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父と娘、ドラゴンと人間——つながりと変化の物語。映画『小林さんちのメイドラゴン さみしがりやの竜』カンナ役・長縄まりあさん×トール役・桑原由気さんインタビュー

アニメイトタイムズ

写真:アニメイトタイムズ編集部

京都アニメーションが手がける人気シリーズ『小林さんちのメイドラゴン』が、ついに映画としてカムバック!

待望の新作となる映画『小林さんちのメイドラゴン さみしがりやの竜』が、2025年6月27日(金)より全国公開となります。

物語の中心となるのは、ドラゴンの少女・カンナと、彼女の父・キムンカムイ。カンナのバックグラウンド、父と娘の繊細な関係を描きながら、シリーズの根底にある「異種間交流」や「変化」を丁寧に表現した作品となっています。

アニメイトタイムズでは、カンナ役の長縄まりあさんとトール役の桑原由気さんにインタビュー!

感情を緻密に描き出す本作の魅力や、思わず涙してしまったというエピソード、長年演じてきたキャラクターへの想いについて、たっぷり語っていただきました。

物語を通して、おふたりが感じたこと、ファンの皆さんに受け取ってほしいメッセージとは?

【写真】映画『小林さんちのメイドラゴン さみしがりやの竜』長縄まりあ×桑原由気インタビュー

映画はポケットティッシュ2個が必須!?

──本作の制作が発表された時のお気持ちをお聞かせください。

トール役・桑原由気さん(以下、桑原):凄く嬉しかったですし、私たちもびっくりしました。新しいシリーズを作って欲しいと思っていたんですけど、まさか映画になって帰ってきてくれるとは……!

睦心さん(田村睦心)やまりあちゃんとは、お仕事で会う機会も多くて、会う度に「映画楽しみだね」と話していました。

──今回は、原作でも人気のエピソードが映画化されました。

桑原:原作を読んでいる方は、最初に発表されたビジュアルのカンナを見ただけで、「あの話をやるんだ」ってわかりますよね。作品の中でも、特に壮大な物語になっていると思うので、皆さんも楽しみにされているんじゃないかなと。演じる私たちも、どんな映画になるのかワクワクしながら待っていました。

──今作は長縄さん演じるカンナが主役になるエピソードです。

カンナ役・長縄まりあさん(以下、長縄):ティザービジュアルを見た時から、カンナの心情が大変なことになりそうだなとドキドキしていました。収録前から気合を入れて、これまで以上に頑張らなければと思っていました。

公式Xの告知ポストを見てみると、皆さんからのコメントやいいねの数がたくさんで嬉しかったです。期待に応えられるお芝居をしないといけないなと。

──アフレコに臨む前に、台本や映像をご覧になった際の印象はいかがでしたか?

長縄:台本を読んだり、まだ皆さんの声が入っていない映像を観た段階から、ポケットティッシュ1個じゃ足りないくらい泣いてしまいました。

──感動的なシーンも多いので、ティッシュ2個以上は必要ですね。

長縄:2個以上は絶対に必要ですし、次の日も目が腫れてしまって(苦笑)。それくらい感動しました。

──桑原さんはいかがでしたか?

桑原:もちろんTVシリーズも含めて全部観てほしいんですけど、本作から観始めても楽しめますよね。それくらいひとつの物語として完成されていると感じました。観終わったあとには、温かい気持ちにもなれて。

映画だけ観ても、キャラクターたちの関係性や、家族・仲間の絆を十分に感じることができるように描かれています。『小林さんちのメイドラゴン』について、何も知らない方でもふらっと観に来てほしいですし、楽しんでいただける作品だと思っています。

──誰もが考えたことのある普遍的なテーマが描かれていました。長縄さんが涙してしまったのも、家族や仲間の絆という部分ですか?

