“言葉にしなくても、わかる”。静かな時間のなかで見えてくるふたりの関係性──TVアニメ『上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花』第8話を天海由梨奈さん・富田美憂さんが振り返る【連載インタビュー第8回】
塀先生による人気漫画を原作としたTVアニメ『上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花』が、2026年4月10日よりTOKYO MX・BS11ほかにて放送中です。
本作は、大学へ進学した上伊那ぼたんが、埼玉県秩父市の学生寮での生活を通して、“お酒”をきっかけに寮生たちとの距離を縮めていく物語。お酒を通してゆっくりとほどけていく関係性の変化が、色彩豊かに描かれています。
アニメイトタイムズでは『上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花』のキャストインタビューを連載形式でお届け中。第8回は遊佐あかね役の天海由梨奈さんと北杜やえか役の富田美憂さんの対談インタビューです。
やえかとあかねの何気ない会話の中で見えてくるふたりの距離感、作品を通して生まれた天海さんと富田さんの関係性。そして本作ならではの繊細な表現について改めて振り返っていただきました。
【写真】 アニメ『上伊那ぼたん』天海由梨奈×富田美憂対談【連載インタビュー第8回】
“いい塩梅で返す”ふたりの絶妙なバランス感
──放送中のアニメ『上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花』。毎回味わい深いお話が続いています。SNSでもかなり話題になっていますが、おふたりのもとにも反響が届いているのではないでしょうか。
北杜やえか役・富田美憂さん(以下、富田さん):きてますね! 先日事務所に行ったときもスタッフさんから「観たよ」と声をかけていただいて。広い層に届いているんだなと感じました。
遊佐あかね役・天海由梨奈さん(以下、天海さん):素晴らしい……! 私は基本引きこもりなので(笑)、人と直接会う機会はあまりないんですけどSNSはずっと見ています。最近のXって自動的にオススメトレンドが出てくるじゃないですか。もう、一生いるんですよ『上伊那ぼたん』が(笑)。常にトレンドにいて、ずっと話題が続いているのもすごいなと思います。
──インタビュー前から楽しそうな話し声が聞こえてきて、おふたりの仲の良さが自然と伝わってきました。おふたりのソロインタビューで仲良くなったきっかけをうかがってはいるのですが、本当に奇跡的なエピソードでしたね(笑)。
天海:“スマホ事件”ですね(笑)。ある収録の帰り道にいろいろあって仲良くなって……。
──その日は天海さんが「絶対今日、富田さんと仲良くなるんだ!」と思いながら現場に来たとか?
天海:そうです(笑)。この作品ってメインキャラクター6人が登場して、それぞれ深い関係性の相手がいるのですが、あかねはやえかと。つまり、私は富田ちゃん。ずっと仲良くなりたいと思っていて。でも最初は席も離れていて、4話くらいまではほとんど話せなかったんですよ。
富田:そうそう、いちばん端の勢いだった! 天海ちゃん、紗弓ちゃん、吉能ちゃん、美菜子さん、私、ちゃんまき(河瀬茉希さん)で。
天海:それでスタッフの方にも「富田美憂とはどうしたら仲良くなれますかね?」って相談して(笑)。でも5話くらいのときに、二人きりになる機会ができたんです。しかも一緒に帰ることになり、さらに奇跡的に富田ちゃんがスマホを落とす事件もあって……一気に距離が縮まりました。帰り始めた段階では、まだよそよそしかったんですよ。
富田:私があまりに人見知りすぎて(笑)。
天海:でも一緒に40~50分くらい電車に揺られて。好きな食べ物などいろいろな話をして、そこからですね。
──まるでひとつのエピソードになりそうな話ですね。
天海:どうでしょう、「ここで仲良くなるぞ!」っていう下心がありましたからね(笑)。
富田:下心があったんだ(笑)。
天海:下心しかないでしょう(笑)。
──(笑)。そのやり取りを聞いているだけでも、おふたりの仲の良さがよくわかります。
天海:なんというか、富田ちゃんは私の扱い方がすごく上手なんですよ。
富田:え、本当?
