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唯一無二のピアノマン【ビリー・ジョエルのライブベスト】来日公演の予習はコレに決定!

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2023年12月20日 ビリー・ジョエルのライブアルバム「ビリー・ザ・ベスト:ライヴ!|Live Through The Years -Japan Edition-」発売日

ライブ音源からレアなテイクも!「ビリー・ザ・ベスト:ライヴ!」発売


ビリー・ジョエルがアルバム『ピアノ・マン』で本格的にデビューした1973年から50年後の2023年12月20日、彼が残した膨大なライヴ音源から構成されたベストアルバム『ビリー・ザ・ベスト:ライヴ!』(CD2枚組)が発表される。

『ビリー・ザ・ベスト:ライヴ!』は、2019年に配信限定でリリースされていたライブアルバム『Live Through The Years』をベースに、彼の本格的デビューのきっかけになった1972年4月のスタジオライブ音源による「キャプテン・ジャック」から、2008年12月にオーストラリアのシドニーで収録された「クリスマス・イン・ファルージャ」までの36年間に及ぶライブ音源からレアなテイクがプラスされ、全32曲が収録されている。

「素顔のままで」「アップタウン・ガール」「さよならハリウッド」「ストレンジャー」などのヒット曲も網羅され、CD初収録となるレア音源も満載、聴きごたえたっぷりのこのアルバムは、文字通りライブベストとして楽しむと同時に、ライブを通じて彼の50年のキャリアを追体験するヒストリー・アルバムとしても味わい深い作品になっている。

ピアノを弾きながら歌うビリー・ジョエルのイメージは?


ビリー・ジョエルといえば、1970〜80年代に、いくつものメロディアスでポップなヒット曲を生み出したアダルト・シティポップス系シンガーソングライターという受け取り方をしている人も多いんじゃないかと思う。さらに言えば、シンガーソングライターと言えばギターを弾いてパフォーマンスするのが普通というイメージがある中で、ピアノを弾きながら歌うちょっと変わったスタイルのアーティストというイメージもあるかもしれない。

ポップミュージックにおいて、ピアノはけっして特殊な楽器ではない。かつてはピアノで曲をつくるのが普通だったし、ニューヨークの音楽出版社が集まっていたティン・パン・アレイでは、レコードが普及する前は、ピアノのデモン
ストレーション演奏で楽譜を売っており、「ラプソディ・イン・ブルー」などで知られる作曲家のジョージ・ガーシュインもそうしたピアノ・デモンストレーターの1人だった。

けれど、1950年代のロックンロールやフォークソング・リバイバルの時代以降は、より簡単に扱えるギターがポピュラーな楽器になっていった。とくにロックンロールで使われた電気で増幅されたギター、ベース、そしてドラムスがつくり出す強くストレートな音像が、60年代のモノラルのレコーディング環境によくフィットしたことが大きかったのだろう。

この時代のレコーディング環境では、繊細なピアノのサウンドがアンサンブルの主人公になるには弱いと考えられたのだと思う。例えば、ビートルズもピアノを使ったけれど、中期までの作品では音楽の造形が深いプロデューサーのジョージ・マーティンが演奏して隠し味として使われるというイメージがあった。

もちろん、この時代にも、ロックンロールのジェリー・リー・ルイス、R&Bのレイ・チャールズ、ニューオリンズ・サウンドのプロフェッサー・ロングヘア、アラン・トゥーサン、ドクター・ジョン、レオン・ラッセルなど、ポップミュージック史を彩ったピアノ・アーティストもけっして少なくはない。

1970年代、トップアーティストとしてキャリアをかさねていくビリー・ジョエル


けれど、1960年代まではこうしたピアノ中心のアーティストは、ルーツミュージックなどへのこだわりが強いマニアックな存在と見られることが多かった。

そんな状況も、1970年代に入り変化が見られるようになった。レコーディング技術も進歩して、より繊細な演奏の表情も再現できるようになるにつれて、ピアノやキーボードを表現のメインにしたアーティストがまた注目されるようになっていく。エルトン・ジョンの『僕の歌は君の歌』(1970年)、キャロル・キングの『つづれ織り』(1971年)、スティービー・ワンダーの『トーキング・ブック』(1972年)ロバータ・フラック『やさしく歌って』(1973年)、ダニー・ハサウェイ『ライブ』(1973年)など、ピアノを主体としたアーティストのアルバムが大ヒットしていった。ビリー・ジョエルもこうした動きの中で脚光を浴びていったアーティストだ。

