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Plastic Tree 結成30周年“樹念”ツアー『続・Plastic Tree』ファイナル公演に見た未来への希望「どうぞこれからもよろしくお願いします!」

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Plastic Tree

Plastic Tree 結成30周年“樹念” Autumn Tour2024「続・Plastic Tree」
2024.10.27 Zepp DiverCity(Tokyo)

舞台照明として19世紀に使われていたという、ライムライトこと石灰灯。その淡く幻想的な光の色こそ実際には見られなかったものの、Plastic Treeが今宵のライブで最初に奏でだすことになった「ライムライト」は《迷えば夜は優しく 手招き帳が降りる》という歌詞のごとく、観衆の心と意識を《今だけどこか攫って》いく楽曲として、場内を音でひたひたと満たすかのように響きだしていったのだった。

今春、結成30周年の節目にあたりセルフタイトルを冠した約4年ぶりのフルアルバム『Plastic Tree』を発表し、それにともなった春ツアーを開催して好評を博したPlastic Treeは、引き続いての全国行脚としてこのたび全8本におよぶ『Plastic Tree 結成30周年“樹念” Autumn Tour 2024「続・Plastic Tree」』を敢行。そして、そのツアーファイナルとなったのが去る10月27日に行われたZepp DiverCityでの公演だ。

有村竜太朗

「やぁ、やぁ。Plastic Treeです。本日は東京お台場にやって来ました。どんより天気の日曜日ですけれども、ウチららしい日曜日になりそうで楽しみです。それでは『続・Plastic Tree』ツアーファイナル・東京公演のはじまり、はじまり」(有村竜太朗)

春ツアーでもライブ本編ではアルバムの収録曲たちが全て披露されていたのだが、今回のツアーでもその部分はしっかりと踏襲。有村竜太朗がギター&ボーカルとしての存在感を強く発揮した「no rest for the wicked」、ベーシスト・長谷川正の刻むベースラインが曲全体を牽引していった「ざわめき」や、ドラマー・佐藤ケンケンが作詞作曲を手掛けているアンニュイなトーンの「ゆうえん」、ギタリスト・ナカヤマアキラが通常のモニターシステムではなくヘッドフォンを用いてのより繊細かつ完成度の高いギタープレイを聴かせてくれた「宵闇」などをはじめとして、彼ら4人はこの場で『Plastic Tree』の世界をいっそう深い次元で体現していくことになったと言っていいだろう。

ナカヤマアキラ

それでいて、セットリストの随所には2002年発表のアルバム『トロイメライ』の冒頭を飾っていた「理科室」や、2012年のアルバム『インク』の収録曲でありながら何故か最近になってアメリカやフランスで新たに注目されサブスク再生数が急増したという「てふてふ」といった、いわば“これまでのPlastic Tree”が築き上げてきた歴史を物語るような曲たちも組み込まれており、その点ではまさに結成30周年“樹念”な要素もこのライブにおいてしっかりと味わうことができたのである。

また、春ツアーの際に「invisible letter」にちなんで定例化した“過去の自分たちから、今の自分たちに送られた手紙を読み上げるコーナー”が今回の秋ツアーでも各メンバーの持ち回り制により実施されていくことになったそうで、当夜はスーパーリーダー・長谷川正のしたためたものを有村竜太朗が朗読。

長谷川正

「拝啓、プラの皆さまへ。いよいよ今日はツアーファイナルですね。会場にいるみなさんと最後まで楽しんでください。僕は今、プラとしては初のワンマンを控えて新宿ロフトにいます……こちらもがんばります。ところで、Zepp DiverCityとは何処にあるのでしょうか? 1995年12月11日・長谷川正より」

