし、それが役者としての力にもなりました。

「スナックの世界」がちゃんと切り取られている

――そうした経験の中で『バス江』でのお仕事に影響したものはありますか?
斉藤 歌ですね。数年前に雰囲気のいいお店の扉を偶然開けたら、お客様の年齢層が高いカラオケスナックだったんです(笑)。バーだと思って入ったのでビックリしてしまって。でも、そこがとても居心地のいい、40歳を過ぎた私を素敵なお姉様がたが「小娘」扱いしてくれるようなお店で。しばらく通っていたんですけど、今回、バス江ママとしてキャラクターソングを歌うことになったときに、そのスナックのことを思い出したんですよ。

――気になります。
斉藤 キャラクターソング自体はこれまでも歌ってきたんですけど、おばあちゃんの役で歌ったことはなかったんですね。おばあちゃんでキャラクターソングってなかなかないじゃないですか(笑)。どうしたものかと思ったときに、あのカラオケスナックで聞いた、いかに楽なところで声を出すかを重視した、お姉様の達観した歌いぶりを思い出したんです。譜面通りに歌を歌わない。遅れてみたり、ちょっと先に出てみたり、ひたすらに自分の世界観で歌う。それがまた、お上手なんですよね。スナックに行っていたおかげで、そういう年輪を感じられる歌い方を意識することができました。

――なんだかうらやましくなるような素敵なお話です。
斉藤 本当は自分でもお店をやりたかったくらいで、真面目に計画を立てたりもしたんですよ。コロナ禍があったりして、今はストップしているんですけど。でも、自分を成長させてくれた飲食店を、何かしらのかたちで応援できたらな……という思いはずっとあって。そんなときに『バス江』という、スナックが舞台の作品に出ることができて、本当にうれしいですね。作品のテンションも、ちゃんとスナックなんです。あの世界をそのまま切り取っている。

――どういうことでしょう?
斉藤 最近の作品は全体的に早口なものが多いんです。アニメだけじゃなく、映画の吹き替えでもそう。でも、『バス江』は――とくに第1話はすごくゆったりと作っているんですよ。だから見てくださる方も、もしかしたら最初は違和感があるかもしれない。私も(明美役の)高橋李依ちゃんも、最初はかなりハイテンションな芝居を用意していましたからね。それが監督と音響監督から「ここはスナックなんだよ」と言われて、目からウロコが落ちました。「そっか、この作品の世界は夜なんだ」って。だからもう、なんなら酒を飲める方は手元に用意してもらって、一緒に飲みながら見ていただくと、いい具合なんじゃないかと思います。そういう、日常の面白さが描かれている作品なんですよね。

次ページ「ギャグのお芝居こそ難しい」を痛感<!--nextpage-->

じつは「かわいい」バス江ママ

――バス江ママらしさを表現するために、特別に意識していることはありますか?
斉藤 「かわいさ」ですね。監督から「かわいいおばあちゃんでいいんですよ」と言われたとき、最初はちょっと意外だったんです。でも、「スナックバス江」は長年続いているわけで、とすると明美ちゃんひとりの魅力だけでは成り立たない。やっぱりママもすごくチャーミングな人なんだろうなと、監督の言葉で気づいたんです。

――見た目はエキセントリックですし、言動もときどき弾けますけど、本質は「かわいい」んですね。
斉藤 そうそう。あともうひとつ意識しているのは「そこにいなきゃいけない」ということですね。セリフをしゃべっていないときでも、バス江ママはカウンターに座って、明美ちゃんやお客さんの話を聞いているんです。だから私も同じく、そこに座って、ちゃんと聞くようにしていました。つい台本を見て「あ、次、私のセリフ」と備えてしまいそうになるんですけど、ずっとバス江ママの状態をキープし続ける。ギャグだからこそ、勢いでセリフが出てしまうことの怖さを感じる現場でしたね。ちゃんとそのセリフまでの流れがあって出てくる言葉にしたいと思っていました。

