天気予報あたってると思う?"予報士泣かせ"の気象現象…専門家に聞く「大雪に備える気象知識」
1月7日、小樽では1日に降った降雪量が69センチとなり歴代3位を記録しました。
一方、札幌では22センチ。そこまで距離が離れていないのに、なぜここまで違うのでしょうか?
地域によって変わる北海道の雪の降り方について、日本気象協会の気象予報士・岡本肇さんに聞きました。
北海道の雪の降り方は主に2つ!
北海道の雪の降り方は、
①冬型の気圧配置
②低気圧
の2つに大別できます。
【冬型の気圧配置による降雪】
ユーラシア大陸にあるシベリア高気圧から乾燥した寒気が日本海に流れ出した際に、水蒸気を受け取り、雪雲を作ります。
雲の高さは1000~1500メートルほど。雪雲は山岳の斜面によって持ち上げられることで、さらに発達します。
これらの過程で発生した雲から、どのように雪が降るのでしょうか?
岡本さんは、北海道の地形が重要だと強調します。
「発生した雪雲は、北海道の大雪山系や日高山脈の高い山々より背が低い。そのため山々を超えて、オホーツク海側や太平洋側で雪を降らせることは少ない」
こうした過程をたどって、北海道の日本海側の地域で雪が降るんですね。
【低気圧による降雪】
低気圧の位置がキーとなります。低気圧の周辺は反時計回りに風が吹いており、低気圧の位置によって、雪雲の流入する方角が変わるからです。
また、この降雪パターンでも、山岳の斜面によって雪雲が強制上昇し発達する過程も起こります。
岡本さんは「北東の風ではオホーツク海側、東風では十勝地方、南東の風では太平洋西部で降雪量が増える」と指摘します。
北海道の日本海側で大雪になるパターン
冬型の気圧配置が緩んだとしても、大雪の警戒を怠ってはいけません。
「石狩湾小低気圧」が発生して、北海道の日本海側に大雪を降らせることがあるからです。
岡本さんによると、2024年1月7日の小樽での豪雪もこのタイプの大雪に当てはまるといいます。
石狩湾小低気圧はどのように発生するの?
小樽での大雪の事例を使って、 石 狩湾小低気圧のメカニズムを紹介しましょう。
石狩湾小低気圧は、まず冬型の気圧配置が緩んだときに北海道の内陸が晴れて、 夜間に放射冷却(画像参照)が強まります。
すると内陸の空気は冷たくて重くなり、 内陸には局地的な高気圧ができます。
その局地的な高気圧から吹き出した風と大陸からの季節風が、北海道西部の海上で集まります。このとき上空に強い寒気を伴う(注)気圧の谷が近づくと、小さな低気圧が発生します。
(注)気圧の谷…周辺より気圧が低い場所。逆に、周囲より気圧が高い場所を気圧の屋根という。
大雪になる地域が「読めない」 厄介な小さな低気圧
実際に石狩湾小低気圧を天気図で見てみましょう。
すると、ほかの低気圧に比べて小さいことが分かります。ただし、天気図に描かれない場合もあり、注意が必要です。
「小さいから、大したことないのでは?」
詳しく知らない人はそう感じてしまうかもしれません。しかし、岡本さんは注意が必要だといいます。
「小低気圧の予報と実際の位置が少しでも異なると、雪雲の流れ込み方が変わり、大雪が降る場所が変わってしまう」
このため、大雪の地域を予報で的中させるのは難度が高いので、「予報士泣かせ」の気象現象だと岡本さんはいいます。
1月7日の小樽の大雪の事例を参照してみると、降雪量が小樽では69センチだったのにも関わらず、札幌は22センチと少なめでした。
岡本さんによると、この差は小低気圧の雪の降り方と移動が影響しているといいます。
「小低気圧の大雪は低気圧の中心の西側で強まりやすい傾向がある。この時は石狩湾のかなり陸に近いところに低気圧が進んできたため、すぐ南の札幌より少し西の小樽で雪が強まった」(岡本さん)
さらに、この小低気圧は南下を続けました。
そのため、西側で発達した雪雲が蘭越から豊浦に流れ込みました。
この局地的大雪によって、豊浦町礼文華の国道37号線では、15キロにわたって車が立ち往生。札樽道や後志道なども通行止めになりました。
北海道の日本海側の地域は石狩湾小低気圧の影響を受けやすく、注意を払う必要があります。1月7日、小樽に大雪をもたらした石狩湾小低気圧が、違ったコースで移動していたらどうなっていたのでしょうか。
岡本さんは「南ではなく東に動いていれば、札幌や千歳あたりでも大雪になっていた」と指摘します。
冬の北海道 こまめな予報の確認&雪の降り方に注目
今回の記事では、
・冬型の気圧配置や低気圧
・石狩湾小低気圧
といった冬の北海道の降雪にかかわる気象現象を紹介しました。
特性を知ってこまめに天気予報を確認することで、大雪に対して備えてもらえたらと思います。