料理レシピ本大賞をW受賞した酒徒さんが教える「家中華の逸品」【中国語!ナビ】
2025年度のNHKテキスト『中国語!ナビ』では、中国の調理法を表す漢字1文字をテーマに、四半世紀にわたり中国各地を食べ歩いた酒徒さんがレシピとエッセイをつづる新連載「酒徒の1字でスタート 家中華」が始まりました。
初回となる4月号で紹介している漢字1文字のテーマは、「炒める」。ニラとミントの不思議な組み合わせの逸品をご紹介します。
テーマは「炒める」
韭菜炒薄荷(ニラとミントの炒めもの)
jiǔcàichǎobòhe
◆作り方
用料(材料)
ニラ……2束(約200g)
ミント……適量(20枚~お好みで)
塩……適量(ひとつまみ~お好みで)
炒め油(あれば菜種油)……大さじ3
做法(手順)
1下準備をする
ニラは5㎝幅に切る。
ミントは茎を除いて葉だけにする。
2炒める
中華鍋を強火で熱して炒め油を馴染ませたら、ニラを入れて炒める。
ニラがしんなりしてきたら、ミントと塩を入れて炒め合わせる。
温馨提示(アドバイス)
たっぷり作る
旨すぎるので。うっかりニラ1束で作ったら、家族から「これじゃ1人分だね」と言われたことも(笑)。
ミントの茎は、しっかり除く
歯触りが悪くなる。シンプルな炒めものは、こういうひと手間が大事。
ミントは入れすぎない
入れすぎると苦くなるので、香り付け程度の量にしよう。
爽やかにミントが香る、雲南の味
初めての中国旅行で本場の中華料理の美味しさと多彩さの虜(とりこ)になって以来、もっと未知の料理を食べてみたいという衝動に突き動かされて、四半世紀以上も中国各地を食べ歩いてきた。この連載では毎回、調理法を表す漢字1文字をテーマにし、これまで僕が中国各地で出合った料理の中から、その調理法を使って家庭でも簡単に再現できる料理をご紹介していく。
第1回のテーマは、“炒”。中国語でも、意味はそのまま「炒める」だ。中華料理と聞けば多くの人が強火で中華鍋をあおる様子を思い浮かべる通り、中華料理において最も一般的な調理法で、どのレストランの品書きを開いても、大抵は“炒”の字が真っ先に目に飛び込んでくる。それどころか、日本語の「ご飯を作る」と同じように、“炒菜”という言葉が「食事を作る」ことそれ自体を意味することもあるほどだ。
それだけに“炒”で作る料理は無数にあるが、今回はかつて雲南省で出合った韭菜炒薄荷(ニラとミントの炒めもの)を採り上げたい。初めて食べた時は、ニラとミントを一緒に炒めるという発想に衝撃を受けた。特にミントなんて、アイスにのせるかお茶にするくらいのイメージしかなかったので、炒めものに入れること自体に驚いた。旅をする楽しみは、このように自分の常識を覆してくれる料理に出合うことだ。
しかも、これが実に旨かったのだ。ニラのどっしりした甘さに、ミントの清々しさがピタリ。どちらも香りが強いのに、何故かぶつかり合わない。ニラが主役で、ミントは脇役。そのバランスが絶妙なのだ。縁の下の力持ちは風味の強い菜種油で、全体をまとめてコクを加える役目を果たしていた。
ニラの炒め時間はせいぜい数十秒で、塩とミントを入れたら5秒で完成。強火で短時間加熱することで食材を瑞々(みずみず)しく仕上げる“炒”という調理法の特性が、存分に活かされた料理だ。我が家の定番になって、もう15年以上。この不思議な組み合わせの妙を是非お試し頂きたい。
「酒徒の1字でスタート 家中華」では、5月号以降も“灼”「白灼虾」(茹で海老)、“拌”:炝拌黄豆芽(豆もやしの辛味和え)*など、毎月おいしくて簡単な家中華をご紹介しています。ぜひテキストをチェックしてみてください。
*「拌」は正しくは右の旁が八眉ではなく「半」と同様に上部が開きます。
酒徒(しゅと)
中華料理愛好家。学生時代に中国の食文化に魅入られて、北京・広州・上海に10年間在住し、今年から再び上海在住に。本場で知った身近な中華料理をまとめた初レシピ本『手軽 あっさり 毎日食べたい あたらしい家中華』が2024年料理レシピ本大賞をW 受賞。また、中国食紀行『中華満腹大航海』では、日本では未だ知られざる魅惑の中華料理を熱く紹介している。
テキストでは、新連載「中国故事 物語を読んでみよう」や連載「めざせ“中検”合格 即効トレーニング!」なども掲載し、中国語学習をサポートしていきます。生徒役・柏木由紀さんと一緒に、あなたも中国語を学んでみませんか。
■『中国語!ナビ 2025年4月号』「酒徒の1字でスタート 家中華」より
■文・写真 酒徒