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『ケダモノ』作・演出の赤堀雅秋に聞く~「人類なんて滅亡すればいい」そんなすごく乱暴な気持ちをぶつけた作品

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赤堀雅秋

赤堀雅秋プロデュース『ケダモノ』(作・演出:赤堀雅秋)が、2022年4月21日(木)~5月8日(日)、東京・本多劇場で上演される。出演は、大森南朋 門脇麦 荒川良々 あめくみちこ 清水優 新井郁 赤堀雅秋 田中哲司。

人生の半分も生きれば社会の見方も関わり方も当然変わってくる。その過程の中で人間というものをより生々しく、あからさまに、そして面白く描くようになってきた一人が、きっと劇作家・演出家の赤堀雅秋だ。俳優の田中哲司、大森南朋と結成した演劇ユニットは、その3人の顔が並んだだけで、どこかハジけてやらかしそうな雰囲気が漂う。もちろん舞台の上だけで。2016年の『同じ夢』、2019年の『神の子』に続く第3弾は『ケダモノ』、なんとも「どストレートな」なタイトルが潔い。赤堀に今、どんなことを考えているか聞いた。

――唐突ですが、今、赤堀さんご自身の演劇への興味というのはどういうところにあるんですか?

興味? 興味……? 20、30代のころはやっぱり自分のベクトルが内側に向かってましたよね。自己顕示欲だったり、承認欲求だったりが主なモチベーションだったような気がします。それが40代になってから、今は50歳なんですけど、ベクトルが外に向いてきたわけです。もちろん無知な部分も多分にありますが、当たり前のことだと思うけれど、他者や社会というものに目が向きはじめていきました。

――2007年にTHE SHAMPOO HATの『その夜の侍』で、それまで無理やり抑え込んでいたような欲望をぶちまける感じの作品を上演して、そこから何か開放されたような感じがしました。

演劇に関して言えば誰にも師事したわけでもないですし、学校で習ったわけでもないですから、30代半ばぐらいまで演劇を否定しながら演劇をやってる感じでしたよね。だったら演劇なんかやらなきゃいいじゃんって話なんですけど、でもそれがすごく楽しかったんですよ。それこそ黒田大輔が平田オリザさんの前で「静かな演劇は俺たちが発明した」みたいなことを言って大笑いされたらしいですけど、演劇未経験の、何にも知らない人間たちが集まって非演劇的なことを演劇の場でやるということの喜びみたいなものがありました。でもさすがにそれも続けていると、袋小路に入った感があって、だんだんつまらなくなっていく。それでぼちぼち演劇とちゃんと向き合わなくちゃいけないと思ったのが『その夜の侍』でした。

――ほとんど素舞台で、闇の中で繰り広げられるような作品だったのを覚えています。

それも今考えたら、舞台転換の仕方とか、まだまだ拙いところはたくさんあったんですけど、たしかにその作品あたりからですかね、転換期は。

――欲望をあらわにしていく、そして人間をもちょっと超えて行きそうなところを見せていく生きざまみたいなものを描いている様には、凄みを感じました。

そういう意味では、若いころは人間描写も極めて近視眼的だったというか。40歳を過ぎてぐらいから、もう少し俯瞰で人間を捉えようとする姿勢に変わってきた自覚はあります。劇団の最終公演、いや解散したわけではないけど現在のところ最後になっている公演『風の吹く夢』で、土木作業員の新人のために、ひたすら冷蔵庫を探し回るという不毛な一夜の話を描いたんですけど、自分の中で劇団でできることはやり尽くした、ある種の到達点みたいな気持ちになったんです。それ以降、さらにもう少し世界とか世の中とか人生とか、そういうものを俯瞰するようになったと思います。それも自覚的というよりは何となくそちら側に変換していった感じです。それが自分の中ではシアターコクーンでの『世界』(2017)だったんです。演劇との向き合い方でいうと、そうした変遷がありました。今もその最中です。

自分の根源的なところはきっと変わってないような気がするんですけど、そういう捉え方はたしかに変わってきたような気がします。居酒屋話みたいですけど、若いころは人間に対してもっと希望があった。話し合えばわかり合える、一生懸命に伝えれば伝わるんじゃないかという願いはあったんです。でも年を取ってくると現実はそうじゃないと実感し始めるし、いいとか悪いとかじゃなくて、そういうものなんだというところから、人間ということ、人生ということに対しての描き方が必然的に作劇に反映されているとは思うんですけどね。普通に年取ったら誰だってそうなるじゃないですか。

■本当の演劇の面白さを伝えていくようなことをしていきたい

『同じ夢』 撮影:細野晋司

『神の子』 撮影:引地信彦

――田中哲司さん、大森南朋さんとのユニット、またすごく欲望を感じる人たちな印象もありますが、どういうふうに結成されたんでしたっけ?

もともと飲み仲間だったんです。何となく飲み屋で「やってみようか」みたいな軽い感じで始まりました。そしてその公演中にまた飲み屋で「じゃあ3年後ぐらいにまたやろうか」と。なんでしょう、劇団が動いていない今、ホームと言ったら大げさですけど、赤堀プロデュースという名義でやっているこの公演は、いろいろな制作業務から劇場選びから、キャスティングから、すべてにおいて自由度が高いんですよ。自分の好きなようにやれる場所があるのは本当に幸せなこと。それが楽しいですね。

――大人の遊び場という感じ?

