高齢者の健康を支える栄養満点スープを作ろう【春野菜を使ったスープレシピ5選】
高齢者の健康を支えるスープ食の効果と基本の作り方
毎日の食事で心配なことはありませんか?
温かいスープには、高齢者の食事に関する様々な悩みを解決する力があります。例えば、食欲不振の方でも温かいだしの香りで食欲が湧きやすく、のどごしの良いスープなら飲み込みやすいものです。また、野菜をたっぷり使ったスープは、普段の食事にビタミンやミネラルや食物繊維を増やしてくれます。
さらに、具材の大きさや硬さを調整しやすいため、その方の咀嚼力に合わせた食事を作ることができます。
中でも心強いのは、スープ食なら「水分補給」と「栄養補給」を同時にできること。高齢者は喉の渇きを感じにくくなるため、水分不足になりがちです。しかし、おいしいスープなら自然と水分も摂取できます。これから、そんなスープ食の効果的な活用法と、すぐに実践できる具体的なレシピをご紹介していきます。
スープで解決できる高齢者の食事の課題とメリット
高齢者の食事には様々な課題があります。咀嚼力や嚥下機能の低下、食欲不振、水分摂取量の不足などがあげられますが、スープ食には、これらの課題を解決できる可能性があります。
スープの主なメリットは以下の4点です。
水分補給と栄養摂取の同時進行
体の内側を温める効果
だしのうま味による食欲増進
食材の柔らかさ調整が容易
特に注目したいのは、スープの持つ「温める効果」です。体が温まることで血行が促進され、代謝が上がることで食欲も増進します。冷えは高齢者の大敵とされていますが、温かいスープは体の芯から温めてくれます。
また、和食の基本であるだしには、グルタミン酸やイノシン酸といったうま味成分が含まれています。だしの香りには食欲を刺激する作用もあり、食事の時間が楽しみになるきっかけにもなります。
加えて、スープは食材の硬さを細かく調整することも可能です。同じ野菜でも、食材の切り方や大きさや煮る時間を変えることで歯ごたえのある食感から、とろけるような柔らかさまで調整可能です。これにより、高齢の方の体調や飲み込む力に合わせて食べやすさを調整でき、安心して栄養をとることができます。
簡単で栄養満点のスープ作りの基本
最初は慣れないことも多いかもしれませんが、少しずつコツをつかんでいけば、きっと毎日の調理時間も減っていきます。ここからは、仕事と介護の両立に役立つ、誰でも実践できる簡単調理のポイントをご紹介していきます。
15分で作れるスープの基本手順
だし取り
野菜の下準備
具材を煮込む
味付け
仕上げ
スープ作りの魅力は、慣れてくれば15分程度で完成できる手軽さです。市販のだしパックや顆粒だしを上手に使えば、十分おいしいスープが作れます。
野菜の下準備は確かに手間がかかりますが、工夫次第で負担を減らせます。例えば、時間に余裕のある週末に野菜を切っておき、冷凍保存するのがおすすめです。特に根菜類は冷凍してもあまり味が変わらず、むしろ柔らかくなって食べやすくなることも。
煮込む際のポイントは火加減です。強火で急いで煮るのではなく、弱火でじっくり煮ることで、野菜の甘みとうま味が引き出されます。味付けは控えめにして、だしの風味を活かすのが基本。高齢の方は薄味でもおいしく感じられることが多いので、最初は控えめにして、必要に応じて味を足すようにしましょう。
仕上げの際は、その日の体調に合わせてとろみを加えることも。市販のとろみ調整食品を使えば、簡単に食べやすい固さに調整できます。温度も大切で、熱すぎず、ぬるすぎない食べ頃の温度に整えることで、よりおいしく召し上がっていただけます。
市販の食材を活用!手間をかけずに栄養価を高める工夫
スーパーマーケットには、手間を省きながら栄養価を高められる食材が豊富にあります。これらを上手に活用することで、調理時間を短縮しながら栄養バランスの取れたスープを作ることができます。
活用したい市販食材