1995年12月11日といえば、Plastic Treeにとってのインディーズ1stミニアルバム『Starnge fruits -奇妙な果実-』が発売された当日であったと同時に、初の全国ツアー『TOUR Starnge fruits -奇妙な果実-』の初日でもあり、その頃の新宿ロフトは現在の歌舞伎町ではなくまだ小滝橋通りで営業していたはず。ましてや、Zepp DiverCityどころか当時のお台場は13号(埋め立て)地と呼ばれていたうえ、今やランドマークのフジテレビさえ新宿・曙橋から移転してきていない空き地だらけの有り様で、ゆりかもめ新橋~有明の間がようやく1995年11月に開業したばかりの実に閑散とした状態だった、と記憶している。

佐藤ケンケン

「1995年だとZepp DiverCityはなかったですもんねぇ(笑)」(有村竜太朗)

「いやほんとに。過去の長谷川からしたら“何処ですかそれ?”ってなるだろうなと思いまして(笑)。でも、もし1995年の長谷川が今日のZepp DiverCityの光景を見たら、きっと泣いて喜ぶでしょうね。みなさん、本当にありがとうございます!」(長谷川正)

有村竜太朗

なんでも、この夜のZepp DiverCity公演についてはチケットが見事に完売していたとのことで、そんな満員御礼の場内に向けて本編後半で盛大に放たれたのは最新アルバム『Plastic Tree』の中でも随一のハンパネーゼなアッパーチューン「シカバネーゼ」。とはいえ、ここからライブ自体はさらに深淵へ向かっていくことになり、本編ラストは静けさの中である種の死生観が綴られた「剥製」、新譜からの曲である美しく儚い響きを持った「メルヘン」、《ここから見えるのは とても遠い僕ら 過去にも未来にも見えた》という詞が時の流れの感慨深さと重なった「スピカ」の3曲で締めくくられることに。

ナカヤマアキラ

さらなるアンコールでは、リリカルなバラード「真っ赤な糸」からの10分に迫る長尺にしてエモーショナルな「夢落ち」で行き着くところまで行き着き、その後のダブルアンコールではなかば“ツアーの打ち上げ”のような砕けた雰囲気でダンサブルな「マイム」とプラ的ギターロック「メランコリック」が大炸裂し、バンド側も海月(ファンの総称)さまたちも、大変にご満悦な状態でこの千秋楽を締めくくることができたのではないかと思われる。

長谷川正

「秋のツアー『続・Plastic Tree』に来てくれた人たち、本当にありがとうございました。今日だけじゃなく、どこか1本でも遊びに来てくれたみんなにも感謝したいです。これはヘンな意味とかじゃないんですけど、今回Plastic Treeとして『Plastic Tree』っていうアルバム名をつけたのは“これが最後でもしょうがないか”くらいの気持ちがあったからです。そのくらい良いものを作りたいという覚悟があったんですが、そういう俺らの覚悟がそんなに意味なくなっちゃうくらい、この秋のツアーではまたみんなから元気をたくさんもらいました。ちょっと弱気になる時もある俺らに対して“おまえら、バンドやれよ!”って海月から励まされたような気がします。よっしゃ、枯れない樹としてもっと頑張っていこうって思いました。ありがとうございます! 11月には過去の自分たちを迎え入れる『Plastic Tree結成30周年“樹念”特別公演「モノクロームシアター」』もEX THEATER ROPPONGIでありますし、12月には年末公演『ゆくプラ くるプラ』もありますしね。2024年後半もみなさんと楽しい冬を迎えたいと思いますので、どうぞこれからもよろしくお願いします!」(有村竜太朗)

佐藤ケンケン

終演後のSEとして映画音楽「ライムライト~テリーのテーマ」が流される中、有村竜太朗が語ってみせたこの言葉から感じとれたのは未来への希望そのもの。かつて世界中の舞台で使われていたという石灰灯は20世紀の訪れとともにこの世から消え去ってしまったが、30年の歳月を経てPlastic Treeの灯し続けるライムライトは、彼らの進み行く前途を照らしだしていくに違いない。

取材・文=杉江由紀 撮影=上野留加

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