そんな格好いいものでもないんですけど。どうしようもないことなんですけど、他所のプロデュース公演でいろいろな街に行った場合、やはり興行として採算を取らなきゃいけない。東京で400人余りの本多劇場で公演しているのに、いきなり1000人だ、2000人だという空間でやるわけじゃないですか。いや、もちろんお客さんにとっても滅多に来ない演劇だし、人気がある芸能人も出てるしイベント的に観にきてくださるというのもあるんでしょうけど、やっている演者としては勝手に自分が詐欺行為をしてるような自責の念にかられたりするんですよ。そういうことでいいのかなって。草の根運動じゃないけれど、本当の演劇の面白さを伝えていくようなことをしていきたいんです。たまたま観に来てくれた若者に演劇ってこんなに面白いんだとか、こういう世界があるんだって思ってもらいたい。そのためには作品にふさわしいキャパシティの、いい環境の劇場で伝えたいという欲求が15年ぐらい前からあるんですよ。もうふつふつと。それでようやくプロデューサーと話し合って、今回は札幌と大阪の2カ所だけですけど、思っている形のことができた。ゆくゆくはいろいろな地方の人とコミュニケーションを取りながら、いい劇場でやれたらなと思いますね。儲けは少ないけど。

『ケダモノ』出演者のめんめん

――そして『ケダモノ』と、そのものずばりといった感じのタイトルですね。

何をやりたいということでもないんですけど、コロナ禍が2年ぐらい続いていて、そこで鬱積している世の中の空気、蔓延している雰囲気みたいなものを、自分なりに描きたいと思ったわけです。自分自身も飽和状態になって、全部ぶち壊したいみたいな、ひどく乱暴な気分になっていて。そういう気分を表したタイトルです。物語としては別に直接的な描き方はしていませんけどね。そういう乱暴な気持ちが初期衝動でした。

――コロナ禍に経験した思いを作品にぶつけると。

テレビが廃れて、YouTubeが台頭してきているけど、原始的な表現、生身の人間であることがやっぱり演劇の強みですからね。それがコロナで封鎖されそうになっていますけど。去年、KERAさんと対談をさせてもらう機会があって、「若い劇団にこそ何かもっとキ●ガイみたいな、何だこいつというアブない奴が出てきたら面白いのにねぇ」みたいな話をしたんですよ。でもそのときになんか偉そうに言ってたけど、じゃあお前がやればいいじゃないかと自分に突き付けられた感があって。いや、もちろん僕もそんなことやらないですけど、でも精神としてはそうありたいと思ったんですよね。昨今の自分がなんとなくウェルメイドなものをやる、万人にウケるようなことをやる職業作家になりつつあって、チャレンジ精神、パンク精神的なものを失ってはいないか、50歳になった今、改めて自問自答しています。昔はKERAさんに「お前、人殺しみたいな顔してたよ」って言われたことがあったんですけどね。そういった意味では、今回は自分の中ではチャレンジした作品ではあるんです。以前から観ている人からしたら、「いや、いつものじゃねえか」って言われるかもしれないけど、自分の中ではかなりの意欲作です。

――どういう視点で役者さんは集めているんですか?

演技がうまい人というより、たたずまいが面白い人が僕は好きなんです。演技がうまい人は演劇の世界なので山ほどいるでしょう。そうじゃなくて、たたずんでいるだけで、何か発信しているような。たとえば門脇麦さんも綺麗な女優さんだけど、僕は何か勝手にグロテスクなものを感じるんです。演技していないのに悲しいのか、怒っているのか、何も考えてないのか、そう想像させるミステリアスな部分がすごく魅力的。ほかの役者さんも同様で、そういう人をセレクトしているのかもしれないですね。

――作品の入り口を解説してもらえますか。

お客さんに好きに解釈してもらっていいんですけど、去年なのか、それとも今年の夏なのか、いわゆるコロナ禍の設定です。地方都市にある寂れたリサイクル店の店長を大森南朋さん、そこで働く社員に荒川良々さん、清水優さん、店長の盟友というか昔から何かしがらみがある自称映画プロデューサーに田中哲司さん。店長と映画プロデューサーはどこかのキャバクラとかで出会ったよう。彼らが通うキャバクラのキャバ嬢が門脇麦さん、新井郁さんです。あめくみちこさん演じる独身女性が長年介護していた父が亡くなったことで、遺品を整理するために、彼らに引き取り作業に来てもらうというところから、いろいろ物語が二転三転していくんです。そして俺は猟師です。鹿の獣害に住民たちは相当悩まされていて、他県からプロのハンターが募集された中に加わってやってくる。ちょこっとしか出ないですけどね。

――改めて『ケダモノ』に込めた思いを教えてください。

人類なんて滅亡すればいいんじゃないかっていうすごく乱暴な気持ちがあって。もちろんそんなふうにはなってほしくないから作劇するんですけどね。コロナ禍という中での苦しみがあり、加えて脚本を書こうと思ったときに戦争が始まって。戦争なんていつだってあちらこちらで起こっているけど、何かげんなりしましたね、いろんなことに対して。かと言ってげんなりしているわけにもいかないので、本来の人間のあり方はどうあるべきなのか、そういうのを自分なりに突き詰めて考えた結果が、『ケダモノ』なんだと思います。

赤堀雅秋

取材・文:いまいこういち

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