【価値の見える化】当たり前の中に隠れている強み|関本大輔(株式会社アドハウスパブリック)#6
こんにちは。株式会社アドハウスパブリック代表の関本大輔と申します。
このコラムでは、「ブランディング」をテーマに、その本質や大切にしたい考え方について弊社の事例を交えながらお伝えしています。
今回お話しするのは、企業の強みの見つけ方と見える化について。
企業の強みや価値とは、どんなふうに見つけ出していくのか。そして、強みを見える化することにどんな意味があるのか。実際のブランディング事例をもとに、詳しくお伝えします。
ご興味がありましたら、ぜひ最後までお読みいただけますと幸いです。
隠れている強みの見つけ方
前回のコラムでは、「それぞれの会社が築き上げてきた歴史の中から、独自の強みや価値を見つけよう」という話をしました。
強みというのは、会社のあらゆるところに隠れています。前回お伝えしたような、歴史や立地などの変えようのない事実。それから、提供する商品やサービス。さらに言えば、広報力・営業力・組織力・管理体制にも、実は独自の強みが隠れています。
一つひとつは小さなものでも、これらが掛け合わさることでとても大きな強みになる。だから、会社を構成する全てのものにしっかりと目を向け、小さな強みも見逃さずに見つけていくことが大切です。
具体的にどんなプロセスで強みを見つけるのか。弊社では、SWOT分析(スウォット分析)を通してそれぞれの会社の強みを見つけていきます。
SWOT分析とは、「Strengths(強み)」「Weaknesses(弱み)」「Opportunities(機会)」「Threats(脅威)」の4つの側面から組織やプロジェクトの現状を把握し、将来の戦略を立てるためのフレームワーク。
商品・サービスや広報面の強み・弱みなど、事業のさまざまなシーンに対する一人ひとりの意見を集約し、「これがうちの強みだ」というポイントを見つけ出していきます。
またSWOT分析とあわせて、VRIO分析(ブリオ分析)を行うこともあります。VRIO分析では、企業が持つ強みや経営資源を「Value(価値)」「Rarity(希少性)」「Imitability(模倣可能性)」「Organization(組織)」に分類して考えていきます。
「“創業何十年” は、お金では買えない・誰にも真似できない価値だね」、「これはよくある強みかもしれないけど、お客さまのためになる大切な価値だね」など、一つひとつの強みの特徴を分析していきます。
このように「どんな強みがあるのか」、そして「どんな特徴の強みなのか」について、社内で認識を擦り合わせることがとても大切です。これが、会社として今持っている価値をどのように打ち出していくのかを考える土台になるのです。
当たり前の中にこそ大切な強みがある
隠れていた強みを見つけ出し、会社経営の土台となるビジョンやバリューとして見える化した事例をご紹介します。
新シリーズ第2回目のコラムでもご紹介した、太田建設株式会社さま。山形県米沢市で60年の歴史を持つ建設会社で、公共事業をはじめ、土木・建築、そして住宅事業まで幅広い実績を持つ企業です。
太田建設さまは、とにかく真面目で誠実な仕事ぶりでお客さまから信頼されてきました。例えば、住宅事業部では、家を建てた後のメンテナンスやフォローがとても丁寧で徹底されていて、それが長年の実績となり表彰もたくさん受けています。
とても大きな力であり素晴らしい強みなのですが、社員の方々にとっては強みとしては認識されていませんでした。「真面目さ」や「誠実さ」は、“当たり前のこと”として捉えられていたのです。
そこで、SWOT分析やワークショップを通してこの強みを社内で改めて認識。実直に業務に取り組む姿勢をもとに、会社のミッション「恥じない未来を造る。」や、住宅事業部のビジョン「1日目も、10年後も、変わらず愛せる家を。」という言葉を掲げ、強みを見える化しました。
このように、会社にとって当たり前になっているものの中にも、実は大切な強みが隠れています。それらをどのように見つけ出し、見える化して、魅力のひとつとして際立たせていくのかが重要なポイントです。
そして、このプロセスで特に大切なのは、社員全員で強みを発見すること。社員一人ひとりが会社の価値を見つめ直し、想いを共有することで組織全体に一体感と自信が生まれます。また、全員で取り組むことで新たなアイデアや視点が加わり、企業としての価値がより多角的で豊かなものになるのです。
※太田建設さまが全社員で強み発見に取り組んだ様子は、こちらの記事でも詳しくお伝えしています。
また、ホームページやパンフレットといった顧客が目にするツール類に強みを反映し、一貫性のあるデザインで伝えることも大切です。
統一されたデザインやメッセージにより、企業の魅力や価値観が一目で伝わりやすくなり、顧客との信頼関係を築くきっかけにもなります。さらに、それらのツールを社内でも共有することで、社員全員が自社の強みを意識し、日々の活動に反映されていきます。
太田建設さまでも、SWOT分析やワークショップを通じて見つけ出した強みや価値を、ホームページやパンフレットなどに統一したデザインで表現。社内外に一貫したメッセージを届けることで、会社としての信頼アップや社内意識の統一に役立っています。
▲太田建設株式会社さまツール類(一部)
▲住宅ブランド「To-Be Home」ツール類(一部)
みんなで強みを見つけ、共通の認識を持ち、見える化すること。これが、会社全体が一つの方向に向かって進んでいくための確かな一歩となるはずです。
今回はここまでとなります。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
関本 大輔(せきもと だいすけ)
株式会社アドハウスパブリック代表取締役。新潟デザイン専門学校を卒業後、東京の出版社でデザイナーとして勤務。その後、父が設立した会社を継ぐため帰郷し、2013年に代表取締役として就任。
お客さまの本質的な課題解決につながるインナーブランディングと卓越したデザインで、さまざまな企業や事業のブランディングに携わる。過去1,000件以上の実績で、地域・業界を問わず評価されている。
米国ギャラップ社認定ストレングスコーチのほか、越後雪室屋ブランドディレクター・理事、新潟県6次産業化プランナー、新潟市異業種交流研究会協同組合理事長を務める。
【連載コラム ブランディングコラム】
#1【ブランディングの原点】想いや強みの“見える化”
#2【企業ブランディング】地域No.1ブランドを目指して”
#3【ブランディングの根元】“目線”をイメージする力”
#4【BIの重要性】すべての成果は行動から生まれる”
#5【価値の再定義】歴史から紐解くブランドの真価
【旧連載コラム】
#12 新潟の街をウェルビーイングに
#11 “人を育てるチームづくり”が未来を変える
#10 本物が揃う店『久保田NIIGATA』のブランディング
#9 越後雪室屋のブランドづくり
#8 成果を手に入れるために意識したいこと
#7 社員を輝かせる目標設定のポイント
#6 夢や目標を掲げて生きることの意味
#5 自分を知ることが原点。『MBTI』による自己認知方法(後編)
#5 自分を知ることが原点。『MBTI』による自己認知方法(前編)
#4 その人らしさを認め合うことからはじまる“心理的安全性”
#3 ウェルビーイングに働くための“良いチーム”づくり 後編
#2 ウェルビーイングに働くための“良いチーム”づくり_前編
#1 人と企業が自分らしく輝く “ウェルビーイングな社会”へ