出たとこ勝負を楽しむ。陶芸作家「栗原良平」さん
新潟市内にある栗原良平さんの工房には、色も形も大きさも少しずつ違う作品が並んでいます。どれも最初から完成形を決めず、実験しながら作っている「一品物」です。「そうか、こう仕上がったのか」という偶然と嬉しい誤算を楽しみながら、大学時代からずっと陶芸を続けている栗原さんにお話を聞きました。
栗原 良平
Ryohei Kurihara
1986年生まれ、新潟育ち。多摩美術大学工芸学科の陶プログラムを卒業後、関東の陶芸教室に勤務。20代後半に新潟へ戻る。陶芸作家として活動しながら、現在は一般企業に勤務。
そのとき、偶然に生まれたものを
おもしろがる。
――栗原さんは、美術大学で陶芸を専攻されたんですよね。
栗原さん:最初はグラフィックデザインの道に進みたかったんですけどね。美大受験のための予備校で、粘土造形が肌に合っていると感じたんです。絵を描いたりいろいろしてみた中で、制作過程が見える粘土造形がおもしろくて。それで多摩美術大学の「陶プログラム」を目指しました。
――大学時代はどんなものを制作したんですか?
栗原さん:美術を学ぶ大学なので、コンセプトを決めて、それに沿ったアート作品を作っていました。玄関に置いてある亀は、大学時代に作ったものです。でも当時は、表現というか完成させることに精一杯で。「アートを作っている」という感覚はあまりなかったかも。ただ内側からこんこんと出てきたものを形にしていきたい、と思っていました。
――その姿勢が今のものづくりにつながっているんでしょうね。
栗原さん:陶芸は職人の世界。職人は決まった材料で同じものをたくさん作ります。でも私はそれが得意ではなくて。自分を「やきもの作家」とお伝えするんだけど、「陶芸家」ではないと思っているんです。たとえば、ほとんどの陶芸家さんは、定番の釉薬(陶器の表面を覆う材料)を持っているんですけど、私は釉薬や土を少しずつ変えながら作品を作るんです。製品を作るのではなく、「一品物を作ること」に楽しさを感じます。
――それで陶芸家ではない、とおっしゃるんですね。
栗原さん:実験しながら、ものを生み出しています。工房にいくつも作品を並べていますが、すべてそのときでしか表現できない色や形をしています。最初から「こう作って、いくらで売ろう」と想定していれば「製品」になり得ると思うんですが、そうではなくて。そのときに生まれたものを、おもしろがりながら形にするスタンスでいます。
入り口に置かれている学生時代の作品。
作家あり会社員。
ときどきちょうどいい居場所も作る。
――関東の陶芸教室に勤務された後、新潟に戻られます。
栗原さん:今でこそ制作場所を構えていますけど、当時は陶器を焼く場所もなくて。陶芸教室で設備を借りて作品を作っていました。
――新潟に戻られたばかりの頃は?
栗原さん:しばらく「作家という名のフリーター」でした。それでも制作時間は限られるし、お金になるものを作らなくちゃいけない、って気持ちがありました。
――陶芸を続けながら、現在のお仕事をされるようになったのはどうしてでしょう?
栗原さん:以前勤めていた親族の会社がなくなってしまって、「困ったな」というときに、今勤めている会社にアルバイトとして働きはじめて、後に正社員になりました。風通しがよく、本業以外の取り組みにも理解がある会社なので、ありがたく思っています。私は単独でコミュニケーションを図るのが苦手なので、勤め先の人間関係から人脈が広がっている感じがすごくあります。
――陶芸作品はどうやって販売しているんですか?
栗原さん:誰かの影響を受けて、人との関係性のなかでものづくりをする方がしっくりくるので、展示販売やネット販売はしていません。レストランのシェフから直接「こんな器がほしい」と相談を受けて作ることが多いです。あとはご近所さんからの依頼で制作したり、たまに陶芸教室を開いたりもします。
――お勤めと作家活動を両立するための工夫はありますか?
栗原さん:定時内にしっかり成果を出して、残業をしないように意識しています。自分の時間をちゃんと確保するんだ、という意識があるので、仕事にはよい影響がありますね。いくつか居場所を持てている感覚も心地よいです。
――そういえば、居場所にまつわる取り組みもされているそうで。
栗原さん:創造のサードプレイス「KONERU」ですね。学生と社会人の「ちょうどいい場所」を作りたくて、私の工房を活用しています。月に1度、粘土をこねながら、いろんな話をするんです。評価も否定もされない場所で粘土を媒体に自分の心をほぐしながらコミュニケーションを取る、マインドフルネス的な要素のある時間です。
――「KONERU」では、どんな発見がありましたか?
栗原さん:参加者が作っていたものが、だんだんと開放的になっていく様子が見えたことがあって。作り手としては興味深い変化でした。案外、本人は変化を自覚していないもので、お互いの気づきを伝え合い、新しい発見につながることがあります。
陶芸がもたらす偶然。
自由だから続く。
――栗原さんは学生時代からずっと陶芸を続けていらっしゃいます。継続の秘訣はなんでしょう?
栗原さん:学生時代から「続けること」を意識していました。大学の工芸学科にはガラスや金属のコースもあって、かっこいいし人気が高かったんですが、制作の場が学校しかなかったんです。その点、陶芸はやる気があればどんな環境でもできるかな、と思っていました。結果として今も続けられていることには、とてもほっとしています(笑)
――最初から続けることが頭にあったなんて、すごい。続けるって、難しいですもん。
栗原さん:自由だから続けられるんでしょうね。土も釉薬も、膨大な種類があります。窯から出してみて、想像とまったく違う仕上がりになっていることもあってその過程が、いちばんおもしろいです。「自分でコントロールして完璧なものを作る」より「作ってみたら、こうなった」という偶然性に魅力を感じます。
――ということは、生みの苦しみはあまりないですか?
栗原さん:それはそれであるんですよ。そもそも陶芸は産業なので、土を作る人、釉薬を作る人、成形する人、絵付けをする人、窯で焼く人と分業で成り立っています。それをひとりで担っているんだから、そりゃそうですよね(笑)
――ちなみに、今まで陶芸をやめようと思ったことは?
栗原さん:作業から遠のくことはあっても、「手を動かさないと」と使命感が湧いてくるので、その勢いに乗って制作をします。なんとか嬉しい偶然に遭遇して、テンションを上げるんですよ。
栗原良平