カット野菜
冷凍野菜
レトルトコーン
とろみ調整食品
乾燥わかめ
スーパーの野菜売り場で目にするカット野菜。特に根菜類のカット野菜は皮むきや面取りの手間が省け、時間のない夕食準備の強い味方です。玉ねぎやにんじんなど、基本的な野菜が組み合わされたセットなら、そのままスープの具材として使えます。
冷凍野菜は、必要な分だけ使えて無駄が出にくく、ほうれん草やブロッコリーなどは、すでにカットされているものも多く、解凍してすぐにスープに加えられます。
コーンには自然な甘みがあり、スープに入れるだけで味にアクセントを加えられます。レトルトタイプは水煮より甘みが強く、やわらかいのが特徴です。高齢の方でも食べやすい食感で、見た目も鮮やかな黄色で食欲をそそります。
飲み込みに不安のある方には、とろみ調整食品が役立ちます。最近の商品は、ダマになりにくく、なめらかな食感に仕上がるものが増えています。少量ずつ加えて様子を見ながら調整できるので、その日の体調に合わせた硬さに簡単に整えられます。
乾燥わかめは、手軽にミネラルを補給できる優れもの。食物繊維も豊富で保存期間が長く、必要な分だけ使えるので経済的。味噌汁やスープの具材として使えば、食感のアクセントにもなります。カルシウム、マグネシウム、鉄分などのミネラルが豊富で、骨粗しょう症予防にも効果的です。
これらの食材は長期保存が可能で、必要な時に必要な分だけ使えるのが最大の特徴です。日頃から冷蔵庫や棚に常備しておくと、急な体調変化にも対応しやすくなります。
春野菜を使った栄養スープレシピ5選
3月は栄養価の高い春野菜が出回る季節です。これらの野菜を活用することで、季節感のあるおいしいスープを作ることができます。ここでは、高齢者の方の体調やお悩みに応じた、簡単に作れるスープレシピをご紹介します。
菜の花としいたけの優しい和風スープ
菜の花の爽やかな香りとしいたけのうま味が広がり、春の味覚を楽しめる一品です。優しい味付けで、のどごしも良く食べやすいスープに仕上がります。
材料(2人分)
菜の花:100g
しいたけ:2個
絹豆腐:1/2丁
だし昆布:5cm
かつお節:1パック
薄口醤油:小さじ1
塩:少々
作り方
菜の花は3cm長さに切り、しいたけは薄切りにする
鍋に水と昆布を入れて弱火で3分煮出す
かつお節を加えて1分後、こして、だし汁を作る
だし汁に豆腐、野菜を入れて火が通るまで煮る
薄口醤油と塩で味を調える
栄養ポイント
菜の花の苦味成分とビタミン類が食欲を促し、しいたけのうま味成分がおいしさを引き立てます。豆腐のタンパク質と昆布・かつお節のミネラルも加わり、食欲不振の方でも栄養バランスよく食べられるスープです。
春キャベツと生姜の簡単中華スープ
血行を促進する効果のある生姜を使用したスープです。春キャベツは通常のキャベツより柔らかく、甘みがあるため、消化も良好です。レンジを使うことで、調理時間を大幅に短縮できます。
材料(2人分)
春キャベツ:2枚
生姜:1かけ(すりおろし)
ニンジン:1/4本
鶏ひき肉:50g
中華だし:小さじ1
ごま油:小さじ1/2
塩:少々
黒こしょう:少々
作り方
春キャベツは一口大、ニンジンは細切りにする
耐熱容器に野菜と水を入れ、ラップをして600Wで5分加熱
鶏ひき肉を加えてさらに3分加熱
中華だし、生姜を加え、塩・こしょうで味を調える
最後にごま油を回しかける
栄養ポイント
生姜の血行を促進する成分とキャベツのビタミンCで、免疫力アップが期待できます。また、やわらかい春キャベツは消化に優しく、鶏ひき肉の良質なタンパク質と合わせて、栄養バランスの取れた一品となっています。
グリーンピースのとろみポタージュ
嚥下機能に配慮した、なめらかな食感のスープです。グリーンピースの自然な甘みを活かし、高齢者でも食べやすい味に仕上げます。
材料(2人分)
グリーンピース(冷凍):200g
じゃがいも:1個
牛乳:200ml
