the superlative degree、章人/SHINGO/YUJI/宏之で結成された新バンドによる9/20新宿LOFTライブレポート
9月20日(金)に新宿LOFTにて開催された、バンド・the superlative degree主催イベント『~新宿LOFT 歌舞>伎町移転25周年記念~the superlative degree presents「玉響」』のオフィシャルレポートが到着した。
大きな壁時計の針は、今も昔と変わらないまま動き続けている。1976年から1999年まで小滝橋にて営業していた旧・新宿LOFTにも飾られていたあの古い壁時計は今、歌舞伎町にある現LOFTのBARカウンター壁面で時を刻み続けているのだ。
このたび、the superlative degreeが主催するかたちで行われた『~新宿LOFT 歌舞伎町移転25周年記念~the superlative degree presents「玉響」』は、まさにこのタイトルのとおり新宿LOFTの大切な節目を祝うものだったわけだが、それと同時に昨年末に始動してまだ1年も経っていないthe superlative degreeにとっては6月に続いて2回目のライブであっただけでなく、初の主催イベントであるうえ、新体制になってから初のライブでもあった。かさねがさね、これはとても意味深い1日であったと言えるだろう。
なお、the superlative degreeとは1990年代後期から2001年にかけてALL I NEEDで活躍していたヴォーカリスト・章人が、HUSHやBEAUTY MANIACS~acalliを経て約13年間の引退期間を過ごしたのち、JURASSICのドラマー・SHINGO、HUSHのベーシストでもある宏之、章人とはacalliで共に活動していたギタリスト・YUJIとあらたに起ち上げたバンドとなる。そして、今回の初主催イベント『~新宿LOFT 歌舞伎町移転25周年記念~the superlative degree presents「玉響」』のタイトルは、彼らが今年6月に発表した初EP『導火』の1曲目を飾る「玉響」にちなんだものでもあった。
そんな記念すべき一夜を彩るべく、新宿LOFTに集結したのはいずれもthe superlative degreeの章人と深い縁を持つバンドたちばかり。たとえば、1番手のdieSは今年8月に行われたISSAYトリビュートライブでも章人と共演していた荒瀬大のソロプロジェクトで、年末にも再共演することが既に決定している。
2番手を担ってくれたCLOSEはALL I NEEDとほぼ同期と言っていいバンドで、実は解散時期も揃って2001年だったという。そんな彼らも2021年から活動を再開しており、ギタリストのKENJIに至っては今回のライブではthe superlative degreeのサポートとして参加してくれることになった。
また、トリ前の重要な場面で登場してくれたdefspiralは、彼らがまだ前身バンドだった時代から章人とは共演する機会が多々あった。特にベーシスト・RYOとは、章人の引退中も付き合いが続いていたのだとか。前身バンド時代も含めれば彼らは1990年代後半からシーンの最前線で闘い続けてきている存在だけに、ライブバンドとしての実力は言わずもがなの折り紙付きだ。
そうした良き仲間であると同時に、素晴らしき好敵手たちでもある3バンドたちがそれぞれのアプローチでイベントを盛り上げてくれた中、満を持するかたちでステージ上へと繰りだしたthe superlative degreeの面々は、まず「玉響」で生々しく熱い衝動を音として送りだし、新宿LOFTに集った聴衆の心を惹きつけることになっていった。〈たまゆら あやふや 確かに生きている〉という詞を力強く歌う章人のパフォーマンスも、若干硬さが感じられた6月の初ライブ時よりも伸び伸びとしているように見える。
「アイデンティティコード」で歌われた〈いつか死ぬ前に 終わる為に生きているんじゃ無い〉という歌詞にしても、今の章人が表現しようとしているのはオトナならではの余裕といった類いものとは全く無縁な、むしろ彼が若かった時よりもよほど切実で必死で真摯な〈君に歌う 僕は歌う いつか死ぬ前に いつか死ぬ前に〉という〈存在証明〉としての音楽にほかならない。むろん、バンドの放つ音たちもそんな章人の意思と完全にシンクロしている状況で、鋭い切れ味をともなったサウンドは聴き手の胸に容赦なく刺さってくるのである。かつてacalli名義でリリースした曲をEP『導火』でリメイクした「UNIVERSE」についても、the superlative degreeの打ち出す音は限りなく真っ直ぐで純粋だった。