1949年にニューヨークのブロンクスで生まれ、ピアノが堪能だった父親の影響もあって幼いころからクラシックピアノを学ぶ。中学生時代からバンド活動を始め、ハードロックのバンドでレコードデビューするが成功せず、1971年にソロでインディーズからアルバム『コールド・スプリング・ハーバー』をリリースするがこれも成功しなかった。

けれど、ライブ演奏の素晴らしさが認められてコロムビア・レコードと契約し、1973年にアルバム『ピアノ・マン』を発表。このタイトル曲のヒットによって本格的なキャリアをスタートさせ、『ストレンジャー』(1977年)などの世界的ビッグヒットを放ち、トップアーティストとしてキャリアをかさねていく。

どんな音楽に触れ、どんな影響を受けてきたのかが感覚的に伝わってくるアルバム


簡単にビリー・ジョエルのプロフィールをたどればこういうことになるけれど、『ビリー・ザ・ベスト:ライヴ!』を聴くと、彼がその生い立ちのなかでどんな音楽に触れ、どんな影響を受けてきたのかが感覚的に伝わってくる。

サファリーズの「ワイプ・アウト」のドラムを模したという「プレリュード / 怒れる若者」では1960年代のサーフ・ミュージックの影響が表れているし、スペクター・サウンドをオマージュした「さよならハリウッド」や、アルバム『イノセント・マン』(1983年)収録曲からは1960年代初期のアメリカンポップスのエッセンスが感じられる。「イタリアン・レストランで」(1977年、アルバム『ストレンジャー』収録曲)にはアルバム『アビー・ロード』(1969年)の手法を使っていたり、ビートルズへのオマージュも随所に感じられる。

この他にも、ブルース、ゴスペル、ドゥーワップ、ロックンロールなど、若い時代の彼がのめり込んだであろうサウンドエッセンスが感じられる曲は多い。

自らの感性とクラシックの文法で整理したオリジナリティ


ビリー・ジョエルはこうしたルーツミュージックの要素をそのまま踏襲するのではなく、自らの感性とクラシックの文法で整理してアップデートさせたオリジナリティあふれる楽曲を生み出している。

たとえば「ウイーン」(『ストレンジャー』収録曲)は、『三文オペラ』などを手掛けたドイツの作曲家、クルト・ヴァイルの影響があるとビリー・ジョエル自身が語っているというが、聴くと、クルト・ヴァイルらしさもありつつ、よりメロディアスなポップスへと昇華させていると感じられる。同時代のアーティストで言えば、デヴィッド・ボウイなどの方がより強くクルト・ワイルの影響を感じられるという気がする。

ビリー・ジョエルの音楽には、彼が傾倒してきたさまざまな音楽のエッセンスが溶け込み、熟成されて息づいている。それらの音楽的エッセンスが、ピアノという楽器によって調合されてギターによって作られるものとは違う表情をもったメロディーとなり、ニューヨーカーの彼ならではの洗練されたセンスによって蒸留されることで極上のポップミュージックとなっていく。

その意味でビリー・ジョエルの音楽は、ルーツ・ミュージックのスピリットを継承したコンテンポラリーなピアノミュージックなのだと思う。

ライブアーティストとしての一貫したブレない姿勢


Photo:TOMOHIRO AKUTSU

もうひとつ、『ビリー・ザ・ベスト:ライヴ!』を聴いて強く感じるのは、それぞれの楽曲はバラエティ豊かで、しかも40年近くに渡る音源なのにもかかわらず、極端に言えば全体を通してひとつのライブのようにも感じられることだ。それは、作品づくりにおいては多彩でありながら、ライブアーティストとしての一貫したブレない姿勢が貫かれているからではないかと思う。

ビリー・ジョエルは50年以上のキャリアの中で、オリジナルアルバムをインディーズ時代を含めて12枚しか発表していない。最新作と言える『ファンタジー&デリュージョン』(2001年)はクラシックとしての楽曲アルバムであるから、『リヴァー・オブ・ドリームス』(1993年)以降オリジナルアルバムは発表していないということになる。だが、今もライブ活動は続けられている。そんなライブアーティストとしてのビリー・ジョエルの凄味を再認識させてくれるアルバム。それが『ビリー・ザ・ベスト:ライヴ!』なのだ。

ビリー・ジョエル「ビリー・ザ・ベスト:ライヴ!」収録曲

Information
▶︎ビリー・ザ・ベスト:ライヴ!
https://www.110107.com/s/oto/discography/SICP-31669?ima=0000&oto=ROBO004

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