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阿部サダヲと谷原章介を直撃取材、26年前の作品でも古さを感じさせない『ドライブイン カリフォルニア』いざ大阪へ

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阿部サダヲ、谷原章介 撮影=引地信彦

2004年の再演以来、新キャストで約18年ぶりに甦った『ドライブイン カリフォルニア』。その大阪公演が、いよいよ6月29日(水)にサンケイホールブリーゼにて開幕する。物語の舞台は、竹が名産の田舎町のドライブイン。そこで暮らす人々の悲しい因縁を、笑いととともに描き出す名作だ。東京公演に出演中の阿部サダヲと谷原章介に、作品の魅力や大阪公演への意気込みなどを聞いた。

阿部サダヲ

――松尾スズキさんが立ち上げたプロデュース公演「日本総合悲劇協会」(通称・ニッソーヒ)の第1作として、1996年に初演された本作品。改めて、今回の再々演に出演が決まった時のお気持ちから聞かせてください。

阿部:びっくりしました。僕は初演も再演も観ているんですけど、ニッソーヒには、比較的、僕らより大人な感じの方々が出演されている印象があって、遠い存在のように感じていたので。まさか自分がアキオ(ドライブイン カリフォルニアの経営者)をやる日が来るとは、思ってもみませんでした。

谷原:僕は嬉しかったですね。20年以上前になるのですが、『ここで、キスして。』(1999)というドラマで阿部さんとご一緒した時に、その芝居の引き出しの多さに圧倒されまして。そこから大人計画の舞台を観に行くようになって、またいつか阿部さんとご一緒したいと思っていたので、それがこういう形で実現して本当に嬉しいです。

――谷原さんは『ドライブイン カリフォルニア』もご覧になっていたんですか?

谷原:いえ、残念ながら観ていなくて。なので、最初にタイトルを聞いた時は、なんとなくイーグルスの「ホテル・カリフォルニア」的な西海岸をイメージしていました。

阿部:だいぶ違いましたね(笑)。

谷原:違いました(笑)。僕は、松尾さんのことも、怖い人だと思っていたんです。20代の頃、本多劇場で初めてご挨拶した時に、松尾さんが冷たい目で僕をちらっと見て、すぐに目をそらされたのがとても怖くて。でも、実際にお会いしたら全然そんなことはなくて、むしろ優しい人なんだなと、『ドライブイン カリフォルニア』をやりながら感じています。登場人物は、どこか欠けていたり、歪んでいたり、社会に適合できないような人達ばかりなんですけど、みんな誰かの辛さを受け止めて、逃げ場を作ってあげているような、とても優しいお話だなと思うから。

阿部:僕も改めて台本を読んだ時に、いい話だなぁと思いました。これを30代で書いた松尾さんは、すごいなと。僕の印象では、松尾さんの若い頃の作品は、最後に全員ドカーンと死んじゃうような破壊的なものが多かったように思います。僕なんか、最終的にバイクに改造されて死んじゃう役とかやってましたし(笑)。そんな中で、これは違っていた。だから、自分から遠く感じたのかもしれないです。

谷原章介

――なるほど。谷原さんは、作品世界に最初からすんなり入っていけたのですか?

谷原:正直言うと、最初に台本を読ませていただいた時は、どういう話なのかよくわかりませんでした。ずっと同じ場所が舞台になってはいるものの、時間が飛んだり、急に心象風景になったり、お話が結構忙しく展開していくし、ちりばめられたギャグのほうに目がいっちゃって(笑)。立ち稽古が始まってから、ようやく本筋が見えてきた感じでした。

阿部:そのギャグ的なところが、稽古の中で結構削られたから、そのぶん話はわかりやすくなったと思います。とはいっても、話の構造とか人間関係は複雑だから、それを伝えていくのは難しかったりするんですけど、やっていておもしろいです。東京公演では、毎回笑いもたくさん起きていて、お客さんに伝わってる感じがするんですよ。26年前の作品なのに、古くなっていないのがすごいと思うし、お客さんの笑いは減ってない感じがしますね。

――それはやはり、出演者の皆さんが、ご自分の役を魅力的に演じていらっしゃるからだと思います。谷原さんの若松(アキオの妹マリエをスカウトする芸能事務所の男)役にしても、端正で堅物な感じがとてもおもしろいです。

