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18世紀オーケストラ、11年ぶりに来日! アヴデーエワら、3名の“Real Chopin”がフォルテ・ピアノでショパンを紡ぐ

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『The Real Chopin × 18世紀オーケストラ』

世界有数の古楽オーケストラ「18世紀オーケストラ」による11年ぶりに来日ツアーがスタートし、3月9日(土)、初日となった京都公演(会場 : 京都コンサートホール)のオフィシャル・レポートが到着した。

今回のツアータイトルは「The Real Chopin」。ショパン(1810~1849)の二つのピアノ協奏曲に1843年製のプレイエルピアノで挑んだのは、ユリアンナ・アヴデーエワ(2010年、第16回ショパン国際ピアノコンクールの第1位)とトマシュ・リッテル(2018年、第1回ショパン国際ピリオド楽器コンクール第1位)という二つのショパン国際コンクール優勝ピアニスト。ショパンが思い描いた真実の音色を味わえる、またとない機会。

プログラムは、ショパンが憧れ、このオーケストラの創設者フランス・ブリュッヘンも好んでよく取り上げたモーツァルト(1756~1791)の交響曲第35番「ハフナー」からスタート。弦楽器は1stヴァイオリンから順に6-6-4―4-3の編成で、ヴァイオリンはピアノを挟んで向き合う対向配置。2管編成の管楽器含め、チェロ以外全員が立奏。雛壇1枚分高くなった位置で演奏するコンサートマスターと呼吸を合わせ、メンバーは演奏する。今回は指揮者がいないスタイルなので、コンサートマスターがヴァイオリンを弾きながら、ポイントでは弓や手で指揮をしながら指示を送る。オリジナル楽器でのモーツァルトは新鮮だ。慣れ親しんだピッチより少し低めでチューニングされているのだが、演奏が始まると多少感じていた違和感は瞬時に吹き飛んだ。微妙にテンポを揺らしながらも、音楽は生き生きと心地良いテンポで、推進力を持ったまま4楽章まで流れて行った。

続いてトマシュ・リッテルが登場し、ピアノ協奏曲第2番を弾いた。ピアノはステージ中央に、客席を正面に見る形で置かれていて、ソリストは弾き振りではなく演奏に集中。ここからオーケストラも座って演奏する。プレイエルピアノの響きは、モダンピアノとは全く違うもの。ショパンはこの響きを想定して作品を書いたのだと思うと、時空を超えて直接ショパンに繋がったようで不思議な気になる。音量や音の伸びなどモダンピアノとの違いが鮮明になったが、やはりこの響きには古楽オーケストラの柔らかな響きが良く合う。プレイエルの特徴がより良く判ったのは、コンサートの後半にユリアンナ・アヴデーエワが演奏した、世界で活躍する作曲家、藤倉大のフォルテピアノのための作品「Bridging Realms for fortepiano」を聴いた時。この曲は昨年10月、「第2回ショパン国際ピリオド楽器コンクール」のオープニング・コンサートで、世界初演され、この日が日本初演だった。聴き慣れたモダンピアノと比べると、タッチが浅く音量が小さく、ペダルの踏み込みが要求される発展途上の楽器だが、豊かな倍音で聴かせる唯一無二のフォルテピアノのサウンドは、その為に鍛えられたピアニストならではの熟練の技が成せるものだと承知していただけに、アヴデーエワが自在にプレイエルを演奏する姿を見て驚いた。彼女は既にフォルテピアノの奏法を手の内に入れていたのだ。

続けて演奏されたピアノ協奏曲第1番は唯々美しい! 冒頭のオーケストラによる前奏部分が短く感じたのは初めてのこと。18世紀オーケストラのサウンドはそれほど心地良い。アヴデーエワとオーケストラは、ブリュッヘンの指揮でショパンのピアノ協奏曲も録音しており、共演回数も多く、オーケストラとはファミリーのような関係なのだろう。絶対的な信頼関係の下に展開された演奏は、この曲の持つ概念をいい意味で変えてくれた。カーテンコールでアヴデーエワは、弦楽器のトップ奏者と握手をし、メンバー全員に目を配り感謝を表していた。そして、コンサートマスターとハグをし、客席正面とオルガン席に向かって全員でお辞儀。充実の時間は2時間ほどで終了。

11年ぶりの18世紀オーケストラの来日ツアーはこの後、大阪、東京、福岡とまわる。なんと、今後の公演は、川口成彦(第1回ショパン国際ピリオド楽器コンクール第2位)も全ての公演に登場するので、3人のソリストによるプレイエルの聴き比べが実現することに。日本人が大好きなショパン。彼の違った魅力を見つける素敵なひと時となる事は間違いない。

なお、今回の日本ツアーの模様は18世紀オーケストラやKAJIMOTO(招聘元)のInstagram、YouTube等でロードムービーとして随時公開されている。

TEXT : 磯島浩彰
PHOTO : ハヤシマコ

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