長縄:そうですね……すごく泣けました。

桑原:カンナは元々寂しさがあって、お父さんや仲間にいたずらをしてしまって、小林さんたちの世界に来たわけです。

今作では、そんなカンナの父であるキムンカムイ(CV:立木文彦)が登場することによって、よりカンナのバックボーンが伝わります。これまでも、さみしげなカンナは描かれていますが、それがより鮮明になっているというか。

キムンカムイ、アーザードの『メイドラゴン』らしさ

──本作では、新しいキャラクターとしてキムンカムイとアーザード(CV:島﨑信長)が登場しますね。

桑原:このふたりがいてこその映画ですよね。重要なキャラクターなのは間違いないのですが、『メイドラゴン』らしさがあるというか。ちょっと悪いこともしてしまうふたりですけど、それにはちゃんと理由があって。

キムンカムイは、人間の価値観に触れないままずっと生きていて、決して悪意で行動しているわけじゃないんですよね。ただ、知らないだけ。それは、立木さんの声がついた時により感じられました。

本当にピュアというか、カンナ目線で見ると「なんで……?」って思うこともあるんですけど、真っ直ぐなキャラクターであることがわかります。謎が多いアーザードにも言えますが、憎めない印象ですね。

──そういう憎めなさが『メイドラゴン』のキャラクターらしいと。

桑原:そうですね。全員にしっかりバックボーンがあって、目的や信条に従って行動している。根っからの悪人はいないような気がします。

──長縄さんはいかがですか?

長縄:シナリオの段階で、キムンカムイは「陽気なおじさんだなあ」という印象でしたが、立木さんが演じているのを聞いた時に、可愛いらしい、愛される感じが増していると思いました。

──キムンカムイの不器用さや可愛らしさは、現実の「お父さんっぽさ」がありますよね。

桑原:いそうですよね(笑)。

──悪意はないけど、ちょっと空気の読めないことを言ってしまったり。

長縄:そう! お酒を飲んで楽しくなっちゃって、余計なこと言っちゃったみたいな(笑)。

──そんなキムンカムイやアーザードが少し変わっていくお話でもありますね。

長縄:アーザードに関しては、彼も色々あって。いろんな表情をするキャラクターなんですけど、信長さんもその表現が流石なんですよね。彼の持つ圧力とか、覚悟が顔と声で全部表現されています。やっぱり、憎めないキャラクターです。最後まで観ていただくと、彼のことを考えてしまうと思います。

──おふたりが印象的だったシーンや、ぜひ注目してほしいところを教えて下さい。

桑原:キムンカムイやアーザードが登場して、いつもの『メイドラゴン』らしいほのぼのした雰囲気とは少し変わるんです。そこは見どころですよね。キムンカムイは、トールのお父さんとはまた違ったピリッと感があって、彼の登場シーンは新しい物語が展開していく予兆を感じました。

でも、キムンカムイって決して意地悪なお父さんではないんですよね。ただ、不器用なだけで。そういう演出の違いや画の雰囲気も含めて、やっぱり彼らの登場は映画ならではだと思います。

長縄:私は、カンナはもちろんですが、小林さんにも注目してほしいです。小林さんって大体会社にいるか、家にいるじゃないですか。たまにトールに大草原に連れて行ってもらうこともありますけど(笑)。

すぺしゃる予告でも少し描かれていましたが、今回は小林さんがドラゴンの世界に行くので、「小林さんとその背景見たことない!」ってなりました。ゆるっとした小林さんと、ドラゴンの世界のコントラストが新鮮ですし、そこで頑張る小林さんを見られることも映画らしさだと思います。

──確かにそうですね。小林さんの夏の装いも可愛くて素敵でした……! また、今作はアクションシーンも見どころのひとつですよね。

桑原:キムンカムイがやってくるシーンもそうですし、私自身も「こんなに戦うとは……」って(笑)。迫力のあるシーンが満載ですし、色んなキャラクターの活躍も見られるのが良いですよね!

力技で闇雲に戦うというよりは、大切なものができたトールだからこその戦い方とか。最初に映像をチェックした時から、かっこいいなと思いました。スピード感、テンポも良くて、何度も映像をチェックしながら、どういう風に戦おうかなって考えたり。演技のことを考えながらも、楽しんでいました。

長縄:カンナもいっぱい頑張っていましたが、映画を観て改めて「トール様ってめっちゃ強いんだ!」と思いました。改めて、頼りがいのあるトール様だなと。

カンナの心情を伝えるために

──立木さんや島﨑さんが新たに参加されたアフレコはいかがでしたか?

