子どもの「骨量」は成長期までが勝負!「骨育」に重要な3要素を〔整形外科医〕が解説
骨の成長は20歳がピークのため、「骨育」は成長期がカギ! では、子どもの骨密度を高め、将来の骨折や健康リスクを防ぐにはどうすればいいのか。子どもの骨を強くしなやかに育てるために、今、親が知っておくべき骨育の疑問に整形外科医の伊藤薫子先生が答えます。
【▶画像】運動神経がグンと伸びるゴールデンエイジとは?現代っ子は、親世代よりも食生活が充実したおかげで、身長が伸びて体格も良くなっています。その一方で、日常で体を動かす機会が減り、身体能力が低下。バランスを崩して転倒し、手をついた拍子に手首を骨折するなど、骨の軟弱化が問題となっています。強くしなやかな骨を持つ子どもに育てるには、どうしたらいいのでしょうか。
1万人以上の骨粗しょう症患者さんを診察してきた整形外科医の伊藤薫子(いとうかおるこ)先生に、成長期の骨と骨育について伺いました(全2回の第1回)。
運動・睡眠・栄養の3要素で骨は成長
──子どもの骨の成長と運動の関係について教えてください。
伊藤薫子先生(以下、伊藤先生):成長期に体を使う機会が少ないと、危険を回避する経験が減り、体をうまく使えずにけがをしやすくなります。運動不足は、けがだけでなく骨の成長にも影響が出ます。なぜなら骨は遺伝も影響するものの、外的要因として運動・睡眠・栄養の3つの要素が密接に関係して成長しているからです。
運動といっても、アスリートのように激しく鍛える必要はありません。学校生活の中で体育の授業を受け、通学で歩き、校内の教室移動に階段の上り下りをする程度で大丈夫です。
3~5年で全身の骨が入れ替わる
伊藤先生:骨は常に新陳代謝を繰り返しています。骨には、骨を新しく再生するために古い骨を溶かしてカルシウムを血中に流す「破骨細胞」と、血中のカルシウムを取り込み、骨に定着させることで新しい骨に作り直す「骨芽細胞」があります。
この二つの細胞の働きで、大人では5ヵ月もすれば新しい骨に生まれ変わり、3~5年で全身の骨が入れ替わるといわれています。
成長期の子どもの骨は新陳代謝が特に活発なため、大人よりも再生スピードが速く、骨折しても2/3程度の期間で治ります。
運動して骨に刺激を与えるとさらに活性化し、骨量が増していきます。成長の過程で骨格ががっしりしてきて身長が伸びるのも、新陳代謝のおかげです。
そして人は、成長期までに作られた骨量で一生を過ごします。
増えてきた小児期からの肥満
伊藤先生:食が豊かになった今では、子どもがあまり運動をしないでたくさん食べ、肥満になるまで栄養を摂りすぎてしまうことがあります。栄養の摂りすぎが早期の骨の「成熟」を招き成長を止めてしまうことがわかっています。
また、肥満になるととっさの反応が鈍くなり、バランス機能が低下して転びやすく、骨折のリスクが上がります。それどころか、体内のホルモンバランスが乱れて骨密度が下がり、もし骨折すれば運動不足でさらに肥満になっていく……、という負のスパイラルを生み出します。
成長期に運動して骨量を増やし骨密度を高めておくことは、いわば将来への骨貯金です。
骨の土台は、保護者とともに過ごす成長期にでき上がります。そのため、大人になってから骨ケアをするよりも、骨育は成長期に行うことが重要なのです。
骨貯金のための3つのポイント
1.カルシウムの摂取
学校では給食があり、栄養計算された食事を摂ることができます。毎日の献立に含まれている牛乳は手軽にカルシウム摂取ができる代表選手です。牛乳1本(200ml)でカルシウムは約220mgが摂れます。家庭では小魚、海藻、大豆製品なども摂取し、1日につき幼児で500mg、小学生で700mg、中高生で700~900mgのカルシウムを積極的に取り入れましょう。
