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大都市・東京でも地域と協力しながら生きる。いろどりの杜が提案するコミュニティ型団地生活

Harumari

大都市・東京でも地域と協力しながら生きる。いろどりの杜が提案するコミュニティ型団地生活

リモートワークをきっかけに、職種や職場、ライフラインに縛られない新たな生き方を模索できる時代になった。その基盤となる住環境の充実を求めて、人々の価値観が変わりつつある。そんな時代のニーズに先駆けて、新たな生活様式を模索しているのが綾瀬にある賃貸住宅「いろどりの杜」だ。アウトドアやDIY、畑づくりなど、暮らしながら自分がやりたいことにトライできる理想の物件として、入居希望者が後を絶たない。その運営をするフージャースアセットマネジメントの根本香さんと「いろどりの杜」の住人であり、コミュニティビルダーとして活躍する、辻麻梨菜さんにお話をうかがった。

既成の暮らしから育てる暮らしが実現する「いろどりの杜」

ここ数年で加速している東京都の団地再生プロジェクト。ここ「いろどりの杜」もそのひとつで、もともとは昭和30年代に建設されたUR都市機構の旧東綾瀬団地だという。

「最初はUR都市機構が持っていた古い団地を有効活用しようということで始まったプロジェクトでした。ただ箱だけ作って既成の暮らしをしても面白くないということで、『ハンズオンヴィレッジ』という賃貸で、団地の住民と協力しながら自分らしく暮らしを作っていける住環境を用意しました」(根本さん)

根本さんがいう「ハンズオン」とは、自ら触れてみたり試したり、遊んで見たりして本物の体験をすること。自ら発見し、学びや成長の機会を得ようとする考え方だそうだ。そんなコンセプトで生まれた「いろどりの杜」には内装がカスタマイズできる住居やキャンプなどのアウトドアが楽しめる広大な庭、お祭りやワークショップなど、住民が参加できるさまざまな設備や企画が充実している。

庭にはシェア菜園があり、住民が農作物を育てている。

イベントを通して地域の人に団地の住民を知ってもらう

企画は住民のやりたいという声から始まるそうだが、その企画が実現するまでのお手伝いをするのが、コミニティビルダーである辻さんだ。「はじまり商店街」というコミュニティービジネスを展開する組織に所属している辻さんは、この団地にリアルに暮らしながら団地のコミュニティーを作る仕掛けを住民とともに企画しているという。

「『はじまり商店街』という組織では場づくりやファンづくりのお手伝いをする事業をやっていて、この『いろどりの杜』のようにハードがあって、そこに賑わいを作ることを一緒にやっていました。例えば、ここ足立区は職人さんが多い街なので、足立区で活躍する職人さんをゲストに呼んでトークイベントをすることで、地域について知ってもらうとか。私の他にも『いろどりの杜』には『はじまり商店街』の代表も住んでいて、一緒に団地を盛り上げようと日々奮闘しています」(辻さん)

仕事でありながらも、ここでは『はじまり商店街』という肩書をあまり見せずに、あくまでもいち住人として同じ目線でコミュニティに参加するのも重要だという。2月のオープン以来、コツコツと住人の声を吸い取り要望を形にしてきた辻さんだが、なかでも1番反響を感じたというのが、団地の広大な庭を使って行ったパン祭りだそうだ。住民の方とプロジェクトチームを作り、チラシづくりや運営まですべて住民たちで行ったイベントだという。

団地住民が主催で地域の人を敷地へ招いた「秋のパン祭り」の様子。

「『パン祭り』は足立区のパン屋さんに出店してもらって、住民の方とひとつのリアルなイベントを作ることを目標としました。周辺の地域の方々にもう少し地域に開かれた団地だということを知って欲しかったんです。来場者に団地が主催しているイベントだということや団地のコンセプトを説明することで、『いろどりの杜』には面白いことをやっている人たちが住んでいることを認知してもらうきっかけになりました」

住民の皆が得意な技術を掛け合わせて作る「いろどりの杜」のイベントプロジェクト。ゆくゆくはこれがビジネスとして成立すれば、もっとライフスタイルの選択肢が広がっていくと辻さんはいう。

こちらの高さのある棚兼、パソコンデスクのコンセプトは映画館。目の前にある大きなテレビをいろんな位置から見れるように、腰掛ける位置を計算して作ったという。

住まいを自分色にアレンジできるDIY賃貸

住民と力を合わせてイベントに励む人もいれば、自分の部屋のDIYにハマっている住民もいる。写真は、住民の中でもトップ3に入るくらい部屋のDIYに熱中し、住空間を自分仕様に作りあげた朱志剛さんの部屋。“無いものは作る”精神で、これまでにベットや椅子、棚など家にあるものはほぼすべて作ってきたそうだ。

ベランダにはDIYの木材を収納できる倉庫も。手前のベンチはコロナ渦に作ったベンチだそうだ。

さらに、家のDIYや塗装で困ったら、住民に大工さんが住んでいるのですぐに相談できるのも他にはない魅力だ。田舎の暮らしでよく見られる同じ地域に住む人たちと協力しながら生活ができるのも『いろどりの杜』ならではといえよう。

敷地内の古屋で作業をしている大工の鈴木大地さん。

都市生活の新たな選択肢を提案

ライフワークバランスが重視され始めた2000年代、そして今年のパンデミックによってプライベートと仕事を区別しない生活が徐々に浸透しつつある。今だからこそ、新しい住環境の選択肢が注目されているが、かねてから暮らしやコミュニティに関わる仕事をしてきた根本さんと辻さんは、現在の東京の暮らしをどう見ているのだろうか。

「自分だけで完結せずに地域みんなで暮らすという、本来の日本では当たり前だったことが、タワーマンションなど効率化を求めることによってなくなりつつありました。でも、そういう暮らしをする人がいる一方で、近所との付き合いやコミュニティーが重要になってきていることに、感度の高い人たちが気付き始めている実感があります」(辻さん)

「多様性が増えた感じがしますね。数年前より東京でも、シェアハウスで暮らすことが選択肢のひとつになった。SNSの広がりによって、こういう暮らし方があるという発信や受け取りがしやすくなったこともあり、感度の高い方が自分の理想の住環境を探すのに動きやすくなったと思います」(根本さん)

2人がこう話すように、事実「いろどりの杜」は2月のオープン以来、ずっと満室が続いている状況だ。そしてコンスタントに入居希望の問い合わせが続いており、なかなか入居が難しい。この現象もひとつ、人と繋がる暮らし方を求める人が増えている現れだろう。これまで生活環境の選択肢が限られた都市の暮らしだったが、東京でも住環境の選択肢が広がる兆しが見えはじめている。自分の暮らしに少しでも満足していない要素があるなら、このタイミングで理想の暮らしを手に入れるべく動き出してみるのもアリかもしれない。

写真:浦 将志

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