谷原:そう言っていただけて嬉しいです。若松は登場人物の中でもちょっと異質な存在。ほかのメンバーみたいにおもしろいことを自分からやっていくキャラクターではないので、最初は、僕はここにどう入っていけばいいのかな? と、地に足がつかない感じがあったんです。今は、若松にとってはマリエがすべてなんだなと理解しています。

――阿部さんも、やはりマリエのことが大好きな兄のアキオ役にハマっていて、チャーミングです。突如、哲学的思索を語るシーンも印象的に残ります。

阿部:自分が初演や再演を観た時も印象に残っていた重要なシーンなので、しっかりやろうと思ってます。詩的なところが素敵で、しゃべっていても気持ちがいいんですよね。松尾さんの『ファンキー! 宇宙は見える所までしかない』や『キレイ』にも出てくることだったりするので、そこはちゃんとお客さんにお伝えしたいですね。

谷原:きっと、この戯曲で松尾さんが伝えたいのは、そこなんでしょうね。パンフレットに載っている松尾さんのインタビューを読んで、なおさらそう感じました。それでいて、素敵なセリフや詩的で内省的な言葉を、ストレートにぶつけてこないところに、松尾さんの奥ゆかしさがあるというか。すごく照れ屋な方なんだろうなと思っています。

『ドライブイン カリフォルニア』

――そんなお二人が好きなシーンやセリフが、ほかにもあったら教えてください。

阿部:僕は「マジック」のシーンですね。ファンタジーで可愛いシーンだなと、いつも思ってます。谷原さんが頭に花を乗っけている感じとか、すごく好きなんですよ。余計にデカく見えるから、おもしろくて笑っちゃうし(笑)。

谷原:僕はユキヲくん(マリエの息子)の最後のシーンですね。マリエへの言葉が、やっぱりなんとも切なくて。

阿部:初演から田村たがめが演じている、そのユキヲの独白を僕は勘違いしていて。初演と再演を観た時は「ここは休憩なんだな」と思って、あまり聞いていなかったんです(苦笑)。実はとても大事なので、ちゃんと聞いといたほうがいいですよと、大阪のお客さんにはお伝えしておきたいです(笑)。

谷原:僕としては、皆川猿時さんがイカレたことをたくさん言っているところや、日に日に磨きがかかっている村杉蝉之介さんのおじいちゃんぶり。それから、麻生久美子さんのすごく素敵な声にも注目していただきたいなと思います。

阿部:そういえば、猫背(椿)は今回、初演と再演で片桐はいりさんがやっていたクリコという役をやるので、結構プレッシャーを感じていたらしいんです。でも、はいりさんが観に来てくださって、途中からずっと泣いていたというのを聞いて、喜んでましたね。初演や再演に出ていた人から褒められると、やっぱり嬉しいですよね。

――その猫背さんが再演まで演じていた石垣マリア役の川上友里さんも、破壊的なオモシロ可愛さです。先ほど阿部さんが「26年前の作品なのに古くなっていない」とおっしゃっていましたが、この作品の普遍性はどういうところにあると思われますか?

阿部:松尾さんの作品には、「生きる」や「死ぬ」ということが、どこかしら出てくるんです。もちろん、この作品にも。だから、いつであっても通用するんだろうなと思います。どの時代にもハマるから、おもしろいんだなと。

谷原:僕もそう思いますね。もう一つ、よく「完全に健康体の人間はいない」というように、どんな人も何かしら、歪みや欠けた部分を抱えて生きていると思うんです。この作品には、それをいろんな形に凝縮したような人たちが11人出てくる。だから、自分がどこかしらシンパシーを感じられるようなキャラクターがいると思うし、実は誰もが共感できるものがちりばめられていると思います。

――ありがとうございます。最後に大阪の皆さんへメッセージをお願いします。

阿部:サンケイホールブリーゼは、自分にとって初めての劇場なので、とても楽しみにしています。大阪の方に、また新しい『ドライブイン カリフォルニア』を届けられるように頑張ります。

谷原:大人計画が制作する舞台で大阪に行けることを、楽しみにしています。いわゆる大阪のスタンダードなお笑いとは違うのかもしれませんが、九州出身の松尾さんが東京で作りあげた笑いと、その芯の部分にある優しくて切ない物語をお届けしたいと思います。どうか楽しみにしていてください。

『ドライブイン カリフォルニア』

取材・文=岡崎 香 撮影=引地信彦

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