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絶不調の2学期、理由は?ぼっちのお祭り、つらい帰省がトラウマにー発達障害の私の子ども時代

LITALICO発達ナビ

絶不調の2学期、理由は?ぼっちのお祭り、つらい帰省がトラウマにー発達障害の私の子ども時代

監修:鈴木直光

筑波こどものこころクリニック院長

学校はなく、テレビもイレギュラー。「いつもと違う」ストレス

私にとって学校は心身ともにつらいところだったので、夏休みで学校に行かなくて済むのはある種楽なことではありました。

一方、夏休みは「決められたルーティンに従っているだけで勝手に毎日の生活リズムや活動が整う」という利点が得られなくなる時期でもありました。

朝は決まった時間に起きて朝日を浴びることもなく、好きなだけ寝ていられる。一晩じゅう本に没頭していることもできる。体育の授業がなければ自分で運動するタイプでもないので運動不足になり、頭ばかり使うことになります。

それで起こったのが、生活リズムの乱れと体力の低下でした。どんどん就寝時刻と起床時刻が後ろにずれ、身体がいつも重くてボーッとしていました。

夏休みになると、夏休み向けの特別番組ばかりになって、「いつものテレビ番組」が見られなくなります。

私は、ASD(自閉スペクトラム症)の特性から「いつも決まったときに決まった番組を見る」ことが精神安定剤のようになっていました。また私には、強すぎる刺激に晒されたり、それらがいつどのようにやってくるか見通しが立たないと心身ともにかき乱されるところもありました。

このため、特別番組の嵐に晒される中で、不安になったり吐き気がしたり、テレビで見た怖いシーンを夜中に夢に見たり、耳が疲れて頭痛がしたり……。

新聞も雑誌もチラシも図書館もみんな夏休み特集のオンパレードで、逃げ場がありません。このようにして私は調子を崩していったのです。

ピリピリした家族との密着生活

夏休みでつらいのは、「いつもと違う」ということだけではありません。家族と密着して過ごすこともストレスでした。

学校が休みで毎日家にいると、どうしても一日中、家族と顔を合わせることになります。同居の父方の祖父母と、いま思えばひきこもりだった伯父、そして兄と毎日一緒。

これだけでも息苦しさがありましたが、お盆ともなれば両親も休みになるので「海水浴やテーマパークに行く」「母の実家(祖母の家)に滞在し、親戚と法事に行く」などのお出かけイベントがあり、これがかなりしんどかったです。

お出かけは両親も良かれと思ってやってくれていたのだと思いますし、私も楽しくなかったわけではありません。良い思い出も心に残っています。

でも、私は遠出をすると、車移動や五感の刺激、精神的な緊張で必ず具合が悪くなるのですよね……。

車に酔って嘔吐してしまったり、すぐに疲れてしまって「帰りたい」とグズったりするのですが、そうなるたびに父や兄から怒られたり、イライラされたりする。申し訳なくて申し訳なくて、怖くて、だからといって元気になれるかといえばそんなわけないわけで……。

昔の人なので診断はありませんが、母にも発達障害と複雑なトラウマがあったのではないかと思います。

それで、夏休みに実家(私にとって祖母の家)に帰ると必ずひどい頭痛を起こして寝込むし、みんなで旅行に行くと緊張して一睡もできず、翌日は「具合が悪い」と言ってホテルで寝ていたりするのです。

母も不調、私も不調。そしてそれを見た父と兄がピリピリと不機嫌になる。家族でのお出かけで、皆が元気で楽しいまま過ごして帰ってこられることはありませんでした。

夏休みには、こちらが母方祖母の家に行くこともあれば、母方祖母がこちらに遊びにくることもありました。そうするともう大変なのです。同居の父方祖母と、遊びにきた母方祖母が何かと張り合う。父方祖母が母方祖母に意地悪したり、皆で楽しく外食中、母方祖母に向いているみんなの注意を自分に引き戻したいのか、わざと台無しにするような騒ぎを引き起こしたり……。

また、母方祖母は有能で快活な人でしたが、皆からいつも注目されて感謝され尊敬されていないとすぐに機嫌が悪くなるタイプ。

少食な私がお腹がいっぱいでも、母や父が祖母の顔色を伺って「せっかくおばあちゃんが買ってきた高いスイカ/つくってくれた美味しいごはん なのだから食べなさい、食べないと大きくなれないよ」などと言う。

実際に祖母は、私が美味しそうに完食したり元気な声でニコニコしてお礼を言ったりしないと子どものようにブンむくれ、「そないお邪魔やったら帰らしてもらおか?」などと嫌味を言い出して手に負えなくなるのでした。