長縄:第1期、2期とやってきて、久しぶりに中村悠一さん(滝谷真役)、高田憂希ちゃん(エルマ役)、加藤英美里さん(才川リコ役)とか、いつものメンバーで集まることができて、皆さんが視界にいることが嬉しすぎました! 映画なので、長い時間をかけて皆で収録していましたが、お弁当を食べながら和気あいあいとして、「なんて楽しい現場なんだ!」って。

立木さんと信長さんからは、昔の声優さんの現場エピソードを聞かせていただいて、貴重な時間でした。『メイドラゴン』らしい温かい現場だったと思います。

桑原:私は、信長さん演じるアーザードとトールの掛け合いを収録したのが印象的でした。物語において大切なシーンなので、台本を読んでいる時から、どうやって演じるかはずっと考えていて。

信長さんと実際に掛け合いをした時に、用意していたものを変えたほうがいいなって思ったんです。演じる中で、大きくプランを変えようと思った経験があまりなかったので、印象に残っています。

──なるほど。音響監督と相談をしながら変えていったんですか?

桑原:そうですね。音響監督の鶴岡(陽太)さんと話し合いながら。アーザードにトールがとある言葉を伝えるんですけど、個人的には少し冷たいイメージだったんです。でも、信長さんが声でバックグラウンドをしっかり表現していて、アーザードの気持ちがセリフから伝わってきたんですね。

それを受けて、今のトールだったら、色んな経験を積んできた彼女だからこそ、伝えられることがあるんじゃないかなって。良いものになったと思っているので、一緒に収録できて嬉しかったです。

──トールもカンナも含めて、皆が変化していましたね。それぞれのキャラクターを演じる中で、これまでのシリーズとは違う意識はありましたか?

桑原:今回は、どのキャラクターも思い悩むシーンが多いんです。カンナもこれまでとは違って、感情をむき出しにしたり、たくさん考えています。トールも結構繊細なキャラクターで、それが特に出ていたんじゃないかなと。

監督からも「ただ悩むのではなくて、前向きに考える姿を表現したい」というお話があって。いつもののんびり楽しいトールとはギャップがあるのかなと思います。

長縄:今回は、カンナの心情をファンの皆さんに知ってもらいたいと強く思いました。映画制作が決まってからも、「カンナが思っていることがみんなに伝わりますように」と願っていました。カンナって、自分の気持ちをストレートに言わないじゃないですか。

──単語でおしゃべりしますね。

長縄:単語でポツリ、ポツリ……みたいな感じなんです。カンナの口元だけが映っていたり、後ろ姿だったり、表情が明かされない状態で喋るシーンも結構多いんです。どんな表情をしているのか、観る側が考えさせられるような描写になっていて。

だからこそ、カンナの心情がより大切になってきます。例えば、喋る順番が「カンナ・小林・小林・カンナ」だったとして、カンナのあとに小林さんが喋っていて、カンナの後ろ姿だけが映っている時でも、カンナは小林さんの言葉を聞いて何かを感じているはず。感じたものをポツンと漏らす子だから、その色んな言葉を聞いたり、場の雰囲気を読んだあとのポツンで、皆さんにカンナの心情を捉えてもらえるように頑張りました。

──言葉数が少ないので難しそうですね。

長縄:大体、『メイドラゴン』の台本って「トール・トール・小林・小林・イルル・イルル・カンナ」みたいなセリフの並びになっているんですよ。「1ページに2個しかない!」みたいな(笑)。

その中で、カンナは、「小林、〇〇」とか「トール様、〇〇」みたいに最低限の言葉で話しますが、ただボーッとしている訳ではなくて、会話をしている3人を常に観察していると思うんですよ。

思考自体は止まっていなくて、言葉も気持ちもたくさん沸いている。ただ口数が少ないだけというか。小林さんたちとご飯を食べていて、トールが「お肉安かったんですよ!」と言っているのも、カンナは「(安かったんだ)」ってちゃんと思っている。

すごく人を見ていると思います。周りの雰囲気や環境も観察していて、「不思議だな」「楽しそうだな」って思うから、小林さんに「あれ何?」って聞く。カンナの思考や心は常に動いていて、色々なものに関心がある中で、ピックアップした言葉が出ていると思うんです。

少しずつ変わっていく、小林さんち

──カンナの大人びた一面や成長も、今作でグッと押し出されていますね。桑原さんから見て、今回のカンナはいかがでしたか?

