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わたせせいぞう「『鉄腕アトム』掲載誌を抱えていた少年に誇れる」ーー宝塚・手塚治虫記念館での企画展にて『ハートカクテル』原画など約100点を展示

SPICE

企画展のために「アトムのロマン」を描き下ろした、わたせせいぞう

わたせせいぞうの世界展~手塚ワールドとの出会い~ 2026.3.6(FRI)~6.7(SUN) 宝塚市立手塚治虫記念館

漫画『ハートカクテル』などで知られるイラストレーターで漫画家、わたせせいぞうの作品約100点を集めた企画展『わたせせいぞうの世界展~手塚ワールドとの出会い~』が、兵庫県宝塚市の市立手塚治虫記念館で6月7日(日)まで開かれている。

神戸市出身のわたせは大学卒業後、会社員として働くかたわら漫画家デビュー。1983年に代表作『ハートカクテル』の連載を始めたことを機に創作活動に専念した。以降、恋愛中の男女をテーマに、企業のポスターやカレンダーなど幅広い分野でイラストを手がけている。

■「手塚ワールドと一緒に展示されることがうれしい」

手塚治虫氏への思いを語るわたせせいぞう

手塚治虫記念館は、日本の漫画界の巨匠・手塚治虫が幼少期から青年期にかけて約20年間を過ごした宝塚市に、1994年に開館した。館内には、『鉄腕アトム』や『ブラック・ジャック』などの代表作を中心に、ゆかりの品や映像資料などを展示。アニメ制作を体験できる「アニメ工房」や、約2,000冊の手塚作品を自由に閲覧できる「ライブラリー」も備え、子どもから大人まで幅広く楽しめる内容となっている。

3月5日(木)に開かれたメディア向け内覧会には、わたせが登場。小学生時代、手塚治虫の代表作『新寳島』や『鉄腕アトム』に触れ、漫画の世界に魅了されたといい、「アトムの載った漫画雑誌をうれしそうに抱えていたあの時の少年が、今の僕を見てどう思うだろうか。それを想像すると、大変うれしく、幸せです」と笑顔で語った。

同展のため、わたせは新作「アトムのロマン」を約1か月かけて描き下ろした。バラに囲まれた記念館の前で、白馬に乗るカップルを描いたもの。『鉄腕アトム』や『ブラック・ジャック』など手塚作品の人気キャラクターも配されているが、「正面は手塚先生が描くものを」との敬意から、あえて後ろ向きに表現したという。

「手塚先生が描く馬が大好き。しなやかに飛んだり跳ねたりするあの馬を描くのは本当に難しいが、先生の描く馬を習って描いた」とわたせは振り返る。出版社の記念パーティーで手塚とあいさつを交わしたことはあるものの、仕事を共にする機会はなかった。ただ2015年には阪急電鉄のラッピング電車で、宝塚線に手塚キャラクター、神戸線にわたせ作品が描かれ、線路上で“初共演”を果たした縁もある。

あいさつ文にサインを入れるわたせ

企画展にあたり同館を訪れ、改めて手塚作品に触れたわたせは、「僕の作品はカップルや大人を描くイラスト、ストーリーが多い。手塚ワールドと一緒に展示されることを大変うれしく思う」と喜びを語った。

■4つのゾーンで構成、原画など貴重資料約100点展示

会場は4つのゾーンで構成される。

ZONE1「イントロダクション わたせせいぞう」では、わたせと宝塚・神戸との関わりを紹介。新作「アトムのロマン」のほか、阪急電鉄のラッピング列車の元絵なども展示されている。

阪急電鉄のラッピング列車の元絵なども展示

ZONE2では代表作『ハートカクテル』を特集。1980年代に人気を博したオールカラー作品で、都会に生きる男女の恋愛や日常を描いた短編ストーリーが特徴。鮮やかな色彩とデザイン性の高い構図でも知られる。「当時は、色にこだわる漫画が少なく、印刷所や編集者は大変だったと思う。色を指定してオーダーするものの、思い通りの色が出ず苦労したが、アメリカ西海岸への憧れから、アメリカナイズドされた色彩を取り入れた」と製作の背景を明かす。

わたせの代表作『ハートカクテル』

ZONE3では「漫画家 わたせせいぞう」に焦点を当て、初期のギャグ漫画『新漫画昆虫記』『ジョークボックス』などのラフスケッチや原画など貴重な資料を展示。同じ早稲田大学出身の漫画家、園山俊二から「昆虫だけでなく、男と女を描きなさい」とアドバイスされて作風を変えたといい、以来、「男女の恋愛している楽しい時代を全面に描いてきた」という。

デビュー初期のギャグ漫画の貴重な原画も展示

ZONE4では、「イラストレーター わたせせいぞう」としての活動に着目し、企業広告のポスターやカレンダー、雑誌の表紙などを展示。作品群からは、当時の流行やライフスタイルの変遷もうかがえる。

色彩が鮮やかで美しいわたせのイラスト

土産コーナーでは、『ハートカクテル』の単行本や作品集や関連グッズなどが並び、来場者の関心を集めている。

グッズも充実

手塚への敬意と、わたせが描くロマンが交差する同展。日本の漫画文化の奥行きを感じながら、来場者それぞれの記憶に寄り添う時間となりそうだ。

入り口には、新作「アトムのロマン」のフォトパネルも登場

取材・文・撮影=Nagao.M

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