ジャーナリングのやり方 習慣化して気付いた心と頭のモヤモヤを言葉にして整理するコツ
自分の気持ちを言葉にするのが苦手で、仕事やプライベートでモヤモヤを抱え込んではいませんか?
悩みを言語化したいと思っても、そもそも「自分が何に悩んでいるのか、何を感じているのかが分からない」という人も少なくないのではないでしょうか。
エッセイストの詩旅紡さんも主に人間関係の悩みからモヤモヤを溜め込みがちだったというお一人。
しかし「思考を書き出す習慣(ジャーナリング)」を始めてから、少しずつ自分の気持ちを整理し、言語化できるようになったと言います。
モヤモヤを抱えやすい私の「思考を書き出す習慣」
💡POINT
•思っていることをただ紙に書き出すだけで心が軽くなる
•特別な道具は必要ない
私は昔から、頭の中でぐるぐると思考をめぐらせてしまうタイプでした。
自分の気持ちをうまく言葉にできず、正体の分からないモヤモヤが胸の奥に溜まっていく。そんなモヤモヤは放っておくと、次第に「閉塞感」や「孤独感」に変わっていきます。
どうにかしたいと思っていても、「誰かに話すほどでもないし......」とただ自分の中でぐるぐると渦巻かせている毎日でした。
そんなある日、ふと思い立ってノートに気持ちを書き出してみました。
「なんでこんなに疲れてるんだろう」「本当は何に悩んでるんだろう」──ただ思ったことを、誰にも見せない前提で、ひとり静かに書いてみたのです。
すると、不思議なことに心が少し軽くなりました。
「書くって、こんなにも心を整理してくれるんだ」と、そのとき初めて気づいたのです。
それから、モヤモヤを感じたときにノートに書き留めるようになったのですが、後になって、それが「ジャーナリング」と呼ばれる習慣の一つだと知りました。
ジャーナリングとは、思ったことや感情をそのまま書き出す“心の整理術”のようなもの。
特別な道具は必要なく、 家にある紙にその日の気持ちを思うままにつづるだけ。
この習慣が、私の思考と感情の渦に小さな出口を作ってくれました。
「頭と心の中」を言語化する方法
ジャーナリングによる「モヤモヤの整理術」では、以下の3つを心掛けています。
それぞれ私なりの視点で解説します。
1. まずは「思い浮かんだこと」をそのまま書き出してみる
💡POINT
•思考や感情は整理せず、そのまま吐き出すだけでOK
モヤモヤしているときというのは、頭と心の中がごちゃごちゃに混み合っている状態です。
やらなきゃいけないこと、誰かの言葉、過去の後悔、言えなかった本音……そういうものが、言葉にならないままパンパンに詰まっているイメージ。
まずはそれを紙に書いて、いったん外に出してみましょう。
この時点では思考や感情を整理しようとする必要はなく、思い浮かんだものをそのまま吐き出すだけでOK。
そうすると、頭や心の中に少しだけ“余白”が生まれます。この余白は、後に新しい視点や冷静な思考を入れるスペースになります。
2. 浮かび上がった思考に対して自問自答していく
💡POINT
•自分の思考を「疑う」気持ちで、問いかけてみる
“余白”ができたら、私は今度は自分自身に問いを立ててみます。
例えば私は「職場の人に頼るのが苦手」でよく悩んでいたので、「それはどうしてなんだろう?」と考えてみました。
「嫌われたくないから?」「怖いから?」と自問自答を繰り返していくと、多くの場合、過去の経験や思考のクセ、「人に迷惑をかけてはいけない」といった自分の価値観が絡んでいることに気がつきます。
「これは本当に今の自分の気持ちだろうか?」「誰かの価値観に影響されているんじゃないか?」など、自分の思考をちょっと疑う気持ちで問いかけてみるとより深まると思います。
「自問自答を繰り返しているうちに、また頭の中がごちゃごちゃしてしまう」という方は、マインドマップにしてみるのがおすすめです。
一見複雑そうに思われるかもしれませんが、頭の中にある簡単な言葉や単語を、丸や線でつなぎ視覚化するだけで、不思議と考えが整理されていきます。
3.紙の上ではどんな気持ちも抑圧しない
💡POINT
•感情を抑えるのではなく、観察するつもりで俯瞰視する
悩みや思考を書き出すときは「でも」「だって」「どうせ」など、自分への言い訳や否定の言葉も、遠慮せずそのまま書いてみてください。
感情を抑えるのではなく観察するつもりで正直に書くと、自身の感情や思考を俯瞰視できます。
習慣化するためのちょっとしたコツ
私は日々のジャーナリングをSNSに投稿していますが、それを見たフォロワーさんから「そんなに上手に言語化できない」「やってみたけど継続できなかった」という言葉をもらうことがあります。