バター:10g
とろみ調整食品:適量
塩:少々
こしょう:少々
作り方
じゃがいもは皮をむいて一口大に切る
鍋に具材と水を入れて柔らかくなるまで煮る
ミキサーでなめらかになるまで攪拌
牛乳を加えて温め、とろみ剤で適度なとろみをつける
塩・こしょうで味を調える
栄養のポイント
グリーンピースに含まれる食物繊維とビタミンB群が体の代謝を整え、じゃがいもの炭水化物と牛乳のカルシウムが効率的なエネルギー補給を実現します。なめらかな食感と自然な甘みで飲み込みやすく、栄養を無理なく摂取できるスープです。
かぶと菜の花の白だしスープ
ミネラル豊富な春野菜を使用した和風スープです。かぶの葉も捨てずに使うことで、栄養価を高められます。やわらかな食感で食べやすく、消化も良好です。
材料(2人分)
かぶ:2個
かぶの葉:適量
菜の花:100g
白だし:大さじ1
塩:少々
かつお節:適量(仕上げ用)
作り方
かぶは皮をむいて一口大、葉は細かく刻む
菜の花は3cm長さに切る
鍋に水と白だしを入れて火にかける
かぶを入れて中火で5分煮る
菜の花とかぶの葉を加えてさらに2分煮る
塩で味を調え、器に盛って、かつお節をのせる
栄養のポイント
かぶと菜の花の食物繊維とビタミンが腸内環境を整え、かぶの葉に含まれる鉄分が貧血予防に役立ちます。白だしとかつお節のうま味で食欲を促進しながら、春野菜の栄養を余すことなく摂取できる一品です。
スナップエンドウとブロッコリーのミルクスープ
春野菜の甘みとミルクのまろやかさが調和した、優しい味わいのスープです。カルシウムも豊富で、骨粗しょう症予防にも効果的です。
材料(2人分)
スナップエンドウ:6本
ブロッコリー:1/2株
牛乳:200ml
バター:10g
コンソメ:1個
塩:少々
こしょう:少々
作り方
スナップエンドウは斜め切り、ブロッコリーは小房に分ける
鍋にバターを溶かし、野菜を軽く炒める
水とコンソメを加えて野菜が柔らかくなるまで煮る
牛乳を加えて温める(沸騰させない)
塩・こしょうで味を調える
栄養ポイント
春野菜に含まれる食物繊維とビタミンCが体調を整え、牛乳のカルシウムとビタミンDが骨の健康をサポートします。バターの脂質で野菜の栄養の吸収率を高め、まろやかな味わいと共に効率的に栄養を摂取できるスープです。
スープの作り置きと管理方法
毎日の食事準備に時間を取られることは、介護者にとって大きな負担となります。ここでは、効率的なスープの作り置き方法と保存のコツをご紹介します。
週末30分で作る 作り置きスープの基本
週末にまとめて作り置きをすることで、平日の食事準備の時間を大幅に短縮できます。ポイントは、野菜の下処理をまとめて行い、ベースとなるスープを作っておくことです。
基本の作り置き手順
野菜の下処理をまとめて行う(30分)
ベースとなるスープを作る(15分)
小分けにして冷凍保存(10分)
食べる直前に仕上げの調理(5分)
詳しい手順をご紹介します。まず、休日の時間に余裕のある時に野菜の下処理をまとめて行います。野菜は種類ごとに切り分け、それぞれ適切な大きさにカットします。次に、和風、洋風など、複数の味付けに対応できるベースとなるスープを作ります。野菜のうま味をしっかり引き出すことがポイントです。
出来上がったスープは、一食分ずつ小分けにして保存容器に入れます。容器には作った日付を記入しましょう。最後に、食べる直前の仕上げ調理では、その日の体調に合わせてとろみを付けたり、刻みネギを加えたりして完成させます。
作り置きに向いている食材
根菜類(にんじん、かぶなど)
キャベツ類
玉ねぎ
かぼちゃ
じゃがいも
これらの野菜は冷凍保存しても食感や栄養価が保たれやすい特徴があります。特に根菜類は煮込み料理に向いており、冷凍解凍することで逆に柔らかくなるため、高齢者の方でも食べやすくなります。玉ねぎは甘みが増し、キャベツは適度な歯ごたえを保ちます。かぼちゃやじゃがいもは、ポタージュにした際のとろみづけの役割も果たしてくれます。