――会話と会話の連続性が大事な作品なんですね。
斉藤 本来はどの作品でもそうなんですけどね。でも、コメディでそれをやるのは、本当に難しいことで。第1話のテストでは「斉藤貴美子が思うバス江」がバーっと勢いで出てしまったんです。「ギャグのお芝居こそ難しい」と、この作品で実感しています。「笑わせてやろう」「この言い方は面白いだろ?」ってセリフを投げかけたら、絶対につまんないんですよ。

――そんな中で「このセリフはインパクトがあったな」というものはありますか? 強いフレーズだらけの作品ですが……。
斉藤 「しかし…あわよくば!?」ですね(笑)。あんなことをあの状況で言われたら、もう相手はたじたじでしょう。

――少々意外なセリフが。
斉藤 あれはバス江ママとしては、本気で思っているんですよ。「このセリフを言えば、相手は引いて逃げていくだろう」なんて計算はしていないんです。相手に「そうじゃない」と言われても、本人は「お前じつは『あわよくば』って思ってんだろう」って本当に考えている。だから私も本気でやりました。「全力で来な!」という気持ちで。そのインパクトが描けるから、フォビドゥン澁川先生は天才だなと思うんです。

「やっぱり声優の仕事は面白い」と思えた作品

――共演者のお芝居で、思わずうなったものはありましたか?
斉藤 最初からいるレギュラー陣のすごさはもちろんなのですが、途中からレギュラーに加わるキャストがもういきなり「スナックの住人」という雰囲気を持って現場に入ってくるのに驚きました。

――なじみ方がすごい。
斉藤 そう。小雨ちゃんなんか「昔からずっとバイトでいたよね?」みたいなお芝居を宮本侑芽ちゃんがパッと出してくれましたし、各話のゲストの方もそうなんですよね。この作品ではたったひと言、ふた言のために「嘘だろう!?」と思うほどの豪華なキャストの方がいらっしゃるんですけど、皆さん本当にずっとこの世界で一緒にお酒を囲んでいたような空気を出される。そうした方々の音声が入ることで、原作を読んでいて、ちょっと苦手だなと思っていたキャラクターが愛せるようになったりもするんです。典型的なのは、風間先輩とか。

――福島潤さんの。
斉藤 本当に風間先輩にはぜひ注目していただきたい。声を聞いていたら、不思議となんだか憎めなくなっているんです。原作を読んだときは、ちょっとウザいと思っていたのに、小学生のまま大人になっちゃった、悪意がない人なんだなと感じて、むしろ大好きなキャラクターになりました。「やっぱり声優の仕事って面白いわ」とすら思いましたね。芝居でここまでキャラクターの印象が変わるんだって。

――各話のエンディングでは、そんな素敵な声優さんたちのカラオケまで楽しめてしまうという。
斉藤 そうなんですよね。「俺は普段、歌の仕事は断ってんだよ」なんて言いながら素敵な歌声を聞かせてくださった先輩もいて、本当にうれしかったです。ぜひ全話、楽しみにして、聞き逃さないでいただきたいですね。バブみを感じておぎゃりたくなるチャーミングなバス江ママ、お客様にいつも初球直球どストライクな頼もしいチーママの明美ちゃん、かわいいけれどちょっと天然なバイトの小雨ちゃん、3人揃って皆様のご来店をお待ちしておりますので、ぜひご覧ください。よろしくお願いします!

斉藤貴美子さいとうきみこ 2月12日生まれ。長野県出身。青二プロダクション所属。主な出演作に『ONE PIECE』(ボア・マリーゴールド、カタリーナ・デボン役)、『ゴールデンカムイ』(ソフィア役)の他、『クリミナル・マインド』(ペネロープ・ガルシア役/カーステン・ヴァングスネスの吹替)、『レディ・プレイヤー1』(ヘレン・ハリス役/リナ・ウェイスの吹替)など、洋画吹き替えの出演も多数。リレーインタビュー第3回に続く作品情報

TVアニメ『スナックバス江』
2024年1月12日(金)よりTOKYO MX他にて放送開始!

©フォビドゥン澁川/集英社・「スナックバス江」常連一同

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