天海:私の喋っていることって、8割くらい本当にどうでもいいことなんです。でもそれを、富田ちゃんがいい塩梅で捌きながら返してくれるんですよ。全部に全力で返していたら絶対に疲れると思うんですけど、ちょうどいい温度感で受け止めてくれる。いつも感謝しています。
言葉にしすぎないからこそ伝わってくるもの
──そんなふたりの関係性も活きる第8話だったようにも感じられました。やえかとあかねも“同じテンションで盛り上がる”というよりも、少しバランスを取りながら成り立っているというか。
富田:たしかに。我々も同じテンションで行きすぎないところはあるかもしれないですね。天海ちゃんの雑談やボケに対して、紗弓ちゃんや吉能ちゃんは同じテンションで返すんですけど、私は結構「ほーん」って受け止める感じなので。
天海:そうそう、そうかも。
──第8話のやえかの素直さもかわいらしかったです。
富田:かわいいんですよ。あかねに対しては素直にわがままを言っても聞いてくれるだろうな、という安心感があるんだと思います。ディレクションとしては、とにかく自然な会話にしてほしい、というお話がありました。
天海:そうですね。日常会話のところは特に、本当に普段の会話のような感じでやってほしいと言われました。
──第8話は、あかねが空気を読む、行間の多い回でもありましたよね。まず、あかねが少し落ち込んでしまうエピソードが描かれていました。
天海:そうですね。アフレコのときに思ったのですが、第8話は原作と少し雰囲気が違うなと。あかねの悩む様子が、アニメではより描かれている印象があって、私もお芝居として深く悩んでいるニュアンスを入れたんです。そういったところに映像になったアニメ『上伊那ぼたん』の、おもしろさを感じました。日々変わっていく我々の心情と同じように、映像面でも変わっていくところが良いなって。
それとやえかがいい意味でズバズバと、あかねが隠そうとしているものを引き出してくれるんです。だからあかねはただ暗くなるだけではなくて、やえかの明るさや無遠慮さに、いつも救われているんだろうなと。収録して、完成したものを見て、改めて感じました。
──やえかが「大丈夫?」と聞かないところも印象的ですよね。一連のやえかの伝え方が、すごく大人な気の配り方といいますか。
富田:たしかに。なかなかできないですよね。
天海:普通は「大丈夫?」って聞いちゃいますよね。でもきっと、やえかの支え方はそっちじゃないんだなと思いました。それは原作と台本を照らし合わせながら見ても感じていて。
富田:対あかねだから、というのもありますよね。これが後輩たちに声をかける場面だったら、また違う聞き方をすると思うので。
──富田さんは、第8話のアフレコで印象に残っていることはありますか?
富田:第8話は行間が多い回でもあったので、セリフがない時間もあったんです。最初は「何かで埋めなきゃ」と思うところもあったんですけど、ディレクションで「セリフの尺や映像に合わせることを気にしすぎず、ふたりの間合いでやっていいですよ」と言っていただいて。なので、間(ま)を埋めなきゃ、映像に合わせなきゃ、と考えすぎずに収録できた記憶があります。
──決して情報量が少ないわけではなく、むしろ感じ取れるものがぎゅっと詰まっている印象もありました。天海さんはいかがでしたか? 難しいと感じたところなどはありますか?
天海:いやもう、全部が難しかったです(笑)。アニメ『上伊那ぼたん』の作風って、行間も多いですし、生っぽくもできるんですけど、生々しくしすぎると現実味を帯びすぎてしまうというか……。
お酒を片手に人生のいろいろを抱えながらも、どこか癒やされるような作品だなとも思っているんです。でも、あまりにもリアルに寄せすぎると、今まさに同じような悩みを抱えている人にとっては、生々しく、重くなりすぎてしまう可能性もあって。その塩梅がすごく難しいなと感じていました。ただ、やえかがすごく自然に、良い形で引き出してくれるんです。完成した映像を見ても、いろいろ考えさせられるけれど、ちゃんと楽しく見られる。そのバランスがいいなと思いました。
あと第8話は、あかねもやえかも自分の気持ちをしっかり言葉にする場面が多かったので、その感情の機微は大事に演じたいと思っていました。
富田:たしかに、第8話以前はほかのキャラクターを客観的に見ている時間のほうが長かったので、よりその雰囲気を感じていましたね。
──ぼたんたちのやりとりを、おふたりはどのような気持ちで見られていたのでしょう?
