重度の貧血に陥る前に。体質のせいにしない「貧血」との“正しい向き合い方”
体の不調を「歳のせいだから仕方ない」と、諦めてしまいがちな更年期世代。忙しい毎日が続く中で、自分自身の健康を後回しにしていませんか? 特に貧血は、更年期症状と似ていることもあり、見逃されることも多いと言います。今回は、産婦人科専門医の沢岻 美奈子先生に「専門家が40代女性のみなさんに伝えたいメッセージ」をお届けします。
教えてくれたのは……沢岻 美奈子(たくし みなこ)先生
日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医。女性ヘルスケア認定医。神戸にある、医療法人社団 沢岻美奈子女性医療クリニック理事長。子宮がんや乳がん検診、骨粗鬆症検診まで女性特有の病気の早期発見のための検診を行う。診療では、更年期を中心にホルモンや漢方治療だけでなく、カウンセリングや栄養療法も取り入れている。
多くの女性が抱える「貧血」
女性の皆さん、「最近なんとなく疲れやすい」「立ちくらみ、めまいが増えた」「集中力が続かない」といった症状を感じていませんか? それは、日々の忙しさや加齢のせいだけではなく、貧血が隠れている可能性があります。実際に、女性はライフステージを通じて貧血になりやすく、日本では約2割の女性がさまざまな形で貧血を抱えているとされています。
特に、痩せ願望が強い若い世代ではその頻度が高いと言われており、妊娠中の鉄不足が赤ちゃんの発育に影響を与えることも。ストレス社会で多忙な働く世代の女性も含めると、ほとんどの女性が貧血状態に陥る可能性があると言えます。
多くは「鉄欠乏性貧血」に当てはまる
月経がある方は、毎月の出血によって慢性的に鉄を失っていることが多く、特に月経過多がある場合には鉄の損失が大きくなります。また、妊娠や出産を経験された方、ダイエット中の方や食事制限をされている方も、鉄分が不足しやすい傾向にあります。閉経後であっても、胃腸の病気や栄養バランスの乱れなどが原因で貧血を起こすことがあるため、どの年代でも注意が必要です。
貧血は、きちんと原因を調べて適切に対処すれば「必ず改善する」
貧血は「血が薄い」状態を指しますが、実際には全身の細胞に酸素がうまく運ばれないため、「疲れが取れない」「動悸や息切れがする」といった症状をはじめ、「肌や髪の調子が悪い」など、見た目にも影響を及ぼすことがあります。これらの不調に慣れてしまって「体質だから」「年のせい」と思い込んでしまう方も多く、気づいたときには重度の貧血に陥っているケースも珍しくありません。
しかし、よいニュースもあります。貧血は、きちんと原因を調べて適切に対処すれば、必ず改善する病気です。鉄分を多く含む食品を意識してとることや、必要に応じて鉄剤・サプリメントの服用、さらに婦人科的な治療(ピルや子宮内避妊具など)を組み合わせることで、体調が大きく変わることも少なくありません。
「なんとなく調子が悪い」と感じている方は、一度血液検査を受けて、鉄分やヘモグロビンの状態を確認してみましょう。できれば、鉄の蓄えを見るフェリチンも測ることをお勧めします。体の変化に早く気づき、向き合うことが、これからのあなたの健康を守る第一歩になります。
「鉄不足」を見直して、自分の健康を支えるきっかけに
私たち産婦人科医は、女性の体の変化や不調を理解し、寄り添うパートナーでありたいと考えています。どうか一人で抱え込まず、気になることがあれば気軽に相談してくださいね。あなたがもっと元気に、自分らしく毎日を過ごせるように。その第一歩として、体の内側の「鉄不足」に目を向けてみましょう。
shukana/webライター