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【インタビュー】調査・整備・活用賞:全国唯一の北側鉄板張りを復元「福山城」(広島県福山市)

城びと

【インタビュー】調査・整備・活用賞:全国唯一の北側鉄板張りを復元「福山城」(広島県福山市)

城郭文化の振興に貢献した団体及び個人を顕彰する「日本城郭協会大賞」。第2回日本城郭協会大賞の「調査・整備・活用賞」に選定された「福山城」の天守外観復元についてと、受賞に際して城びと編集部で取材したインタビューをご紹介します!

<福山城の天守外観復元 〜全国唯一の北側鉄板張りを復元〜>

福山城は城郭自体は戦後の復元城です。2022年の「令和の大普請」の目玉として、かつて天守北側に張られていた黒塗り鉄板を復元。報道でも大々的に取り上げられ、全国に城郭の話題を提供した功績が評価されて「調査・整備・活用賞」を受賞。

福山城北側


ー「令和の大普請」の目玉として、天守外観復元に取り組んだきっかけを教えてください。

 福山城築城400年を2022年に迎えるにあたり、先人の歩みや大切にしてきた思いを改めて振り返り、市民の心を一つにする機会として捉えました。福山城をはじめ、市全体の歴史・文化資源等の価値を再認識し、「城があるまち福山」を市民全体の誇りとすることを基本方針として活動を開始しました。

 具体的には、2017年度から行政、経済界、文化財・伝統芸能・まちづくりなどの代表者等で構成する実行委員会を立ち上げ、記念事業の企画立案を行いました。

開幕祭の様子

ー官民ともに「福山藩の城下町としての町おこし」に熱心に取り組めた要因は何だとお考えでしょうか?

 福山市では、7年間にわたるプロジェクトを立ち上げ、時間をかけて機運の醸成を行ってきました。40件に及ぶ市民企画事業を含め7年間で180の事業を実施するなど、官民全体で福山城築城400年記念を祝う取り組みとして市民や歴史ファンに浸透していきました。これらの成果が達成された一つには、地域のシンボルとして、地域の誇りとして、城の役割が明確になり、全ての世代の人が参加しやすい状況において、取り組みが行われたことが大きいと考えます。

とんど祭りの時代行列

ー取り組みの一つとして「クラウドファンディング」を実施されました。

 はい。天守の大規模改修工事を「令和の大普請」と命名し、クラウドファンディングを実施し、返礼品として瓦や鉄板張りへ記名ができるイベントなどを行っています。クラウドファンディングでは、目標額の倍を超える寄附金をいただきました。

ー目標額の倍はすごいですね!「令和の大普請」では鉄の北面の壁が目玉かと思いますが、そのほか「ここにもぜひ注目してほしい」という点を教えてください。

 「令和の大普請」として、福山城内の各所に亘って整備事業を行っています。天守では、全国唯一といわれる鉄板張りの復元や、珍しい六角形の鉄砲狭間の復元のほか、内部の展示リニューアルを行い、体験や実物・映像展示を通して、福山藩の歴史を誰もが楽しみながら学ぶことのできる施設に生まれ変わりました。

 また、重要文化財筋鉄御門の漆喰塗の美装化や二之丸東側の景観向上として石垣を美しく見せるための整備事業、史跡内外に統一されたデザインの案内解説サイン整備を行い、全体として、福山城を訪れる人がお城の魅力を感じられるよう整備を行っていますので、これらの点についても注目をしていただきたいと思います。

 伏見城から移築されたと伝承される建造物は全国的にも数ある中で、梁に「松ノ丸東やくら」との刻印があり、全国唯一の移築の物証がある重要文化財「伏見櫓」の更なる価値づけに向けた調査を行っています。

ー更なる価値づけに向けた調査とはどのような調査ですか?

 具体的には、文献調査、石垣修復調査、柱・梁等の墨書の赤外線悉皆(しっかい)調査(※)、柱・梁等の痕跡拓本悉皆調査などを行っています。

(※)悉皆調査とは、対象となるものを全て調べる調査

 その結果、石垣には文献上江戸時代中期に修復を行ったとされる痕跡や、柱・梁には260点以上の目に見えない番付等の墨書が発見され、市民に公開しました。

ー福山城天守で使われていた鉄板が市民の方から寄附されたとお聞きしましたが、そのことを詳しく教えていただけないでしょうか。

 鉄板張りの復元において整備内容を検討し、広く市民へ福山城の古写真などの資料提供を呼びかける中で、ある市民の方から福山城築城記念事業に活用してほしいと、私有している福山城関連資料を寄附したいとの申し出をいただきました。実際に訪問し、確認すると、箱の中に来歴の書かれた空襲で焼失した福山城瓦と一緒に、鉄製の板が2枚収められていました。鉄板は、ねじ曲がり、傷み、剥離をしているなど、全体に損傷が進んでいて、表面には強い火を受けた痕跡が認められました。

寄贈された鉄板

 市では寄贈を受け、この2枚の鉄板の科学的分析を進め、福山城天守で使われていた鉄である可能性を確認しました。その上で、鉄が時を経て受ける経年変化や風合いの参考として、姫路城や名古屋城の鉄板張り建造物との比較を行うことで、福山城天守北側鉄板張りの復元方法を追求するうえで、貴重な資料として活用することができました。これは、鉄板張りの復元を望む市民の声が、このような結果を招き寄せたものと、印象深くとらえています。

ー寄贈された鉄板はどうされているのでしょうか?

 鉄板については、福山城博物館で展示していますので、ぜひ福山城へいらした際は、見ていただきたいです。

ー今後の目標を教えてください。

 築城400年記念事業を経て、全国的な注目も高まりつつあり、市民のシンボルとしての福山城の気運が高まっています。

 活用方策では、築城の日のイベントや、城泊の実施、ナイトキャッスル「鬼日向の城」(天守内で行う没入型演劇)といった、城を核としたコンテンツを充実していくとともに、市民が企画して実施する事業を通した活用を継続し、福山城の魅力を高めていくための事業を実施していきたいと思います。

福山城に泊まれる「城泊」

ー城びと読者へのメッセージをお願いします。

 生まれ変わって全国唯一の鉄板張りが復元された福山城にぜひお越しください。

ーありがとうございました!


(お話を伺って)

鉄板張り復元達成ばかりに目がいっていましたが、その裏に入念な準備と、官民一体となった情熱があったことに改めて感銘を受けました。市民の方がずっと大切に保管されてきた鉄板が復元方法を探る重要な手がかりとなったのは、心躍るエピソードですね。復元してゴールではなく、この先も市民の誇りであり続けるために、ずっと努力と情熱が続いていくのだと感じました。

日本城郭協会大賞とは

公益財団法人移行10周年を記念し、日本城郭協会が2022年に開始した城郭文化の振興に貢献した団体及び個人を顕彰する事業です。小和田哲男理事長を審査員長とする審査会にて「日本城郭協会大賞」を選定します。ほかにも、城郭城址の維持・整備を自主的に行うボランティア団体等を賞する「日本城郭文化振興賞」、城郭文化の普及に寄与した個人・団体を賞する「日本城郭文化特別賞」、さらに2023年から城郭管理者として特筆すべき成果を挙げた自治体等を「調査・整備・活用賞」として別枠で顕彰します。

執筆/城びと編集部 取材協力・画像提供/広島県福山市

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