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外回転術で逆子はどれくらい頭位にもどる?検討時期や注意点について

ミキハウス

外回転術で逆子はどれくらい頭位にもどる?検討時期や注意点について

妊娠34〜36週ごろになっても赤ちゃんが逆子のまま。

そんなときに耳にすることがあるのが、「外回転術(がいかいてんじゅつ)」という選択肢。おなかの上から赤ちゃんの向きを変えて、頭位にもどすための医療的な処置です。

一方で、外回転術については「危なくないの?」「昔は勧めないと言われていたのでは?」という不安や疑問もつきまといます。

そこで今回は、国立成育医療研究センターなどの公的情報と国内外の研究、そして産婦人科医・吉村泰典先生への取材をもとに、外回転術とはどんな処置なのか、どこまで安全で、誰にとって意味のある選択肢なのかをまとめていきます。

【この記事でわかること】Q. 外回転術って、そもそも何をする処置ですか?
A. 妊娠後期に逆子の赤ちゃんを、おなかの上から医師が手でゆっくり回して「頭が下」の姿勢に戻す処置です。超音波で位置を確認しながら、胎児心拍をモニターしつつ行います。
  
Q. 施術中は痛くないの?
A. 麻酔(脊椎/硬膜外)と子宮収縮抑制薬を併用する体制では、痛みはかなり抑えられ、感じるのは“ぐっと押される圧迫感”が中心です。処置後に一時的な張りやだるさが出ることはありますが、多くは数時間〜翌日に落ち着きます(麻酔の有無は施設で異なるため事前に確認を)。
  
Q. 成功率はどれくらい?
A. おおむね半数〜6割程度が頭位にもどると報告されています。施設や条件によっては7割前後まで成功率が上がったという報告もあります。
  
Q. 危なくないんですか?
A. 一時的な胎児心拍の変化など“軽いトラブル”は数%ありますが、多くは自然に回復します。緊急帝王切開が必要になるような重い合併症は、海外の大規模な報告では約0.5%(200人に1人程度)とされており、適切な体制があれば全体として「安全性は高い」と評価されています。
  
Q. 誰でも受けられるんでしょうか?
A. いいえ。前置胎盤や重い合併症がある場合、多胎妊娠などでは行えません。前回帝王切開の既往がある場合なども含め、「適応になるかどうか」は個別に医師が判断します。
  
Q. 受けたほうが“正解”ですか?
A. 外回転術はあくまで「選択肢のひとつ」です。予定帝王切開も、現在の日本では安全性の高い“正解ルート”です。本記事では、両方を理解したうえで自分たちに合う選択を考えるための材料を整理します。

外回転術とは? おなかの上から赤ちゃんを「頭位」に戻す処置

まずは、外回転術そのもののイメージを整理しておきましょう。

「外回転術というのは、妊娠後期に逆子(骨盤位)になっている赤ちゃんを、おなかの上から医師が手でゆっくり回して、頭を下に向けてあげる処置です。超音波で赤ちゃんや胎盤、へその緒の位置を確認しながら、胎児心拍のモニターも付けて、安全を確認しつつ行います」(吉村先生)

一般的な流れは、おおまかに次のようなイメージです。

1.赤ちゃんの位置・胎盤の位置・羊水量などを超音波で確認。
  (おなかの張りをやわらげる薬〈子宮収縮抑制薬〉を使うことも)
2.必要に応じて腰からの麻酔(硬膜外麻酔・脊椎麻酔など)で痛みや緊張を軽くする。
3.医師が両手でおなかをゆっくり押しながら、赤ちゃんを一方向に回していく。
4.処置後もしばらく胎児心拍をモニターし、問題がないかを確認する。

処置そのものにかかる時間は数分〜10数分程度ですが、前後の準備や観察を含めると、数時間かけて行うイメージです。

昔からある手技だが、かつては「危ないのでは」と敬遠されていた

実は、外回転術そのものは決して新しい方法ではありません。

吉村先生もこう指摘します。

「古くから世界中で行われてきた歴史ある手技で、近年は『超音波で位置を確認しながら』『胎児心拍をモニターしながら』など、現代的な安全管理のもとで行う外回転術の有効性が、海外でも数多く研究されてきました。一方、日本をふくむ多くの国では、帝王切開の安全性が高まったこともあり、長いあいだ外回転術は“あまり積極的には行われてこなかった”という経緯があります。最近になって、国立成育医療研究センターをはじめとした一部の施設が、麻酔やモニタリングを組み合わせた体制を整え、安全性に配慮しながら外回転術に取り組み始めています。ただし、いまでも“やっていない”“まだ始めていない”施設のほうが多数派だと思います」(吉村先生)

外回転術が長く「わざわざやる必要はないのでは」と扱われてきた背景には、帝王切開の安全性が高まったことがあります。「逆子は予定帝王切開」という流れが世界的に主流になり、「それなら無理に赤ちゃんを回さなくても、最初から安全な帝王切開をすれば良い」という発想が広がっていきました。

一方で近年、「外回転術を適切に行うことで、帝王切開の回数そのものを減らせる」というデータも蓄積してきました。外回転術を試みたグループでは、〈逆子のまま出産に至る割合が減る〉〈予定帝王切開・緊急帝王切開の合計が減る〉といった結果が報告されており、海外のガイドラインでも「条件が整えば、希望する妊婦さんには外回転術を提案する」方向にシフトしてきています。