そこで、私が習慣化のために実践してきたちょっとしたコツを5つ紹介します。
1.きれいに書こうとしない
💡POINT
•「書いたら捨てる」くらいの気軽さで始めてみる
つい「まずはちょっといいノートを買おう」や「きれいに書こう」と思ってしまいがち。ですがそれだとハードルが高まってしまいます。
まずは家に余っている紙やチラシの裏に書いてみたり、「書いたら捨てる」くらいの気軽さで始めるのがちょうどいいと思います。
私もSNSに載せるものは「読みやすさ」を意識して清書することもありますが、そうでないものは「自分だけが分かればいい」という気持ちで書いています。
2.「書かない日」があっても全然OK
💡POINT
•「やる」ハードルはグッと下げておく
ジャーナリングは習慣化することでより「頭」と「心」が整理しやすくなりますが、一方で「毎日やらなきゃ」と思うと続けにくいと思います。
なので「一言だけでも書けたらOK」くらいの気持ちでハードルをぐっと下げることが、習慣化のいちばんの近道だと感じています。
また「書かない日もある」ということを、あらかじめ自分の中で許しておくのも大事。
私は「週に3回できたらOK」くらいのゆるさで続けています。
「どんな習慣にも波があって当然」と、自分の不完全さを許すことが続けるコツです。
3.「続けやすい環境」を整える
💡POINT
•すでにやっている「習慣」にジャーナリングをくっつける
習慣にするためには「続けやすい環境」を作ることも大切。
例えば私は「朝のコーヒータイム」や「寝る前ベッドの中」「電車に揺られている時間」など、日常の中で“すでにある習慣”にジャーナリングをくっつけました。
何かを新しく始めるよりも、既にある流れに組み込む方が、続けやすいからです。
4.自分に合うツールを選ぶ
💡POINT
•手書きでも電子でも「自分に合う」方法で
自分にあったツールを使うことも、習慣化のコツです。
私は、書くのに時間はかかるけれどどんどんページが埋まっていく感覚が好きだったり、書いた後にくしゃくしゃに丸めて捨てて「物理的な区切り」が付けられたりといった理由からノートやペンで「手書き」する方法を選んでいます。
一方で、スマホのメモ機能やアプリなど「デジタル」には、書くのが早い、音声でもメモが取れる、スペースに制限がないといったメリットがあります。
5.「書く」以外の方法もある
💡POINT
•「散歩しながらひとりごと」でもOK
ここまで「書く」ことのお話をしてきましたが、自分の思考を言語化する方法は「書く」だけが全てではありません。
散歩しながら、小声でひとりごとのように自問自答してみる。そんな方法でも、十分に思考が整理できます。
書く時間や気力がないときは「問いかける」だけでも大丈夫。
やり方に正解はないからこそ、自分に合ったスタイルを見つけてほしいです。
「自分の本音」が分かると人間関係がラクになる
💡POINT
•ジャーナリングを続けると「自分軸」が明確になる
•見えてくるのは「自分の中にしかない答え」
•1日1行だけでも効果がある
ジャーナリングを始めたばかりの頃は、正直何を書けばいいのか分からない日もありました。
それでも1行だけでも「書く」ことをやめずに続けていると、不思議と「問い」を立てるのが上手になっていったんです。
例えば「なぜ最近イライラしているんだろう?」と書いてみる。
すると「本当はもっと認めてほしかった」とか「無理して頑張り過ぎていた」など、自分でも気づかなかった気持ちが見えてくるようになりました。
それはまるで、静かな部屋の中で、ずっと前からそこにあった声に耳をすませるような感覚です。
こうして自分との対話を重ねていくと、だんだんと自己理解が深まっていきます。
「相手にどう思われるか」ではなく「自分はどうしたいか」を軸に物事を選べるようになる。
ずっと悩んできた人間関係も少しずつラクになって、他人の期待より、自分の本音を大事にできるようになっていきました。
AIが発達し、あらゆる答えが簡単に検索できる時代だからこそ、自分の内側から答えを出すことには、特別な喜びと救いがあると思います。
その答えは、他人から与えられるものではなく、自分の中にしかないものだから。
まずは、1日1行だけでも書いてみる。
そこから、すこしずつ自分との関係性が変わっていくのを感じられるはずです。
編集:はてな編集部
著者:詩旅紡さん
エッセイスト・ライター。考え過ぎて生きづらさを抱えている人へ、自己理解・習慣・感情整理をテーマにXにて発信中。うつ病やパニック障害、適応障害を経験してきたからこそのエッセイを執筆。noteメンバーシップ「書いて、生きていく」を運営