富田:ちょっと“きゅっ”となるシーンもありますけど、どこか気楽に見ている感覚もありました。「ひゅ~!」みたいな(笑)。
天海:そうそう(笑)。ぼたんたちと比較すると、やえかとあかねは最初からお互いの方を向いていますよね。
──確かに、最初からそうでしたね。
天海:もちろん他のキャラクターとも絡みはあるんですけど、基本的にはずっとお互いを見ている関係だったので、アフレコでも少し外から見て茶化すような空気もありました。ドキッとするセリフがあると「いいね、やってるね!」「ひゅ~!」って(笑)。
チルな雰囲気も、この作品ならではの魅力
──第8話までを振り返ってみてやえかとあかねの関係性について印象的だったことはありますか?
天海:意外とこのふたりは7話まででは絡んでいる描写は多くないんだよね。
富田:第2話で喧嘩して仲直りして、そのあとも別行動が多くて。だからこそ、8話の“アスパラ”について話すシーンは印象的でした。アフレコ前に台本を読んだときから、すごく自然な会話だなって。とりとめのないやり取りなんですけど「このふたり、普段からこういう話をしてるんだろうな」と思えるリアリティがありました。
天海:8話以前でいうと、やっぱりやえかとあかねの関係性が見えてきた第2話ですね。ちょっとおっちょこちょいなやえかと、それを冷静に受け止めるあかね。その差がここから効いてくるんだろうなと感じました。
富田:この喧嘩のシーンは、オーディションのときの台本にもあったんです。アフレコのときに「ここ、あのときやったところだ」と思いながら演じていました。
──ところで本作のアフレコに挑むにあたり、何か参考にされたものはあるのでしょうか?
富田:特にこれ、というものはなかったですね。実はあまり考えすぎずに演じているというか……。
天海:決まった尺やセリフのリズムはもちろんあるんですけど、それに縛られすぎず、自由に演じていいと言っていただけていました。だから「こういうものを参考に」「こうしたい」といったものはなく、自分たちの中で自然に生まれる“間(ま)”を大事にしていました。
──それでは改めて、映像やサウンドも含めて、本作ならではの魅力について教えてください。
富田:もう全部すぎます(笑)。最初から最後まで本当にすごいですし、特に映像が“芝居をしている”感覚があります。我々の声だけじゃなくて、映像そのものが感情を表現していて、セリフがないシーンでもしっかり見せているのが印象的です。劇伴も落ち着いたものが多いなって。そういうチルな雰囲気も、この作品ならではの魅力だと思います。
天海:私は、話数ごとに作画監督さんや演出さんが変わるところがすごく面白いなと思っています。なかなか見ない作り方ですし、そのぶん毎話違った表情があるんですよね。
それに作品全体からすごく愛を感じるんです。スタッフさんもすごく情熱的で。だからこそ、いろんな挑戦をしている作品なんだろうなと感じていて。そんな作品に関われたことがすごく嬉しいです。我々は役として演じさせてもらっていますけど、我々の声がなくても成立させてくださる物語になっていて。オープニングやエンディング、そして劇伴も本当に素晴らしくて……。
──音楽面、すごく贅沢ですよね。
天海:OP曲「芽吹くとき」が入っているyonigeさんのシングルに収録された楽曲すべてが本編8話で挿入歌として使われていて。すごいですよね、「そんな大盤振舞ある?」って(笑)。
富田:ヤバいよね。
天海:本来、1話に1曲使っても贅沢なのに、それがいくつも用意されていて。音楽面でもしっかり支えていただいているのを感じますし……本当に愛しか感じないです。
富田:愛と言えば、アフレコが始まる前の段階で、アニプレックスのプロデューサーさんがそれぞれの事務所に来てくださったこともすごく印象的でした。
──へえ!