桑原:彼女は、寂しい思いをしてきた時期があって、それを表に出せずにいて。トールを追いかけて人間界に来て、小林さんたちと生活して行く中で、人間の優しさやわがままな部分を理解してきました。今回は、彼女の大人っぽい部分も、ずっと抱えていた寂しい部分も表現されていますよね。お父さんと向き合って、自分から気持ちを向けていくカンナの成長が嬉しくて、私自身も手助けしたいと思いました。

──カンナとトールの関係は素敵ですよね。ふたりとも小林さんが大好きですが、奪い合ったりすることもなく、尊重している感じがします。

桑原:家族ですよね。

長縄:「カンナばっかりズルいです!」ってたまに言うけどね(笑)。

桑原:(笑)。

──今回の小林さんとカンナの関係についてはいかがですか?

長縄:カンナ的には小林さんのこと大好きですし、カンナの半分は小林さんから教えてもらった人間の価値観ですよね。

桑原:今回はそこにキムンカムイが来たよね。あんな父親だけど、カンナにとっては大事なつながりで。

長縄:大事なものがひとつ増えた感覚というか。小林さんとトール様がいるカンナの世界に、お父さんが入ってきたような気がします。私も、カンナも、小林さんとトール様のことが凄く好き。もうふたりとも親代わりですし、どちらも目標であり、一緒にいたい人。

でも、お父さんという存在がもう一度現れて、寂しさとか昔の気持ちが一気に蘇る感覚もあって。やっぱり彼女の中で父との繋がりは強いんだなと。

これまでカンナを演じてきて、小林さんたちと楽しくやってきた私としては、寂しくなるシーンもありました。映画を経て、カンナと小林さんたちの関係性も変化すると思います。

──おふたりから見た小林さんの魅力についてもお聞きしたいです。

桑原:小林さんは、カンナやトールがうちに秘めている気持ちや言葉にできないモヤモヤに気づいてくれていると思います。何も言っていないのにすべてを見抜いているような気がするんです。

長縄:分かる。

桑原:認識阻害(姿を隠す魔法)をしているトールになんとなく気づく場面もありました。もっと構ってほしいって思うくらいに大好きなんですけど、小林さんは他のドラゴンたちのことも気にかけていて。トールは、そういうところも含めて大好きなんだと思います。やきもちを焼きつつも、そんな小林さんを嫌いにはなれない。非常に沼です(笑)。

長縄:ほんとに(笑)。抜け出せない沼だよね。

カンナは小林さんとトール様が一緒にいること自体を喜んでいる気がします。ふたりで「尻尾はいらないよ!」みたいなやり取りをしている空間が好きなんじゃないでしょうか。私自身、『メイドラゴン』のアフレコをしていると同じ感覚になります。おふたりが楽しそうに演じるのを聞きながら、「私も楽しい〜!」って。

──最後に、公開を楽しみにしているファンの方へメッセージをお願いします。

桑原:これまでの物語で活躍してきたドラゴンやキャラクターたちも物語に加わって、家族や友達との絆が描かれています。作品を観終わった時に、色々な人の顔が浮かぶんじゃないかなと。自分の家族や友達とか、「久しぶりにあの人に会いたいな」と思ってもらえるような作品になっていると思います。

多分一回だけじゃ足りないと思うんですよ。何度も観て、味わっていただきたいです。私たちも映画制作が決まった時から楽しみにしていて、キャスト一同が気合を入れて収録に臨みました。綺麗な映像も、私たちの声も、音楽も劇場で堪能していただけると嬉しいです。

長縄:今回は「父と娘」の物語です。思春期、もしくは思春期直前の女の子の複雑な気持ち、家族との噛み合わない感じや不器用さが描かれています。

お父さん側も、何をしてほしいのかを一生懸命考えるなかで、よく分からなくなってしまう。子から親、親から子に対しての気持ちが丁寧に表現されています。どちらに共感してもらっても良いし、自由に楽しんでほしいです。

この映画では「誰かを思いやる」という気持ちの矢印のようなものがキャラクターごとにそれぞれあると思っていて。キャラクターごとに心配の仕方、励まし方が全然違うんです。「冷たく見えても、実は不器用なだけ」って現実世界にもあることですよね。

過去に皆さんが体験した、知っている気持ちと重ねてみたり、思い出して温かい気持ちになったり、自分自身を愛おしく感じたり……。そういう自分や誰かの優しさ、気持ちを知るきっかけになったら嬉しいなと思います。

[インタビュー/タイラ]

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