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宮本恒靖監督解任から1カ月、ガンバ大阪・松波体制の成熟度は?

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ガンバ大阪・松波正信監督Ⓒゲッティイメージズ

ついにクラブを去ったレジェンド

オリジナル10の名門ガンバ大阪に激震が走ったのが5月13日だった。育成年代からガンバ大阪で育ち、2005年には主力としてクラブに初のJリーグ制覇をもたらしたレジェンドであり、2018年途中からトップチームの監督として辣腕を振るっていた宮本恒靖監督を解任したのだ。

2020シーズンはリーグ戦2位、天皇杯準優勝など好成績を収めながら翌2021シーズンは開幕10試合を終えてわずか3ゴール、1勝4分け5敗という成績の責任を取った形だ。

後任は強化アカデミー部長の松波正信が暫定監督となり、その後6月1日、正式に監督就任が発表された。新体制での再出発だ。

ガンバ大阪のこの解任劇、ピッチ上では何が起こっていたのか?

宮本体制末期の異変

2021シーズンの入りは決して悪くなかった。今季の開幕を告げるルヴァンカップでは新布陣4-1-2-3を採用して川崎フロンターレを苦しめ、負けはしたものの手応えを感じていたはずだ。

しかしJ1開幕節を終えた2月27日の直後、事件が起きた。新型コロナウイルスのクラブ内での感染拡大の影響により、開幕直後なのにチームは約2週間の活動停止を余儀なくされてしまったのだ。

開幕節から約1か月後の4月3日に第2節が行われたが、それから3試合無得点が続いた。4月14日、開幕5試合目のサガン鳥栖戦でようやく初得点&今季初勝利を手にしたが、その後も点が取れない試合が続き、さらに追い打ちをかけたのは大阪で発令された緊急事態宣言のためにホームゲームの無観客試合を強いられたことだ。苦しいチーム状況の上にサポーターの力も失った。

そしてピッチ上にも異変が現れる。特に宮本監督最後の試合となった5月12日のサンフレッチェ広島戦。試合を観ていても戦術の上では悪いところはなかったように見えた。

ガンバの4バックに対し、数的同数を作ってプレスをハメられた時はGK東口やボランチを使って数的優位を確保、ビルドアップの形をちゃんと作っていたし、前線の受け手たちも広島の選手たちの間を取ろうと動き出していた。ボールの出口も用意できている。ボール支配率64%、パス成功率85%、シュート12本といったデータも残した。

しかし勝てない。おそらく小さいことが積み重なっていたのだろう。気になったのは選手の様子だ。励ましたり、褒めたり、プレーの合間や飲水タイムでお互いに確認したり、ポジティブなアクションがほとんど見られなかった。そして試合にも敗れ、宮本監督は解任となった。

松波監督で表面化したもの

そして就任した松波暫定監督で臨んだこれまでのリーグ戦5試合は、最初2敗したもののその後は2連勝と1引き分け。成績としては復調しているように見える。が、ピッチ上で起こっているのは決してそうとは言えない現象だった。

衝撃的だったのはFC東京戦。前半の飲水タイム前は最悪のパフォーマンスを披露した。同じ4-4-2で臨み、アダイウトン対策で本職CBの三浦を右SBで起用したが守備が崩壊。飛び出す東京の選手に付いていけないシーンが散見された。

高い位置を取った東京のSBへの対応がバラバラ、クロス対応でも中央でCBがマークしきれない、コミュニケーションをとれないのは相変わらずで、おそらく戦術的な指示を受けていないため斜めにポジションを入れ替える東京の選手の移動に対し混乱。楽々と前進を許していた。1-0で済んだのが不思議なくらいだった。

攻撃でもどう攻めるのか全く見えず、逃げの縦パスを簡単に回収される。選手間でポジティブなアクションが見られないのは相変わらず。監督交代のゴタゴタがかえってチーム状態の悪さを大きく映し出す形になった。松波暫定監督は早くも窮地に立たされていた。

「ガンバの歯車が噛み合い始めた」は本当か?

しかし突如潮目が変わった。徳島ヴォルティス、横浜FCを相手に2連勝したのだ。

徳島ヴォルティス戦は端から見ると、なぜ勝てたのかわからないくらいの試合だっただろう。しかしガンバはこの試合から新布陣3-4-2-1を採用。守備時5バックに変更したのだ。後半最後の15分間は防戦一方だったが3人のCBを中心に逃げ切った。

「システム変更がハマった。ガンバの歯車が噛み合い始めた」。何人かの発信者はこう話したが、本当にそうだろうか?

筆者は徳島ヴォルティスの若さと、守備の緩さが出た試合だったように思う。CBのコンビを組むドゥシャンと今季加入したカカ、そしてGK上福元の関係性がまだ構築しきれておらず不安定であり、数人を除く全員の対応が緩くなっているのは間違いなかった。

もともと個人能力の高いガンバの選手たちに簡単に前を向かせたり、前進させたりする場面が目立った。前半途中から後半にかけて徳島の甘さが消え試合を支配したが、後半のワンチャンスを事故的に宇佐美が決め、その後徳島の焦りと拙攻に助けられ逃げ切った。

ただ、ガンバが徐々にまとまってきているのも確かだ。

確かに最下位・横浜FCはプレッシングに問題を抱えていた。どうプレスをハメていくのか、ズレがよく見られ、攻撃でもガンバの危険な位置に選手を配置できない。

対してガンバは守備時5-4-1を完全にものにしたように見えた。間で受けようとする選手をCBとボランチ、WBが連携して捕まえることに成功。時々空いて使われることもあったが、基本的にコンパクトさを維持し球際も激しく横浜FCの選手に余裕を与えなかった。

苦悩する名門の現在地

現状を正確に表したのは湘南ベルマーレ戦だろう。

前半、流動性とIHの飛び出しによってゴールに迫る力を見せたベルマーレに大苦戦。クリアしてなんとか拾ってカウンターが精いっぱいだった。

しかし松波監督が動きを見せる。後半、5-3-2にシステム変更。中央の狙われていたスペースを消す作戦に出た。そしてプレッシングを改善。湘南の3CBに対しIHが飛び出してプレスする形を仕込んだ。これで主導権を取り戻したガンバは勝ち点1を獲得。

結論を話すと、ようやく当たり前のレベルに戻ったというのが正確なのではないかと思う。素晴らしい選手とスタッフを数多く抱える名門は、まだ最大値を発揮できていないはずだ。

ウズベキスタンで行われているアジア・チャンピオンズリーグの1次リーグ初戦では、タンピネス・ローバーズ(シンガポール)に2-0で勝利。これから待ち受ける過酷な真剣勝負で本来の強さを取り戻すことはできるだろうか。

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記事:KENTA

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