これらの野菜を組み合わせることで、栄養バランスの良いスープのベースを作ることができます。冷凍保存は2週間を目安に、解凍後は早めに召し上がっていただくことをおすすめします。
小分け保存に便利な 100均で揃う保存容器の活用法
作り置きしたスープを効率的に保存するためには、適切な保存容器を使用しましょう。100円ショップで手に入る保存容器でも、使い方次第で十分活用できます。
おすすめの保存方法
耐熱容器を選ぶ(電子レンジ対応)
サイズは1回分(300ml程度)
密閉性の高いものを選ぶ
積み重ねができるタイプがベスト
日付を記入できるものを選ぶ
保存容器選びで大切なのは、電子レンジ加熱に対応した耐熱容器を選ぶことです。作り置きしたスープを温め直す際、容器ごと電子レンジで加熱できれば、別の器に移し替える手間が省けます。また、高温のスープを入れても容器が変形しにくいため、長く使い続けることができます。
サイズは1回分(300ml程度)の小分け容器がおすすめです。これくらいの量なら、温めムラが出にくく、食べきりやすい量です。高齢の方の食事量に合わせて調整しやすいのも特徴です。使わない分は冷凍したままにしておけるので、食材の無駄も防げます。
密閉性の高い容器を選ぶことで、冷凍保存時の冷凍焼けを防ぎ、スープの風味を長く保つことができます。特に、パッキン付きの蓋がついた容器は、液漏れの心配もなく安心です。また、積み重ねができるタイプの容器なら、冷凍庫のスペースを効率的に使えます。
容器に日付を記入できるものを選ぶことで、作り置きスープの管理が簡単になります。日付だけでなく、スープの種類や食材も一緒にメモしておくと、冷凍庫の中身が一目で分かり、献立の調整もしやすくなります。
適切な保存容器を選ぶことで、作り置きスープをおいしく、効率的に保存することができます。手間をかけて作ったスープを最後までおいしく食べられるよう、保存方法にもひと工夫加えてみましょう。
介護の合間でもできる 電子レンジでの温め直し方と栄養を逃さないポイント
作り置きしたスープをおいしく食べるためには、適切な温め方が重要です。電子レンジを使えば、介護の合間でも手早く温められます。
温め直しの基本手順
容器のフタを少し緩める
600Wで1分程度加熱
一度取り出してよくかき混ぜる
さらに30秒程度加熱
温度を確認してから提供
スープをおいしく温め直すコツは、一度にしっかり温めすぎないことです。まず、容器のフタは必ず少し緩めましょう。完全密閉のまま加熱すると、中の空気が膨張して危険です。電子レンジは600Wで、様子を見ながら加熱します。
1分程度の加熱が終わったら、一度取り出してスープをよくかき混ぜます。これは温度ムラをなくすだけでなく、具材の固さも確認できる大切な工程です。特に高齢の方の場合、食べやすい温度と固さを意識することが重要です。
2回目の加熱は30秒程度と控えめにし、食べごろの温度に仕上げます。温め直す際は、沸騰させすぎないように注意が必要です。過度な加熱は栄養価の低下を招くだけでなく、せっかくの具材が柔らかくなりすぎてしまう可能性もあります。
最後に必ず温度を確認してから提供しましょう。高齢の方は温度感覚が鈍くなっていることもあるため、介護する方が一度確認することで、火傷を防ぐことができます。温かすぎる場合は、少し時間を置いて冷ましてから召し上がっていただくのがおすすめです。
高齢者の食事には、栄養バランスと水分補給の両立が欠かせません。温かいスープは体を内側から温め、食欲を促進し、飲み込みの心配な方でも安心して召し上がれます。
今回ご紹介した春野菜を使った5つのレシピは、季節の食材の持つ栄養を活かしながら、調理の手間も少なく仕上げられます。日々の食事作りをより楽に、そして栄養たっぷりにするヒントとして、ぜひ実践してみてください。