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【専門家解説】「お母さん、もう疲れた」は伝えていい?好きなことを「喋りすぎる」自閉症息子に、家庭でできる工夫

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【専門家解説】「お母さん、もう疲れた」は伝えていい?好きなことを「喋りすぎる」自閉症息子に、家庭でできる工夫

監修:初川久美子

臨床心理士・公認心理師/東京都公立学校スクールカウンセラー/発達研修ユニットみつばち

家でも学校でも止まらない。幼少期からの「喋りすぎてしまう」悩み

わが家の息子のトールは、小学3年生から特別支援学級に在籍しています。本人の成長や周囲の理解もあり、中学生になった現在は多くの授業を通常学級で受けています。

トール本人も学校に楽しく通っており、概ね問題なく過ごせているようなのですが、先日担任の先生から、ある課題を指摘されました。それは、「喋りすぎてしまう」ということです。

トールは小学生の頃から、担任の先生や放課後等デイサービスの職員の方から、喋りすぎてしまって止まらないことがあるとよく言われていました。自分の興味のあることに対する熱量がすごくて、周りの人に話したくて仕方がないようです。

それは家でも同じです。ハマっているゲームのキャラクターやアニメの話など、何度も同じ話を繰り返し話してきます。トールは元々、声が大きめでよく通ることもあり、大好きなものの話を全力でし続ける彼のパワーに、聞き手側として疲れてしまうこともしばしばありました。

「ママ、そろそろ疲れた」——あえて家庭を「練習の場」に

好きなものがあることは喜ばしいことですし、「思う存分話をさせてあげたい」という気持ちの一方で、お友だちとの関わりの中で孤立してしまわないかという不安もありました。

そこでわたしは、トールが話し続けて止まらないときは「ママそろそろ疲れたからおしまいね」と言うなど、「今はもう聞きたくない」ということを伝えるようにしています。

トールには、周囲の視線や相手の反応を察するのが苦手という特性があります 。まわりくどい言い方では伝わらないため、あえてハッキリとした言葉を使うのです。周りの人が聞いたらびっくりするような言い方かもしれませんが、家庭を「社会のルールを学ぶための練習の場」と考えて取り組んできました。

学校や放デイで学ぶ「相手に合わせたコミュニケーション」

こうした練習は、家庭の外でも行われていました。小学校や放課後等デイサービスでも、トールのこのような特性を理解してもらっていて、喋りすぎてしまうときは制止してもらったり、話に興味のある職員さんとは思う存分話したりなど、相手によって話題を変えることを学んでいきました。

先生や職員の方々が、トールの情熱を受け止めつつも、適切にブレーキをかけてくださったおかげで、少しずつですが、話す相手や状況を考えられるようになってきたと思っています。ところが、中学生になって、まだまだ大きな課題があると気づかされた出来事がありました。

歴史への情熱が止まらない!中学校の授業で見えた新たな課題

中学生になった今、トールが熱中しているのは「歴史」です。歴史に関する番組を見たり本を読んだり、検定試験を受けたりして学びを深めています。

トールには、「歴史の面白さをもっとクラスの子にも知ってもらいたい」という純粋な思いがあり、家でもそのように言っています。そんな彼に、わたしはいつもこう伝えています。

「歴史に興味があって、知りたいっていう子がいたら話してね。興味がない子に無理に聞かせるのはやめようね」と。

しかし、中学校で指摘されている「喋りすぎる問題」は、なんと「社会の授業中」に起きていました。

「人前でも動じず、大きな声で発表できる」特性は、トールの強みでもありますが、つい熱中しすぎるあまり、授業の進行を止めるほどの勢いで「プレゼン」してしまっているようです。現在は、先生がトールの知識を肯定しつつ、適切に話に入ってブレーキをかけてくださっています。

