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発達が気になる子ども、小・中学校「支援級と通常級どっちにすべき?」 「就学相談」のよくあるギモンを専門家が解説

コクリコ

【専門家が解説】「うちの子、学校で大丈夫かな?」発達が気になるお子さんのための「就学相談」ガイド。「支援級・通常級」の判断に悩んだ時の不安・ギモンに、専門家がくわしく答えます

【画像】就学相談を受けるには? おおよその流れ

「うちの子、小学校で大丈夫かな……?」

入学を控えた時期、多くの保護者がそんな不安を抱えます。特に、発達や行動面に気がかりがあると、悩みが深まってしまうのではないでしょうか。

そんなときに知っておきたいのが、「就学相談」という仕組み。

通常の学級(以下、通常級)、特別支援学級(以下、支援級)、特別支援学校などの選択肢から、子どもがもっとも力を発揮しやすい学び方や必要な支援を、教育関係者や専門家と一緒に考えるための場です。

公認心理師・認知行動療法スーパーバイザーとして多くの保護者と子どもたちの就学をサポートしてきた小関俊祐先生(桜美林大学リベラルアーツ学群准教授)にお話を伺いました。

“支援級に決まる場”じゃない!?就学相談の3大誤解

「就学相談」とは

「就学相談おおよそのながれ」小関俊祐先生が顧問を務める、スタジオそら「就学相談ってなに? ①おおまかな内容と流れについて」を元に作成

「就学相談」とは、小学校や中学校などの就学先について相談する場。

小学校入学を控えた、6歳児(年長さん)の保護者が参加するケースが多いですが、実際にはどの年齢の子どもや保護者も対象になります。

発達障害の診断があるかどうかは関係ありません。子どもの特性に応じて、適切な教育を受けられるようにするための場で、区や市など自治体ごとに行われています。

しかし、まだまだ一般的ではない「就学相談」という言葉。実は、多くの誤解があるようです。

誤解①就学相談に行くと、特別支援学級への入級が決まる?

(写真:アフロ)

就学相談では、子どもが学ぶ場所を一方的に決められてしまう──それは大きな誤解。

小関先生は、「就学相談は、保護者の希望と子どもに合った環境をすり合わせる機会です」と教えてくれました。

保護者、専門家、そして子ども本人。皆の現状やニーズをふまえて「納得できる選択」をするのが就学相談なのです。

それだけではありません。就学相談は、保護者の希望を学校側に伝える貴重な機会でもあります。

「子どもに対してどんな支援をしてほしいのか、どんな声かけがあれば子どもが最大限に力を発揮できるのか。『こんな関わり方をしてほしい』を入学前に伝える絶好のチャンスなのです」(小関先生)

誤解②支援級より通常級のほうが良い?

(写真:アフロ)

「支援級だといじめられるのでは」という心配やマイノリティになることへの抵抗を感じる方もいるかもしれません。保護者の価値観に影響を受けて、子どもも「支援級はイヤ」と言う場合もあるようです。

しかし、入学後に支援級で細やかな指導を受けて成長を実感し、保護者の考えが変わるケースも多いのだそうです。子どもも成長につれて「自分は自分、他人は他人」と捉え、支援級で学ぶことに抵抗がなくなることもあるといいます。

「『通常級』ということだけにこだわるのではなく、どのような場が、子どもの成長を促すために最適な場所なのか、さまざまな可能性を考えるという視点が大切です」(小関先生)

誤解③小学校入学の選択肢は「通常級か、支援級か」だけ?

(写真:アフロ)

通常級でも、クラスに担任以外の先生が入って個別にサポートする「入り込み支援」や、別室で個別指導を受ける「取り出し支援」など、子どもに合った支援を受けられる可能性があります。

通常級での学習におおむね参加できているけれど、部分的に特別な指導が必要。そんな子どもの場合は、特性や障害に応じた特別の指導を受ける「通級指導教室」の利用が、選択肢となる場合もあるでしょう。

ただし、いずれの場合も制度や利用方法は地域によって異なるため、確認が必要です。

(写真:アフロ)

支援級に在籍する場合も、障害のある子どもと障害のない子どもが同じ場で共に学ぶ「交流及び共同学習」の時間があり、通常級の友達と同じ授業や行事に参加する機会があります。

必ずしも支援級だけで学びが完結するわけではないのです。

「障害の程度やニーズに応じて、通常学級、通級指導教室の活用、特別支援学級、特別支援学校等のさまざまな選択肢のメリットとデメリットを理解したうえで、よりよい選択ができるといいでしょう」(小関先生)。

学びの方法は多様。子どもに合わせて考えていけばよいのですね。

「就学相談、行ってよかった」実際の事例から

小関先生は、「『就学相談を受けて後悔している』という声はあまり聞いたことがありません」と言います。

「行って良かった」と思えるのはなぜなのでしょうか。実際の事例を見てみましょう。

ケース①最初は子どもの苦手さに直面して落ち込んだけれど……

(写真:アフロ)

あるお母さんは、就学相談で自身が気づいていなかった我が子の苦手さに直面し、落ち込んでしまいました。

しかし担当者と話し合いを重ねる中で、「よりよい学びの場を考える」という視点に切り替わり、最終的に納得のいく選択ができたといいます。

「就学相談に複数回訪れる方は、実は珍しくありません。お子さんの様子を捉えたうえで、納得がいくまで話し合い、考えてほしいですね」(小関先生)

ケース②祖父母との意見のズレ……どうやって説得?

