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【静岡カントリー浜岡コース&ホテルの「乾久子展 ~n次元の世界~」】「くじびきドローイング」で知られるアーティストの、踏み固めた足跡を見た。動的な作用が伝わってくる

アットエス

静岡新聞論説委員がお届けするアートやカルチャーに関するコラム。今回は御前崎市の静岡カントリー浜岡コース&ホテルで6月28日に開幕した美術家乾久子さん(浜松市)の個展「乾久子展 ~n次元の世界~」を題材に。
1958年、藤枝市で生まれ1990年代後半から浜松市を拠点に創作を続ける乾久子さんの回顧展。と、言ってしまっても差し支えないだろう。くじ引きで出た言葉から連想する絵を描く「くじびきドローイング」で知られる乾さんの、1990年代以降の創作の軌跡を追う。

乾さんは1月に書籍「ことばのまわり 10年目を歩く」(荒蝦夷)を発刊し、3月には地元で刊行記念展を開いたばかり。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の発生から10年目の2021年に計7回、福島県を訪れた「旅日記」である「ことばの-」の作品の記憶がいまだ鮮明なうちに、自身のキャリアを振り返る個展に挑んだ。さぞや準備がたいへんだっただろう。

さまざまなクリエイターが、時間の経過と共に表現を変えていくのは、不自然なことではない。むしろ、変わらない方が珍しい。現在は社会や観覧者を巻き込むアートを得意とする乾さんも同様で、30年前の作品はキャンバスを支持体にした平面が主体だった。

一番奥の一室に飾られた、1990年代後半の作品群には息をのんだ。太い筆で描いたらせん状の線が、突起物のようなオブジェクトを作り出す。見え方はバネというかドリル、というか。曲線の一つ一つが動的で、それぞれのオブジェクトにも「方向」が与えられている。2次元の画面の中に3次元的な「方向」と、動こうとする意志を感じる。

別の部屋に入ると、オイルバーを使った巻物状のドローイングが空間を埋め尽くしている。2010年代以降のライブペインティングの記録である。ブルーと紅の2色が、地を這い、壁を伝う。あちこち眺めていると、細い線そのものが、意志を持って四方八方に動き回っているように見えてくる。

キャンバスのオブジェクトも、巻物の線も、恐らく特定の対象を描こうとはしていない。だが、帆布や紙に固着されまいとする、動的な作用が強烈に感じられる。それは、スケッチブックに描かれた無数のドローイングにも共通する。

乾さんの作品をたくさん見てきたつもりだったが、こうした視点を得たのは初めてだった。そうか。首尾一貫しているのは「動的な作用」か。

(は)

<DATA>
■静岡カントリー浜岡コース&ホテル(3階カルチャーフロア)「乾久子展 ~n次元の世界~」
住所:御前崎市門屋2070-2
開廊:午前11時~午後6時(月・火曜休廊)
観覧料金:無料
会期:8月3日(日)まで

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