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ペットと一緒が「当たり前」 釜石で学び、考える備え 同行避難の“カタチ”

かまいし情報ポータルサイト〜縁とらんす


 災害時にペットを連れて逃げる「同行避難」について考える催しが3日、釜石市大町の市民ホールTETTOであった。環境省のガイドラインでは推奨されているが、「認識の低さ」があってか課題とされるケースが多いのが実情。行政、飼い主、地域の人たちへの理解を広げようと、地元の動物愛護団体「人と動物の絆momo太郎」が主催した。災害救助犬の育成などをする認定NPO法人日本レスキュー協会(本部・兵庫県)が共催し、セラピードッグと触れ合いながらいざという時のための備えを学んだ。

 「迷わず、ためらわず同行避難を」。同協会の動物福祉事業責任者、辻本郁美さんが講話で、来場者に呼びかけた。2024年1月の能登半島地震や今年2月に発生した大船渡市の山林火災などを例に、同行避難の方法や心構えを解説。重要なことは、「公助」としての行政側の体制づくりと、「自助」としての飼い主の備えで、「車の両輪のように考えることが重要だ」と強調した。

 自治体が避難所にペットを受け入れるための仕組みを整えるとともに、飼い主も▽ペット用の非常用品を備えておく▽ハウストレーニング(ほかの犬や人に対し、ほえないなど)▽ペットとともに避難する際の行動は事前に決めておく―という3つのことが必要になると指摘。「ペットは大事な家族。備えが不十分で避難できないとならないよう、災害が起きていない今の時期に必要なことを調べ、一緒に逃げられるようにしてほしい」と求めた。

ペット避難につなげるためにはケージに入る習慣づけが大事


 辻本さんはハウストレーニングの一例として、ゲージに入る習慣づけをセラピードッグとともに実演。入ったら、えさをあげるといったコツを紹介した。日常の中で取り入れることで「ケージ=安心安全な場所」と認識しリラックスできるとし、慣れない場所でも大きなストレスを感じずに過ごせるようになると解説。来場者も実際に体験してみたりした。

セラピードッグと触れ合いながら同行避難を学ぶ子どもたち


 パネル展示では、momo太郎など民間有志が行った大船渡市の山林火災での活動を紹介。当初は避難所でペットを受け入れなかったというが、有志らが行政に働きかけて同伴可能な避難所が開設されたこと、開設場所が離れていたことなどから同行避難を断念した飼い主もいたため民間有志が預かった経緯などを分かりやすく示した。

大船渡市の山林火災での活動を紹介するパネル展示


備えが大事なのは人もペットも同じ。非常用品を紹介


 津波の恐れがある際に避難が必要な地域で愛犬と暮らす鈴木祐美さん(41)は、いざという時にすぐ逃げられるよう必要な準備を知りたくて来場した。東日本大震災時には同行避難は無理と考え、後ろ髪を引かれる思いで連れずに避難。今も「同行避難ができるのか自体、分からない」ため、もし災害が発生したら愛犬と一緒に車中泊と考えている。辻本さんの「ためらわずに」との言葉を受け、「自助について家族と考えたい」と、ペットの非常用品などの展示を熱心に見つめた。

 マルシェ「かまいしワンにゃんフェス」も同時開催。猫や犬をあしらった手芸品や菓子、ペットの占いなど約30店が並んだ。同行避難への理解を広げるもう一つの要素とされるのが「共助」。飼い主同士、そして行政や地域住民との助け合いは必要となり、イベント化することで参加の間口を広げ、「知ってもらうための情報交換の場」「交流の機会」とした。

同時開催のマルシェ。動物好きが交流を楽しんだ


セラピードッグのモフモフ感、愛くるしさにみんな笑顔


 「気持ちを切り替えるきっかけに」と話すのは、momo太郎の鈴子真佐美代表。ペットの同行避難は国で推奨されているものの、全国的に避難所でペットの受け入れは拒否される事例はあり、「行政の認識は低い。飼い主側にもいる」と感じている。

 そして地域によって温度差もあり、隣町の大槌町ではペット同行避難のため避難所でのスペースを確保する動きは進んでいるが、釜石市では検討が始まり模索の真っ最中。同団体など有志らは行政側に要望する一方で、鳴き声や臭いといった衛生上の問題などの課題をやわらげるため、飼い主が普段の生活でできるペットのトレーニング法を伝える活動も続ける。

 鈴子代表は「ペットは家族のパートナー。一緒が当たり前。災害時、被災地域に残したペットのもとへ戻らないことは人の命を守ることにもなる」と話し、ペットを飼っていない人も含め広く知ってもらうため、「こつこつと取り組みを進めなければ」と先を見据えた。

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