「人前で動じない」強みを、本当の「伝える力」へ

少しずつ成長していく姿は見られますが、好きなもののことになると気持ちが止められないところは小さい頃から変わっていません。

好きなものに熱中できるのは素晴らしい長所です。その情熱を大切にしながら、どうすれば周りへの配慮と両立していけるか。授業の実験などで率先してリーダー役を引き受けることもあるトールだからこそ 、その強みを本当の意味での「伝える力」に変えていけるよう、これからも根気強くサポートしていきたいと思っています。

執筆/メイ

(監修:初川先生より)
トールくんの「喋りすぎてしまう」悩みについてのエピソードをありがとうございます。好きな話を話したいだけしないと気が済まないタイプのお子さんは結構いらっしゃるので、共感的に読まれた読者の方も多いと思います。

家庭や放デイで「喋りすぎてしまう」課題について対策されているのがよかったと思います。まず、家庭でされているように、聞き手が聞いていて疲れてきた、あるいは、聞いている時間がない場合にははっきり伝えているとのこと。何よりです。今回、調整したいのはトールくんの話の量の調整です。相手の顔色を読むとか、お察しするといったことをトールくんに望むのはもっと先のことになるでしょう。まずは、聞き手が「そろそろ疲れたからおしまいね」「今は聞きたくない」と言ったら、速やかにおしまいにすること。それを練習するのは大事なことですね。ほかにも、話す前に「ゲームの話聞いてもらいたいんだけど、今いい?」とトールくんが相手に許可を取れるといいと思います。それが入れば、「今忙しいから10分待ってね」や「5分間だけならいいよ(と砂時計などをセット)」といったアレンジも可能です。トールくんに限らず、好きな話・話したい話は全部話さないとすっきりしないタイプの方々からすると、話そうと思ったことを0から100まで話さないと、自分からは終われないことがあります。ただ、現実的には、話したがりの子の話を無尽蔵に聞いてあげられることはあまり多くないので、狙いとしては、「許された時間でほどほどにしゃべる」を目指していきたいところではあります。本人からしたら、短い時間で物足りないかもしれませんが、その時間の使い方を工夫することができるかもしれませんし(何を一番伝えたいのか考えるのではと思います)、逆に、聞き手に時間のあるときは「今日は目いっぱいお話きいてあげるよ!」というご褒美タイムも設けやすくなります。ちなみに、本当は聞きたくないのに、かわいそうだから長々と聞いてあげる、というのはその子のためにはあまりならないだろうと思います。話すことが楽しいお子さんは、話していることに注意が向いていて、相手がどう聞いているかまで注意が及んでいないことがあります。結果として聞き手が疲れたり、その子の話を聞くのが嫌になってしまったりするくらいなら、短くても聞ける時間を設定して聞いてあげるほうがよほど親切だと感じます(ちなみに、その時間内は全身全霊で聞いてあげたいところですね)。

さて、トールくんは大好きな歴史の授業中に話をしたくなってしまうとのこと。先生がうまいこと聞いてくださったり、ブレーキをかけてくださったりしているようでよかったですが、先生の授業を聞きたいと思っている周囲の生徒らもいるだろうことを考えると、授業中のことのみならず、人間関係にも影響が出る可能性も感じます。トールくんからすると、授業中に扱われたトピックに関して即座に話をしたくなるのだと思いますが、それをどうにか後で話す形に持っていけたらよさそうですね。イメージ的には、その日、帰ってからポッドキャスト番組のように、その日の授業について知っていることを語って録音するような。メイさんが最後に書かれていたように、トールくんの伝えたい熱い気持ち・情熱を大切にしながら、聞き手への配慮ができるか。それは単に、聞き手の気持ちの配慮や時間を奪うことへの配慮のみならず、きっと「聞き手にとって、分かりやすく面白い話を、端的に話せるか」という質的な面もあるだろうと感じます。「今は話していい時間か考える」「話の内容によって、聞いてくれそうな人を選ぶ」ももちろん大事ですが、「何をどう話すか」も考えることで、結果的にぎゅっと凝縮された話ができるようになるのかもしれないなと感じました。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。

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