まだまだ難しい高齢者の賃貸入居。突破口となるかエイブルの新サービスの実力│南智仁の賃貸ニュースピックアップ
「南智仁の賃貸ニュースピックアップ」とは?
不動産会社向けコンサルティング会社、株式会社南総合研究所の代表 南智仁氏が、賃貸業界に関わる方なら知っておくべきという観点でニュースを厳選し、豊富な経験に基づくコメントとともに伝えるコーナー。業界関係者はもちろん、賃貸住宅を探す人にとっても、重要な動きを理解できるほか、新たな視点を得ることができるはずだ。
管理会社だからできる安心の賃貸。進むシニア入居支援の新潮流
不動産管理大手の株式会社エイブルが、2025年11月11日より全国の直営店舗にて「70歳からのお部屋探し『エイブルシニアパック』」を販売開始したと発表した。
本サービスは、ALSOKの安否確認センサーや緊急通報ボタン、救急ペンダントといった見守り機器に加え、看護師資格を持つスタッフによる24時間健康相談サービス、さらには家賃債務保証をエポスカードと提携して月額無料で提供するなど、シニア世代の賃貸入居に伴う不安を多角的に解消する内容となっている。
【今回ピックアップするニュース】
エイブルが社会課題に寄り添う高齢者のお部屋探しをサポートするサービス70歳からのお部屋探し「エイブルシニアパック」を全国展開!(PR TIMES)
大手管理会社だからこそ提供できる本サービスの特徴として、まず全国ネットワークを活かしたスケール展開が挙げられる。エイブルは東海エリアの直営店舗でトライアルを実施し、運用体制を整えたうえで全国展開に踏み切っており、地域ごとに異なるニーズに対応できる体制が整っている。
また、管理物件を活用して貸主・オーナー双方の安心設計を行っており、高齢者入居時の「事故・孤独死・家賃滞納」といったリスクを、見守り機器+保証制度の仕組みによって軽減できる点が、一般的な物件紹介サービスとは一線を画す。さらに、契約・管理・サポートを一気通貫で提供できる強みもあり、入居後のフォローや継続的なサービス提供においても信頼感が高い。
とはいえ、こうしたサービスが広がりつつある一方で、賃貸市場全体では依然として高齢者の部屋探しに大きな課題が残る。高齢者は「入居を断られやすい」という深刻な社会的問題を抱えており、貸主側が「高齢=滞納リスク・孤独死リスク・手続き負担」といった不安から申込みを敬遠するケースはいまだに後を絶たない。
さらに、高齢者自身も物件選びに不安を抱えている。バリアフリーの有無、緊急時に頼れる仕組み、支払い能力の保証、入居後のサポート体制など、生活に直結する課題は多岐にわたる。そのため、物件を紹介するだけでは十分とはいえず、生活全体を見据えた支援が求められているのが現状だ。
今後の高齢者向け賃貸市場においては、物件選定から契約、入居後の見守りまでを一体的に支える仕組みを、業界全体としてどのように広げていくかが重要になるだろう。高齢者が安心して住まいを選べる環境を整えることが、これからの賃貸業界に問われている。
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