2.正しい姿勢を保つ
学校にいる間はよくても、家に帰るとゲームや携帯端末などを長時間使用して首や腰に負担がかかり、ストレートネックや猫背、腰痛を訴える子どもも出てきました。
正しい姿勢は強い骨と骨を支えている筋肉があって保たれます。頭の重さは体重の約10%といわれており、3歳で約1.5kg、12歳で約3~4kg、中学生で約4~5kgです。前のめりになって突き出た頭を首の一点で支え続けると、首が悲鳴をあげます。その首を守るために前傾姿勢になり、頭痛や肩こり・腰痛を誘発すれば、勉強にも身が入りません。
正しい姿勢を保つには、胴体の真上に頭が乗っていることが大事です。画面を見続けても1時間したらできれば休憩を挟み、肩甲骨を回す体操をしましょう。
【肩甲骨体操】
① 肩を数回上下に揺らして、上半身の力を抜く。
② お腹の中心を縦に伸ばすよう意識しながら、お腹とお尻をキュッと締める。
③ 両腕を曲げて肩の上に指を置く。
④ 呼吸を止めずに、前から後ろに5回、肘を大きく回す。
⑤ 後ろから前にも5回、肘を回す。
3.十分な睡眠
眠っている間に脳の下垂体から「成長ホルモン」が分泌され、骨や筋肉の成長を促進します。分泌される時間は、かつて22時から夜中2時までがゴールデンタイムといわれていましたが、最新の睡眠研究では就寝後1~3時間とされています。そのため、成長ホルモンを効果的に出すには、睡眠の前半に多く見られる「深睡眠」という最も深い眠りが重要です。
しかし、騒々しい場所で寝ていて常に眠りが浅かったり、睡眠不足を補うお昼寝時間が多すぎたりすると、就寝しても熟睡できず成長ホルモンが十分に分泌されなくなります。成長ホルモンの分泌低下は身長の伸びを鈍らせ、体幹部に体脂肪が増えて肥満になる恐れもあります。
厚生労働省の指針によると、子どもの理想的な睡眠時間は次のように推奨されています。
ライターが「健康づくりのための睡眠ガイド 2023」を参考に説明図を制作
親が夜更かしすると子どもも寝るのが遅くなり、睡眠時間が足りないお子さんが増えています。睡眠不足は骨の成長だけでなく、脳の発達にも関与します。「寝る子は育つ」ということわざには根拠があるのです。
朝日を浴びると脳の活動を調整するホルモンのセロトニンが分泌され、一日の生活リズムがリセットするので、早寝早起きの習慣になるよう生活リズムを見直しましょう。
───◆───◆───
骨量は第二次成長が始まる思春期に特に上がる率が高いので、この時期にいかに骨量を増やし、骨の強度を上げておくかが肝心だと伊藤先生は話します。だからこそ、「子ども時代の骨育」は重要です。
次回は成長期の骨の成長に欠かせない3要素の最後の一つ、「栄養」についてレシピなどを紹介します。
取材・文/石牟礼ともよ
─◆─◆─◆─◆─◆─◆
◆伊藤 薫子(いとう かおるこ)
「かおるこHappyクリニック」院長。日本整形外科学会専門医、日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医。東京女子医科大学医学部卒業後、慶應義塾大学医学部整形外科学教室へ入局。関連病院勤務、アメリカ留学を経て慶應義塾大学病院骨粗しょう症外来を担当。2021年7月、帝国ホテル東京内に女性のための整形外科クリニックを開院。
「いくつになってもハイヒール」をモットーに、女性一人一人の骨と関節の悩みに寄り添う診療に定評がある。症状が悪化してから来院する患者さんを年間1000人以上診てきた経験から、最近では骨がスカスカになる前に対処する「予防医学」にも力を入れている。『Dr.クロワッサン 一生歩くための骨活。』(MAGAZINE HOUSE MOOK)を監修し、4ヵ月オンラインで行う骨活プログラムが人気。