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【鎌倉 体験スポットレポ】建長寺 - 定例坐禅会で心と身体を整えた秋の夕暮れ

湘南人

鎌倉駅から小町通りを抜けて、北鎌倉に連なる緩やかな坂道をのぼっていく。長かった夏も終わり、ようやく散策しやすい秋が訪れたことを風が教えてくれました。鶴岡八幡宮を過ぎて、鎌倉七切通(トンネル)のひとつ「巨福呂坂切通」を抜けるとようやく見えてくるのが、大本山建長寺。建長5年(1253年)に鎌倉幕府5代執権北条時頼によって創建された、我が国最初期の禅寺です。

建長寺は日本最初期の禅の専門道場

初代住職には中国の僧である蘭渓道隆が招かれ、宗時代の純粋かつ厳しい禅がそのまま実践されていたそうです。さきほどの切通を下り、僧たちが街に托鉢の修行ヘ出掛けていく姿が目に浮かびました。

今回訪れたのはそんな由緒ある寺院で定例開催されている「坐禅会」に参加するためです。

初めての坐禅体験

この日の会場は史跡としても名高い庭園を持つ方丈(龍王殿)と渡り廊下で繋がる応眞閣。すでに40名近いの参加者が鎮座していました。外国からのお客様も数名いらっしゃいます。皆、折った座布団に骨盤が垂直に立つような座り方をしていました。

わたしにとっては生まれて初めての坐禅です。見よう見まねで同じように坐ると和尚様が入ってこられました。

「地球の中心に向かって根っこが生えていくのをイメージして下さい。膝が大地に食い込むように、重心を低くすることを意識して下さい。」

静謐な会場に和尚の声だけが響き渡ります。

「掌を上にして手を横に広げ、膝の上に置くと背筋は自然に伸びます。」

どことなくヨガのポーズみたいだと思いました。どちらも実践の基本が「呼吸」にあるという点では共通するものあるのかもしれません。

「呼吸にはいろんなやり方があるんですが、建長寺では声を出さないやり方で行っています。数字を数える方は心の中でお願いします。」

「数息観」と呼ばれる基本的な修行法です。息を吸うとき、吐くときに「ひとつ」「ふたつ」と数えることに集中することで呼吸を整え、雑念を払うんだとか。

「初心者の方にとっては少し長いかもしれません。眠気や心の緩みから覚醒するために警策をお受けになりたい方は合掌にてお知らせください。」

右肩を2回、左肩を2回が建長寺の流儀なんだそうです。肩を叩く法具の痛みを想像するだけで背筋が伸びました。

「坐禅では無の境地に達するとよく言われますが、自分を押さえ込むのが空の実践ではありません。」

そんな和尚の言葉の意味すら考えることをやめて、1m先にある畳の縁だけを見続けました。

心が解き放たれ、五感が研ぎ澄まされていく

どのくらいの時が経ったのかを確かめる術もない空間で、時間すら忘れ始めた頃、自分が日々の雑事から解き放たれているのに気がつきました。メールやSNSなど溢れる情報から解放されることの心地良さを感じました。

今日を生きながら、明日のことを心配している。今日を生きながら、昨日のことを思い悩んでいる。今を生きながら、常に次のことを考えている。時間に追われ、仕事や生活に追われている。そんな人生が果たしてしあわせだと言えるのだろうか。そんなことを考えていました。

五感が研ぎ澄まされていく実感がありました。聞こえなかった音が聞こえてきます。虫の声。鳥の囀り。葉音。風の歌。そして、わたし自身の命の鼓動。こうしている今も心臓が休むことなく動き続けているという当たり前に感謝しました。それが生きているということ。生きていくということ。人はただそれだけでしあわせなのかもしれないと。

忙しない現代人にこそ坐禅を

一時間の坐禅会を終え、デトックスされたような感慨に浸っていたわたしのところに「いかがでしたか?」と建長寺 広報担当の浅井正悟さんが来て下さいました。わたしは「心が軽くなりました」とお伝えしました。

「坐禅をしているといつもは聞こえない音が聞こえてきます。鳥の囀り、葉が擦れ合う音。それらの音は普段は聞こえていないわけではなく、聞いていないんです。わたしたちは外からもたらされる情報を取捨選択しながら生きています。その情報処理は心に大きなストレスを与えている。そういった情報を断つことで、心を解放してあげる。坐禅の後、心が軽くなるのはそういったことができた証です。」

定例坐禅会は、2003年に創建750年事業の一環として「一般の方にも定期的に気軽に坐っていただける場を」と始まったそうです。

「現代人は毎日忙しなく生きてますよね。身体もそうですし、頭もそう。そしてもちろん心もそうです。ひととき立ち止まって、自分の心を労ってあげる。メンテナンスしてあげる。身体と呼吸が整うと、心が整うと言われています。日々を乗り切っていくための方法のひとつとして坐禅を取り入れていただくこと。それがわたしたちの願いです。」

建長寺を開山された大覚禅師が好んだ言葉に「福山は揮(すべ)て松関を掩(と)じず 無限の清風来たりて未だ已(や)まず」というものがあります。一切の制「限」を「無」くし、ただ「清」らかな「風」のみを感じれば心は開放される、という意味なんだそうです。

「坐禅では無の境地に達するとよく言われますが、自分を押さえ込むのが空の実践ではありません。」

今回の坐禅を通じて、和尚様の言葉が少しだけ理解できたような気がしました。

あなたも心の窓を開いて「無限の清風」を感じてみてはいかがでしょうか、秋の建長寺で。

大本山 建長寺

拝観時間

08:30〜16:30

坐禅会は毎週金曜と土曜の15:30〜16:30(申し込みは不要・費用は下記の拝観料のみ)

電話番号

0467-22-0981

拝観料

大人(高校生以上)500円 小人(小中学生)200円

お支払いは現金のみ

障害者手帳、療育手帳をお持ちの方はご提示頂くと、ご本人と付添1名が無料

アクセス

JR北鎌倉駅よりバス5分、または徒歩15分、鎌倉駅よりバス10分、または徒歩30分

住所:神奈川県鎌倉市山ノ内8

駐車場:あり

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