「若い頃、抱いていた苦悩を描きたかった」注目の新鋭監督ジェーン・シェーンブルンが本作の裏側を語る『テレビの中に入りたい』特別映像
「第74回ベルリン国際映画祭」パノラマ部門正式出品のA24製作映画『テレビの中に入りたい』が、9月26日(金)より公開される。このたび、脚本・監督を務めた注目の新鋭ジェーン・シェーンブルンが、「テレビの裏側」と題して本作を語る貴重なインタビューと、本編シーンが融合したスペシャル映像が解禁となった。
切なくも幻想的なメランコリック・スリラー
「第74回ベルリン国際映画祭」パノラマ部門正式出品をはじめ数々の映画祭で上映されると「唯一無二の傑作」「変幻自在の不穏さ」「型破りな映画」「この映画を表すなら“リンチ的”という言葉を使いたい」と絶賛され、全米公開では熱狂する若者たちが続出。公開から1周年記念で新たなグッズが発売されるなど、続々と“中毒者”を生み出し続けているA24製作の本作は、90年代のアメリカ郊外を舞台に自分のアイデンティティにもがく若者たちの“自分探し”メランコリック・スリラー。
郊外での日々をただやり過ごしているティーンエージャーのオーウェンにとって、謎めいた深夜のテレビ番組「ピンク・オペーク」は生きづらい現実世界を忘れさせてくれる唯一の居場所だった。同じくこの番組に夢中になっていたマディとともに、二人は次第に番組の登場人物と自分たちを重ねるようになっていく—。
A24と俳優エマ・ストーンが設立した映画制作会社「フルーツ・ツリー」が共同製作を務める多様な魅力と美点を兼ね備えた本作は、2024年の「サンダンス映画祭」ミッドナイト部門でプレミア上映されて以降、「第74回ベルリン国際映画祭」パノラマ部門正式出品、「第40回インディペンデント・スピリット賞」では作品賞を含む主要5部門にノミネートされるなど批評家たちを虜にし、全米では2024年5月3日、4館での限定公開から始まると瞬く間に評判を呼び、5月17日には469館に拡大。エマ・ストーンが惚れ込んだ注目の新進気鋭ジェーン・シェーンブルン監督による特異な吸引力に満ちた本作は、“中度者続出”で世界中に熱狂的なファンを生み出している。
「あんたは女子が好き?」というマディの問いかけに、「好きなのはテレビ番組」と主人公のオーウェンが答え笑顔を見せる2人の印象的な劇中での会話シーンからスタートする「テレビの裏側(BEHIND THE GLOW)」と題した本作の貴重なスペシャル映像。
注目の新鋭ジェーン・シェーンブルン監督が脚本も手掛けた完全オリジナル作品となる本作だが、映像ではシェーンブルン監督自らが、「本作はオーウェンとマディの物語で、2人がハマるテレビ番組が『ピンク・オペーク』だ」とストーリーを語り始め、マディが『ピンク・オペーク』について、「怖いし、子供向きじゃない」と少年時代のオーウェンに語りかける本編シーンが映し出される。
続いてシェーンブルン監督が「でも打ち切りになり、その直後にマディが行方をくらましてしまう」と説明すると、「この町を出る。知ってた?」とマディが劇中で語る本編シーンが。大切な相棒だったマディが何も言わずに行方をくらませ、「町に残されたオーウェンは、番組が持っていた意味を問い直すことになる」とシェーンブルン監督がストーリーについて語ると、単なる「テレビ番組だ」と訴えるオーウェンに、「本当にそれだけ?」と真剣な表情で問いただす劇中のマディの姿が映し出され、観る者をハッとさせる。
さらにダークかつポップな世界観でオーウェンとマディを魅了し、本作の重要なキーとなる謎めいた深夜のテレビ番組『ピンク・オペーク』を生み出すにあたって、シェーンブルン監督は「自分が好きだった番組を参考にした」と自ら語る姿も「“Are You Afraid Are You Afraid of the Dark?”や“グースバンプス”、“バフィー〜恋する十字架〜”。当時の衝撃が今でも残っているような番組」だと語り、インタビュー映像の合間には、本作の撮影現場で監督がキャストに指示を出しているような貴重なメイキング映像や、短い本編シーンが散りばめられている。
続けてシェーンブルン監督は、本作について「私が若い頃、抱いていた苦悩を描きたかった。自分のことが理解できず、フィクションやTV番組にその答えを求めていた」と、自身が葛藤していた想いが本作製作のインスピレーションへとつながっていることも映像の中で明かしている。
またスペシャル映像では、「まだ仮免も持っていない」という『ピンク・オペーク』の中での登場人物の印象的なエモいセリフも流れ、さらにシェーンブルン監督は「この作品の根底に描かれているのは、クイアの若者による自分探しの旅。ミステリーの解明も楽しんでもらえるはず」と、本作を観る人たちへ向けてメッセージをおくっている。
新たに解禁となった場面写真では、アメリカ郊外で閉塞的な日常を過ごすオーウェンが、どこかへ行きたいのにどこへも行けない葛藤を抱えながら街の小さな遊園地で綿菓子を持ち退屈そうに歩く姿や、『ピンク・オペーク』を見ようと自宅のリビングに座るマディと学校の友達を捉えたカット、さらに『ピンク・オペーク』で一心同体のガールズヒーロー、イザベルとタラの前に立ち塞がる邪悪な月の男“ミスター・憂鬱(メランコリー)”の怪しげながらキモ可愛い姿が捉えられている。
孤独なティーンエージャーがクラスメイトから深夜の謎めいたテレビ番組のことを聞き、番組の中の世界を現実よりリアルに感じ始める本作は、1990年代半ば、主人公が成長していく心揺さぶる不可思議な物語で、数十年にわたって不吉な予感が漂い、やがて限界へと達する——。“本当の自分”を知りたい気持ちと、それを知ることの怖さとの狭間で身動きができないまま、時間だけが過ぎていく。果たしてマディはどこに行ったのか。そして心の中に刻まれた『ピンク・オペーク』は、オーウェンに何を語りかけるのか——。「本当の僕は、どこにいる?」 ピンク色に光る闇の中に、あなたも引き込まれるかもしれない——。
『テレビの中に入りたい』は9月26日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開