「the superlative degreeです、どうもこんばんは。我々としては2度目のライブになりますが、1回目のライブのあとにちょっとメンバーが変わったんで、今日はCLOSEのKENJIさんのお力をお借しいただいてお届けしております。そして、新宿LOFT 歌舞伎町移転25周年ということでおめでとうございます!しかもうちみたいなぺーぺーに(笑)、こうした冠をつけたライブをさせていただいてありがとうございます!!」(章人)
確かに、始動からわずか2回目のライブで『~新宿LOFT 歌舞伎町移転25周年記念~the superlative degree presents「玉響」』というかたちでのライブが実現するというのは、そうそうあることではないように思う。これはハコ側との信頼関係があってこそ成り立つものであるし、the superlative degreeはきっと周囲に愛されているバンドなのではなかろうか。彼らはファンのみならず多くの仲間たちやさまざまな関係者たちとの絆に支えられながら、今さらに確かな足取りで前進していこうとしているに違いない。
「世の中では天変地異とかが何度も起こるし、人間の心もどんどん腐ってきてるような気がするけど、日本一のライブハウスである新宿LOFTが護ってきたカッコいいロックンロールの灯とか、人間としての正しい心の灯とか、そういうものは俺たち自身、おまえたち自身で灯し続けていかなきゃいけないんだと思います」(章人)
この言葉を受けて奏でられたのは、歌詞中の〈犠牲から得た知恵は未来に活かせるから〉というフレーズがやけに際立って聴こえてきた最新EPの表題曲「導火」。ドラマー・SHINGOの叩き出す説得力あるリズムを軸に、宏之の信念さえ感じさせるベースワーク、KENJIとYUJIがおりなす絶妙なギターアンサンブルは、章人の紡ぐ魂のこもった歌声に優しくあたたかな輝きを与えていたように思う。くわえて、これに続いたシリアスかつスケール感を感じさせる新曲「邂逅」も聴き応えは相当なものだったと言っていい。
「みなさん、今日はありがとうございました。メンバーの中には先輩から後輩までさまざまな人がいるdieS、久々に一緒にやったけど今日はとてもオープンなライブをしてくれた(笑)CLOSE、そして先週RYOのやってるラジオに出た時には真顔でアイツに“負けないっすよ”って言われたんですが、俺は言ってやったんですよ。“だって、うちまだ2回目だもん。勝てないよ”って(笑)。ただ、“もうちょっと経ったらわかんないよ?”って言い返せるようにしていきたいです。そう思わせてくれたdefspiralも含めて、みんな今日は出てくれて本当にありがとうございました。残りの曲数は少ないですが、来てくれたみんなも最後まで一緒に楽しんでってもらっていいですか? 飛ばしていくぞ! ちょっと懐かしい曲をやるんで暴れてってください!!」(章人)
章人がオーガナイザーとしての挨拶を終えたあと、最後に連続で場内に投下されたのはBEAUTY MANIACS時代の楽曲であるアグレッシヴチューン「fly」と、疾走感あふれるギターロック的な音が心地よくハジけた「リアリティ」。
たとえるなら、新宿LOFTのあの大きな壁時計が今も昔と変わらないままずっと時を刻み続けているように。新曲も懐かしい曲も、このたびthe superlative degreeが1本のライブの中で全てを“現在進行形”な音として聴かせてくれたことの意義は大きいはず。ロックの灯を護りながら、未来へと針を進めて行こうとしている彼らのこれからに期待したい。
ちなみに、次回ライブとなる横浜7thAVENUEでのdieS主催イベント『YOKOHAMA7th39thSPECIAL 2DAYSGIG』では前編・12月14日にはdieS、米澤誠一朗率いるW.A.R.P.、NEARMISS。さらに、後編・12月15日にはdieS、大正谷隆が在籍している子でびる隊変態支店、DISCORDが出演するだけでなく、オープニングアクトとしてHUSHまでもが出演するそうだ。必見案件故、是非とも!
取材・文=杉江由紀