(写真:アフロ)

「孫を支援級に行かせたくない」。頑なに主張する同居の祖父母を、就学相談を経て説得したケースもあります。

就学相談に参加していたのはお母さん。帰宅後、お父さんに話し合いの内容を伝えました。

するとお父さんが「通常級でついていけなくなるより、支援級で適切な教育を受けて、できることを増やしたほうがいい」と、祖父母を説得してくれたのだといいます。

家族全体が納得に向かい、万全の状態で小学校入学を迎えることができました。

ケース③どうしても通常級に行かせたい……保護者の決断は

(写真:アフロ)

子どもの実態から特別支援学校や支援級を勧められても、保護者が通常級での学びを強く希望する場合もあります。

「あるケースでは、就学相談で通常級、支援級それぞれのメリット・デメリットを伝え、一緒に考えた結果、最終的に保護者が選んだのは通常級でした」と小関先生。

就学相談では、子どもの一番の理解者である保護者の意向も大切にしているのです。

ケース④子どもがベストな支援を受けられるのは?

通常級で入学したものの、入学後に子どもの困り感が大きくなり、支援級へ転籍するケースもあります。

一方、支援級から通常級へ転籍する場合もあります。

知的障害がなく、課題がコミュニケーションや行動面に限られている子どもの場合、支援級で細やかな指導を受けることで成長し、困り感の軽減につながることもあります。

結果として、中学校進学などの節目で通常級に移る場合もあるのです。

(写真:アフロ)

このように、子どもの成長スピードや環境により、転籍もひとつの選択肢になります。

ただし、慎重な検討と相談が不可欠なのは言うまでもありません。

「支援級では、『個別の支援計画』に基づいてその子に合った教育が行われますが、通常級では『学習指導要領(※)』に合わせた教育がベース。それに、支援級と通常級では環境が異なるため、学習の集中度合いなどが変わってくる場合もあります」と小関先生。

(※学習指導要領:文部科学省が定めている教育課程(カリキュラム)の基準)

「また、学校にきちんと希望を伝えることで、より良い支援につながるケースもあります」(小関先生)

ある保護者は、就学相談を経て支援級を選択した際、入学前に学校とやり取りをする機会があり、控えめにではありますが、支援してほしいことを伝えていました。

そして迎えた入学式当日。希望していた支援内容がしっかりと反映され、座席の位置やその周辺の環境が、想像以上にきめ細かく配慮されていたことに、「これほどまで!」と感激したのだそうです。

就学相談に行くべき? 3つのチェックポイント

子どもの気になる行動の要因はさまざま。小関先生の編著『園生活での子どものストレス対処法 子どもと一緒に取り組む』では、子どものストレスサインや困りごとの解決方法が事例と共に紹介されています。

「家ではスムーズに過ごせているのに、集団生活になるとルールが守れない」など、家庭と園での姿が異なる場合もあります。

「判断が難しいときは、保育園や幼稚園の先生に子どもの様子を聞いてみましょう」と小関先生。運動会やお遊戯会、参観日など集団活動への参加の仕方もヒントになるといいます。

「子どもの様子が気になる。就学相談を受けてみようかな」そう思ったなら、以下の項目をチェックしてみましょう。

【1】基本的な生活スキル

着替え、食事、トイレを改めてチェックしてみましょう。

大人の手を借りずに一人でできるでしょうか。周囲の友達と大きくペースが違っていませんか。

【2】言語面での発達

「食器をキッチンに持っていって」「脱いだ洋服をたたんで」など、簡単な指示を聞いて行動にうつせているでしょうか。

また、日常的な会話を理解したり、自分の意思を言葉で伝えたりできていますか。困ったとき、大人へ「手伝って」と言えることも大事です。

【3】行動面での発達

普段の生活の様子を振り返ってみましょう。

「朝の支度や寝る前の準備など、ルーティンとなっているはずの行動の手順が覚えられない」「10分以上座っていられない」などの、気になる点はないでしょうか。

また、「ちょっとしたことでカッとなり、衝動的に手が出てしまう」「いつもと違う状況や環境に置かれたり、急なスケジュールの変更等があったりすると落ち着かなくなる」などがある場合、就学相談で相談してみると良いでしょう。

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こうした視点をもとに、「就学相談」では具体的に何が話し合われるのでしょうか?

「就学相談」について、小関俊祐先生(桜美林大学リベラルアーツ学群准教授)にお話を伺う連載は前後編。

次回の後編では、就学相談に臨む段取りを詳しく説明します。

●小関俊祐(こせき・しゅんすけ)
公認心理師/臨床心理士/専門行動療法士/指導健康心理士
認知行動療法スーパーバイザー、日本ストレスマネジメント学会認定ストレスマネジメント®実践士。
日本認知・行動療法学会理事および企画委員長、一般社団法人公認心理師の会理事および教育・特別支援部会長、日本ストレスマネジメント学会常任理事および研究委員長、アース・キッズ株式会社/スタジオそら/発達障害療育研究所の顧問等を務める。
近著に「園生活での子どものストレス対処法 子どもと一緒に取り組む」(中央法規)、「事例で学ぶ教育・特別支援のエビデンスベイスト・プラクティス」(金剛出版)など。

(取材・文/中村藍)

【参考】
文部科学省「通級による指導の概要について」
文部科学省「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告) 概要」
スタジオそら

発達や特性は人によってそれぞれ違い、1人として同じ子どもはいません。多感な時期の子どもに寄り添う、児童文学作品を紹介します。

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