「超音波モニタリングなどの技術進歩もあり『安全性に配慮しながら外回転術に取り組んでみよう』という潮流が、ここ数年で少しずつ出てきているのです」(吉村先生)

国立成育医療研究センターのように、麻酔科医・小児科医が待機した状態で、手術室に準じた環境のもと外回転術を行っている施設も登場しています。まだ全国的に一般化したとは言えませんが、「どうしても下から産みたい」という希望に、医学的に可能な範囲で応えようとする新しい取り組みが始まっている段階と言えるでしょう。

外回転術はどんな人に向いている? 「適応」と「向かないケース」について

では、外回転術はどんな妊婦さんに向いていて、どんな場合には行えないのでしょうか。細かい適応・禁忌は施設ごとに微妙に異なりますが、代表的な考え方を整理しておきましょう。

■外回転術の対象になりやすいケース(代表例)
✓妊娠35〜36週ごろの単胎妊娠(赤ちゃんが1人)
✓分娩予定日が近づき、まだ逆子(骨盤位)のまま
✓羊水量が極端に少なくない
✓胎盤の位置に大きな問題がなく、前置胎盤ではない
✓胎児心拍モニター上で、赤ちゃんの状態が安定している

■外回転術が「向かない」または原則行わないとされることが多いケース(代表例)
✓胎盤が子宮口にかかっている前置胎盤
✓妊娠高血圧症候群などで母体の状態が不安定
✓すでに陣痛が強く始まっている
✓重い胎児発育不全や、明らかな胎児異常がある
✓多胎妊娠(双子・三つ子など)

「前回の妊娠で帝王切開をしている場合など、外回転術を行ってよいかどうか判断が分かれるグレーゾーンもあります。海外では『前回帝王切開でも、慎重に行えば外回転術は可能』とする報告もあり、日本でも施設ごとの方針に差があるところです。いずれにせよ、『自分の状態でそもそも適応になるのかどうか』は、主治医の先生に個別に確認してもらう必要があります」(吉村先生)

麻酔をしたら痛くない? 外回転術の“受け心地”

もうひとつ気になるのが、「実際にはどれくらい痛いのか」というポイントです。

「国立成育医療研究センターなどで行われている外回転術は、原則として麻酔や子宮収縮抑制薬を併用し、“痛みと緊張をできるだけ減らした状態で行う”やり方です。下半身の感覚をやわらげる脊椎麻酔や硬膜外麻酔を使うことで、痛みはかなり抑えられます。多くの方は“おなかをぐっと押される圧迫感”として感じる程度です」(吉村先生)

麻酔がしっかり効いていれば、「痛み」というより「押されている違和感」「ググッと動かされる感じ」と表現されることが多いようです。

一方で、処置後に一時的な張りやだるさを感じる方もいるそう。

「外回転術のあと、しばらくおなかの張りが出たり、筋肉痛に近い重だるさが出たりすることはあります。ただ、多くは数時間〜翌日にかけて落ち着きますし、必要に応じて鎮痛薬を使ってコントロールできます。むしろ注意してほしいのは、『急に強い痛みが続く』『出血がある』『胎動がはっきり減った気がする』といったサインで、そのような場合には、すぐに担当の医師や看護師に相談していただきたいですね」(吉村先生)

外回転術と予定帝王切開 どう比較して考えればいい?

では、逆子のときに「外回転術を受ける/受けない」を、どう考えればよいのでしょうか。外回転術の大きなメリットは、うまくいけば頭位にもどり、経腟分娩を目指せる可能性が高まることです。結果として、帝王切開を避けられるケースも増えます。

一方で、成功率はおおむね半数前後(条件がよいともう少し上がる程度)にとどまります。たとえ頭位にもどって分娩できることになっても、その後の経過によっては、結果的に帝王切開になることもあります。また、ごく少数ではありますが、処置に伴う合併症や緊急帝王切開のリスクがあることも事実です。

「外回転術は、予定帝王切開という、すでに安全性の高い選択肢があるなかで、〈できれば経腟分娩のチャンスを残したい〉〈そのためなら、追加の処置や少しのリスクも受け入れたい〉と考える人に対して、もうひとつ選べる道を増やすための選択肢です。『とにかく帝王切開は避けたいので、多少の手間やリスクをとってでもトライしたい』のか、『帝王切開でも構わない』のか。自分と赤ちゃんの健康状態、病院側の経験と体制、それぞれのメリットとデメリットを整理しながら、決めていくのが現実的だと思います」(吉村先生)

どの道を選ぶにしても、「自分たちで納得して選んだ」と思えることが、出産に向かう心をいちばん穏やかにしてくれるはずです。赤ちゃんと出会える日は、もうすぐそこまで来ています。あなたと赤ちゃんにとっていちばん納得できる形で、その瞬間を迎えられますように。

【監修】吉村泰典(よしむら・やすのり)慶應義塾大学名誉教授 産婦人科医

1949年生まれ。日本産科婦人科学会理事長、日本生殖医学会理事長を歴任した不妊治療のスペシャリスト。これまで2000人以上の不妊症、3000人以上の分娩など、数多くの患者の治療にあたる一方、第2次~第4次安倍内閣では、少子化対策・子育て支援担当として、内閣官房参与も務める。「一般社団法人 吉村やすのり 生命の環境研究所」を主宰。

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