「友だち親子」はヤバい関係? 【令和の最新子育て】教育評論家が迷信・ウソ・作り話・集団的カン違いをバッサリ!
昔からいわれている、子育て論や教育論にまつわる「迷信・ウソ・作り話・集団的勘違い」などを、令和の考え方や手法にアップデート。教育評論家の親野智可等先生が解説します。
【小学生ママに聞いた】子どもの放課後遊びでトラブルの経験はある?〔アンケート結果〕昔からいわれている子育て論や教育論には、社会の変化と研究の進展によって考え方が変わってきているものがあります。そのため、古い考えのまま子育てをしていると、子どもに悪影響を与えることが……。
情報のアップデートは必要だ、と語るのは教育評論家の親野智可等(おやのちから)先生です。子育てにまつわる迷信・ウソ・作り話・集団的勘違いなどに関して、令和の考え方や手法を親野先生が解説します(全3回の1回目)。
まだやってるの? 鬼やお化けを使ったしつけ
親御さんの中には、「ご飯を食べないと鬼が来るよ」「寝ないとお化けが出るよ」といわれて育った方もいるでしょう。あるいは、地獄を描いた絵本を使ってしつけをされた方もいるかもしれません。
しかし、我が子の子育てにまで、恐怖を使ったしつけはやめるべきだと親野先生はキッパリといいます。
「最近では、『鬼からの電話』アプリを使ったら、子どもがいうことを聞くようになったという話を聞くことがありますが、恐怖を元にしつけたり、相手をコントロールしたりする前時代的な方法はやめるべきです。
子どもを恐怖で抑え込む方法はある意味、即効的な効果はありますが、これは心理的な暴力にほかなりません。
子どもは大人が思っている以上に真剣に怖がっていますし、鬼やお化けでのしつけを続けていると、トラウマをつくる原因にもなります。
また、恐怖心が強い子どもは、やがて攻撃的になります。恐怖で相手を支配しようと思うようになるからです。
きょうだいや友だち間だけでなく、大人になってからの人間関係でも同じような態度で関係を築こうとするので、パワハラと受け取られる可能性があるでしょう。
さらに、脳科学の研究でも、恐怖を感じる子は脳が萎縮することがわかっています。ですから、しつけを鬼やお化けで簡単に済ませてはいけません」(親野先生)
昔の子育て法に決別を! しつけは手間がかかっても正道が一番
「親が子どもに伝えたい本当の道徳心や倫理観といったことは、愛情を元にして育ちます。
食事中に食べ遊びをやめなかったり、時間どおりに行動ができなかったりしても、恐怖心を使ってコントロールするのではなく、忍耐強く何度も教えてあげてください。
私は、子ども時代は親の愛情を毎日実感して、大きな安心の中で過ごすことがなによりも大切だと思っています。
その中で子どもが自分自身を正していけるように、親御さんは我が子を導いてあげてください」(親野先生)
親野先生直伝 令和の最新子育てメソッド
鬼やお化けを使ったしつけは、心理的な暴力。
子どもは真剣に怖がっています。
愛情を元に何度も教えて、子どもを導きましょう。
命令や指示で済ませてしまう「独裁的な親子関係」ではなく、「親友親子」を目指しましょう。 写真:アフロ
「独裁的な親子関係」では子どもは伸びない! これからの時代は「親友親子」を目指すべき
「親は子どもより上。子どもより偉い」という無意識の思い込みが大人にはある、と親野先生は指摘します。
「親だけではなく、学校の先生にもいえることですが、私たち大人は『相手はたかが子ども。どうせ何もわかってない。何もできない』と、心の奥深いところで思い込んでいることがあります。
そのため、子どもの話に共感的に耳を傾けて、民主的な話し合いができる大人は少なく、命令や指示で済ませてしまう人が多いでしょう」(親野先生)
子育てでは、子どもをひとりの人間としてリスペクトして接することが大事
「こういった大人の態度が、子どもの自己肯定感を下げて、精神的な成長にふたをすることが心理学の研究でわかっています。
なぜなら、子どもも『どうせ自分なんかたいした存在じゃない。ろくなことができない』という意識で生きるようになるからです。
毎日をどういう意識で生きるかはとても大事で、『どうせ……』という意識だと子どもは伸びていきません。
親が我が子の成長を願うなら、『たかが子ども』という意識ではなく、子どもをひとりの人間としてリスペクトして接することが大事です。
親御さんからリスペクトされている子は、そのリスペクトに応えようとして精神的に成長します。自分でよく考えるようになりますし、言葉や行動に責任を持つようにもなるのです」(親野先生)
親としてNOをいわなくてはならない場面では、どうすればいい?
子どもをひとりの人間として扱わなければならない理由は理解できましたが、子育て中は、親として子どもにどうしてもやってほしいことがあったり、NOをいわなくてはならない場面もあったりします。
親としての責任を果たしたいときは、子どもにどう伝えればいいのでしょうか?
「たとえば、『子どもたちだけで○○に行きたい!』といわれたとします。ここで親御さんは、いきなり『ダメ!』と上から目線で命令するのではなく、まずは子どもの行きたい気持ちに共感しながら、たっぷりと話を聞いてあげてください。
その上で、これはやはり危険すぎるので親として許可できないと思った場合は、最後に許可できない旨を子どもに伝えましょう。『ダメ!』のひと言で片付けるのではなく、理由も丁寧に伝えることが大切です。
このようにNOをいうときも、子どもをひとりの人間としてリスペクトして接してください。この関係は、独裁的な親子関係でもなく、友だち親子でもなく、親友のような関係です。
私はこれを『親友親子』と呼んでいます」(親野先生)
親野先生曰く、「子どもはリスペクトをしたほうが伸びる」そう。独裁的な上下関係でもなく、友だちでもなく、親友のような親子になって、お互いを尊重し合うことが令和の子育てでは重要です。
また、親野先生は次のことも付け加えます。
「人として許されないこと、他者の人権を侵害すること、反社会的なこと、危険なことなどに対しては、正対してしっかり指導しなければなりません。
それを見逃したら『親友親子』ではなく、『悪友親子』になってしまいます」(親野先生)
親野先生直伝 令和の最新子育てメソッド
令和の子育てで目指すのは、独裁的関係の親子でもなく、友だち親子でもなく、「親友親子」。
人として許されないこと、他者の人権を侵害すること、反社会的なこと、危険なことはしっかりいさめましょう。
「悪友親子」にならないように、常識的、指導的な対応は崩さないこと。
次回は、習い事や塾に関する迷信・ウソ・作り話・集団的勘違いなどについて解説します。
習い事をやめたいのに、やめさせてもらえなかった子どもに起こったこととは? 子どもが習い事の楽しさに気づくまで無理にやらせた場合に起こりうることなどについて、親野先生が回答します。
─◆─◆─◆─◆─◆─◆
◆親野 智可等(おやの ちから)
教育評論家
長年の教師経験をもとに、子育て、しつけ、親子関係、勉強法、学力向上、家庭教育について具体的に提案。子育て世代に寄り添ったSNS投稿も話題で、「ハッとした」「泣けた」という声が多数寄せられている。全国各地の小・中・高等学校、幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会、先生や保育士の研修会でも講師を務め、オンライン講演も経験豊富。著書に『親の言葉100 ちょっとしたひと言が、子どもを伸ばす・傷つける』(グラフィック社)など。人気マンガ『ドラゴン桜』(講談社刊)の指南役としても知られている。
取材・文/梶原知恵