【直木賞候補作を読む③一穂ミチさん「ツミデミック」】変更不可能な現状 分かち合う
静岡新聞教育文化部が200字でお届けする「県内アートさんぽ」。不定期で、7月17日に選考発表がある第171回直木賞の候補作を紹介する。第3弾は一穂ミチさん「ツミデミック」。10日のSBSラジオ「3時のドリル」では、同賞の選考予想を行った。
2021年に「スモールワールズ」で「静岡書店大賞」に選ばれた著者の(カッコ付きの)「犯罪小説集」。過去作同様、「家族のきしみ」を行動の背後に置く手際がさえる。さらに、本作では「コロナ」が家族を加圧する。「特別縁故者」の恭一、「ロマンス☆」の雄大はその典型。彼らと私たちは等しく社会の末端で生きており、等しく「コロナ」でゆがめられた社会で暮らしを営むしかない。変更不可能な現状を、登場人物と分かち合う。(は)