富田:「こういう施策をしようと思っています」「あらためてよろしくお願いします」と丁寧に説明してくださったんです。その段階で「これはすごい作品になるぞ」という空気を、みんな感じていたと思います。
天海:やりたいことや方向性をすごく丁寧に共有していただいて。そこで、ほかのキャストも教えていただいたんですが、「誰から知りたいですか?」と聞かれたので、やえかと答えました。
──作品への愛情がすごく伝わってきますね。
富田:アフレコでも、収録ブースを出るとスタッフの皆さんとお話しできたりして、すごくアットホームな雰囲気で作品作りができていたと思います。
天海:いつも差し入れもあって。
富田:美味しかったよね!
天海:塀先生からのものもあって、たくさん差し入れがあった現場でした。
──塀先生の差し入れ、想像ですがめちゃくちゃセンスが良さそうですね。
天海:すっごくおしゃれなものをいただきました。
富田:塀先生自身もすごくおしゃれなんです。本当ににぎやかな現場でした。
第10話は「これを待っていた!」といった内容
──さきほど天海さんがやえかのキャストのお名前をまっさきに聞いたという話がありました。おふたりが共演者としてお互いのお名前を聞いたときの印象も教えてください。
天海:まず「めちゃくちゃ(役に)合いそうだな」と思いました。私は純粋に富田ちゃんのお芝居が好きなので、近いポジションで掛け合えることがすごく楽しみでした。
富田:別作品の香盤表などでお名前を見る機会もあったので、まず「あ、あの天海さんだ」と思って……。
天海:未知数だったんでしょ?
富田:今、だいぶオブラートに包んだのに(笑)。でもその通りです。役どころ的にも一番近いキャラクターですし、自分が人見知りなので「仲良くなれるかな」と少しそわそわしながら現場に向かった記憶があります。
──それが今ではすっかり……。
天海:最初は本当にあまり話せなくて(笑)。でも何かあると隣に来てくれて。一緒にお菓子を食べたり、ディレクションで悩んでいるときも声をかけたりしてくれて……本当に支えてもらいました。
──ちなみにそのディレクションとは?
天海:それは12話だったんです。先のエピソードなので詳しいお話は避けますが「これで良いのかな?」とちょっと悩んでしまった場面があって。いちばん助けられたのはそこでしたね。
富田:でも、あんまりこれといったアドバイスはしていないんですよ。「大丈夫?」と言いながら、隣で雑談した記憶はあるんですけど、全然関係ないことも話しちゃったし。
天海:いや、そうやって寄り添ってくれたことがすごく嬉しくて。作品を作るのって、芝居だけじゃなく、コミュニケーションがあらためて大事だなと思っているんです。キャストの雰囲気でも作れるものがあるなって。
──逆に富田さんが助けられたというシーンはありましたか?
天海:ないですよ(笑)。
富田:あるある(笑)。場を明るくしてくれるんですよ。アフレコの時だけじゃなく、飲み会の席でもすごく気が利くんです。「イケメン力の高い」人。
天海:えっ……いやいやいや。
──すごく照れていらっしゃる(笑)。さきほど映像がお芝居をしてくれているという素敵なお話がありましたが、逆に声だけを聴いていても素敵だなと。いろいろな楽しみ方ができる作品だなと思いました。
天海:そう言っていただけると嬉しいです。ぜひ五感で楽しんでもらえたらと思います。
──では第9話以降の見どころについても教えてください。
富田:ここからぼたんといぶきの関係性が一気に深まっていきます。第9話以降はふたりのお芝居を見ながら「えっ、これ私が見て良いのかな」って思っていたくらいでした(笑)。
天海:第10話には塀先生が描き下ろした、あかねとやえかが中心となる、アニメオリジナルエピソードが登場します! ぜひ楽しみにしていてほしいです。
【インタビュー:逆井マリ 編集:西澤駿太郎】