<ツバメウオ>は意外と美味しい! “でかい鰭”が特徴的な魚を実際に食べてみた
ツバメウオは主に暖かい海に生息する大きな鰭をもつ魚です。
筆者は2009年にこのツバメウオを入手し食べてみたのですが、お世辞にも美味しいものではありませんでした。
しかし、インターネットなどでは「ツバメウオは美味しい」という論調を見かけます。
そこでリベンジしてみたくなり、新鮮なツバメウオを新たに入手し、実際に食べてみました。
さて、その味はいかに?
ツバメウオってどんな魚?
ツバメウオ Platax teira (Fabricius, 1775)はスズキ系・マンジュウダイ科・ツバメウオ属に含まれる魚です。
体高は高く、非常に大きい背鰭と臀鰭が目立っています。
色彩は灰色で、体には黒い横帯がある程度で、黄色っぽい腹鰭が特徴的ではあるものの、あまりカラフルとはいえませんが、熱帯魚らしい見た目をした魚といえるでしょう。
ツバメウオによく似た魚たち
ツバメウオの仲間は分類学的にどのグループに含まれるのか、なかなか定まっていない魚類でした。
スダレダイ科とされたり、独自のツバメウオ科に含められたりしてきましたが、近年はマンジュウダイ科の中に含められています。
マンジュウダイ科とは
マンジュウダイ科 Ephippidae の魚はインド-中央太平洋、東太平洋、大西洋にかけて分布しており、これまで8属15種が知られています。
このグループは、背鰭棘数が5~9、18~40軟条、臀鰭は3棘15~28軟条であるなどの特徴がみられるほか、尾鰭の形は多くの種で二重湾入形となっています。
英語ではSpadefishと呼ばれていますが、Spadeとはシャベルによく似た「鋤(すき)」という農具のこと。シロガネツバメウオという種などは、シルエットがこれに近いことからきているのではないかと思われます。
マンジュウダイ科の標準和名となっているマンジュウダイについては、日本からの記録も一応あるのですが、国内においては大変珍しい種です。日本ではツバメウオ属の魚がこの科の代表的な種といえるでしょう。
また以前、ツバメウオ属の魚はスダレダイ科に含められたこともありました。というよりはスダレダイ科の学名が Ephippidae とされていたこともあり、「現在マンジュウダイ科という標準和名で呼ばれる科の中にスダレダイ属の魚が含められていて、科の標準和名もスダレダイ科とされていたが、そこからスダレダイ属が分離して、科の標準和名も変わった」という解釈が正しいのかもしれません。
現在科の標準和名でスダレダイ科とされているものは、スダレダイとユウダチスダレダイおよびアフリカ産の1種の計3種からなるスダレダイ属のみを含み、科の学名は Drepaneidae となっています。
ツバメウオとよく似たナンヨウツバメウオ
マンジュウダイ科の代表的なグループであるツバメウオ属魚類は5種が有効とされています。
日本においてはこのうちの4種については標本に基づく記録があり、もう1種も水中写真が撮影されています。その中でもよく知られているのはこのツバメウオと、ナンヨウツバメウオです。
ツバメウオは日本の広い範囲に見られ、新潟県以南の日本海岸、北海道釧路以南の太平洋岸から琉球列島、小笠原諸島まで分布し、海外では朝鮮半島、インド-西太平洋、そして完模式標本が得られた紅海にまで分布しているとされましたが、2006年3月にはトルコの地中海沿岸でも採集されています。
おそらくスエズ運河経由で紅海からやってきたものなのでしょう。
大きな黒色斑で見分けられる
ツバメウオの特徴としては腹鰭基部後方に大きな黒色斑があることで、日本産のほかのツバメウオ科魚類と見分けられます。
ただし、この個体ではやや小さいためか、あまり明瞭なものではありません。
ツバメウオ属のなかでツバメウオに次いで数が多いものがナンヨウツバメウオ Platax orbicularis (Forsskål, 1775)という種です。
「ナンヨウ」という名前がありますが、幼魚は岩手県、茨城県以南の太平洋岸、鳥取県、福岡県津屋崎などでも確認されています。成魚は主に琉球列島のサンゴ礁域に見られ、海外ではインド-中央太平洋に広く分布しますが、ハワイ諸島にはいません。
ナンヨウツバメウオの成魚はツバメウオによく似ているのですが、ツバメウオの頭部前縁は凹まないのに対して、ナンヨウツバメウオの成魚では若干凹みがあります。
またツバメウオでみられる腹鰭基部後方付近の大きな黒色斑は、ナンヨウツバメウオでは見られません。
このほか、ナンヨウツバメウオの体側には、小さな黒色点が見られることも多いのも特徴のようです。
ナンヨウツバメウオの幼魚は全身が茶褐色ないし鮮やかなオレンジ色で、枯葉に擬態していることがよく知られています。体側には青白く輝く斑点があり、この特徴で他の日本産ツバメウオ属魚類とは見分けることが可能です。
日本にはこのほかにもミカヅキツバメウオとアカククリという2種がよく知られており、このほか水中写真でのみバタビアツバメウオの幼魚が沖縄県石垣島および西表島から知られています。
ツバメウオを食べてみた
筆者は過去にもツバメウオを入手し、食べたことがあります。
2009年のことで、かなり大きく脂がよくのった個体だったのですが、妙なにおいがあり、あまり美味しいものではありませんでした。もしかすると、鮮度がいまいちだったかもしれません。
しかし、実際にツバメウオを食べた人の話を見聞きすると、実は美味しい魚であるようで、実際に台湾では養殖もされているようです。
筆者も、2025年9月に長崎県産のツバメウオを入手する機会に恵まれたので、実際に食べてみました。
今回、我が家にやってきたツバメウオは2匹。しかし1匹目はツバメウオの特徴的な鰭がぼろぼろになってしまっていたので、1匹に2匹分の身を乗せてお造りにしました。
身はやや濁った、少し桃色っぽくも見えるような白色でしたが、そこそこ脂がよく乗っており、また、前回の経験から懸念された臭みなどもまったくなく、かなり美味しかったものでした。
今回は刺身で食べたのですが、海外では塩焼きなどでも食べられているらしく、次回は塩焼きにもチャレンジしたいです。また食べてみたいと思います。
ツバメウオは美味しい!
筆者は従来の経験からツバメウオはイマイチ美味しくないというイメージをもっていましたが、今回新鮮な個体を入手することができ、美味しく食べることができました。
機会があれば、先入観やイメージにとらわれず、いろいろな魚を食べてみてほしいと思います。
今回のツバメウオは、石田拓治さん(長崎市・マルホウ水産)よりご提供いただきました。ありがとうございました。
(サカナトライター:椎名まさと)
参考文献・参考URL
尼岡邦夫・仲谷一宏・矢部 衞.2020. 北海道の魚類 全種図鑑.北海道新聞社,札幌.
Bilecenoğlu, M. and M. Kaya, 2006. A new alien fish in the Mediterranean Sea – Platax teira (Forsskal, 1775) (Osteichthyes: Ephippidae). Aquatic Invasions. 1(2): 80-83.
小枝圭太・畑 晴陵・山田守彦・本村浩之編.2020.大隅市場魚類図鑑.鹿児島大学総合研究博物館.鹿児島市.
中坊徹次編. 2013.日本産魚類検索 全種の同定 第三版.東海大学出版会.秦野.
冨山一郎・阿部宗明・時岡 隆.1958.原色動物大圖鑑2巻.脊椎動物魚綱・円口綱,原索動物.北隆館,東京.