1人きりの夏祭り

上に、母と私には似たところがあって、出かけると私も母も不調だった、ということを書きました。

母は当時には珍しくフルタイムで働く女性でしたが、旅行などの遠出以外でも、ふだん休みの日に出かけるということをしない人。私と同じで、きっと普段の生活で疲れ切ってしまい、休みの日は1歩も外に出ずにずっと寝ていたのですよね。

騒がしいところや人混み、日当たりが苦手なのも私と同じ。それで私には、「夏休みに母と2人で出かけ、どこかに連れて行ってもらって楽しく過ごした」という思い出がありません。

3歳年上の兄は両親に言われる限りはしぶしぶ私の世話をしてくれましたが、さすがに小学校高学年の歳の男の子の夏休みともなれば、クラスメートの男の子と好きに遊びたいはず。

それで、父は仕事でいない、母は家で寝ている、父方祖母は冷たい、祖父は不調、伯父は「恥ずかしいから外に出すな」とほかの家族が言う、友だちも1人もいない……という私は、地域の子ども向けの夏祭りにも1人で行ったりしていました。

当時は必死に「1人でだって楽しいもん」と自分に言い聞かせていましたが、今は思い出すたびに悲しくて泣きそうになってしまいます。

孤独な公園遊びでのチャージ

心身ともに疲れ果てたとき、私は1人で、近所の木がうっそうと繁った大きな公園に行きました。それで、遊具にもたれてひたすら木漏れ日を見つめたり、モグラの巣の数を数えたり、アリの行列を1時間でも2時間でも見つめたりしていました。

木や土の香り、ひんやりと湿った空気、静かな木陰、虫の声、時折飛んできて、肩や指先に止まるトンボ。そういったものたちが私の疲れた心身を癒やしました。

いま思えば私にとって、自然は「言葉が必要なく、排除もコントロールもしてこず、静かで快適な環境を提供してくれ、無条件でそこにいていい」という、唯一の安心できる居場所でした。

こうして束の間の息抜きを楽しんでいるとき、何度か不審者に声をかけられたりしたこともあります。私がいま無事でいるのは単に幸運なだけなのかもしれません。

2学期の絶不調

8月も20日を過ぎると、9月からの新学期を思ってだんだんと憂鬱になってきます。

2学期初日は無理やり起きてもまったく頭が動かないし、ちょっと歩いただけで足がだるくなり、息が上がるのでびっくり。

踵を返して家に帰りたくなる気持ちを必死に押し殺し、重い足を1歩ずつ運んで学校へ近づき、ついに教室のドアをくぐる、というプロセスには恐怖に近いものを感じました。

同学年の子たちと比べて身体が小さくひょろひょろで、成長も遅かった私。夏の間にいちだんと成長して大人び、健康そうに日に灼けて、生き生きとした表情で夏の思い出を自慢しあう同級生の姿を目の当たりにするのが恐ろしかった。彼らから嘲笑の混じったような視線を向けられるのも怖かったです。

たいてい、1〜2週間はお腹の具合も悪かったし、登校しただけで疲労困憊で、授業中にまっすぐ座っていられずに机に突っ伏しては先生に怒られていたような記憶があります。

大人になった今思う、不調の理由とできる対策

私は、今なら自分の特性を理解していますし、環境も自分で調整することができます。でも30年以上前だった当時は私を含め誰も発達障害やトラウマのことなんて知りませんし、子どもの教育をめぐる環境も今のように充実してはいませんでした。

だから、漫然と家族の状況や選択に巻き込まれ、自分の心身の健康にとってより良い生活習慣を心がけることもできなかった。それが残念でなりません。

「良かれ」で動くのではなく、本人の障害特性や性格、向き不向きを改めて確認して、できるだけ環境調整をする。夏休み中もできるだけ、将来の学校生活や社会生活に適応できるような生活リズムと活動内容を保つ。もしこうした対処に家族だけでは限界があるなら、専門医や各種支援者による指導や支援を受けることや、服薬といった選択肢を検討する……。

もしこうした対策ができたら、私のような子どももかなり元気に夏休みを過ごすことができるようになるのではと思います。

宇樹義子/文

(監修:鈴木先生より)

車酔いがあり、朝起きが苦手で昼まで寝てしまい、出かけると疲れて体調を崩し、夜更かしで生活リズムが乱れることなどから、恐らく起立性調節障害の併存もあったのではないかと思います。頭痛や立ち眩みもあったかもしれません。

起立性調節障害の併存があると昼夜逆転の生活になりがちです。そのため8月下旬から憂鬱になり、休み明けは不登校になることが多くみられます。また、夏休みはお子さんが家にいることで、親御さんにも負担がかかる期間です。

最近では放課後等デイサービスなどの利用でその負担を減らす傾向にあります。さらに放課後等デイサービスに行くことで起立性調節障害のお子さんは生活リズムを保つことができ、不登校を予防できるのです。トラウマや絶不調は単にASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如多動症)のせいだけではなかったのかもしれませんね。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。

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