【ネタバレあり】花王が本気で作ったホラーゲーム「しずかなおそうじ」がいろいろとシュールすぎて話題な件
高圧洗浄機でひたすら施設を洗い上げる『パワーウォッシュ シミュレーター』や、荒れた家屋をリノベする『ハウスフリッパー』など、汚部屋お掃除ゲームには謎の中毒性がある。時間を忘れて他人の家の掃除に没頭し、ふと我に返って自分のリアル部屋の汚さに気づく瞬間の虚しさといったら……。
掃除には適切なツールが欠かせない。なかでも花王のマジックリンシリーズやクイックルワイパーは、「ない家はない」というくらいの普及率ではないだろうか。そんな花王が、清掃シミュレーションゲーム「しずかなおそうじ」をSteamにてリリース。
なるほど、洗剤メーカーだけに適切なお掃除の方法を学べる販売促進ゲームかな……と思ったら「3D探索型ホラーアクション」と枕詞がついている。まさかホラーゲームだと……???
・「しずかなおそうじ」(無料)
相続したまま長年ほったらかしだった別荘の売却を決めて、掃除に出向く主人公。不動産屋が来るまでに作業を終わらせなければならない。
しかし、忘れ去られた家にいるのは主人公だけではなかった。視覚がない代わりに聴覚が異常に発達し、掃除の音に反応する “ナニか” が容赦なくプレイヤーに襲いかかってくる。音を立てたら即死……『クワイエット・プレイス』か!!
邸内は陰気で湿っぽく、古い日本家屋特有の不気味さがただよっている。なぜ登場人物はわざわざ「ひとりで」「夜に」「危険そうな場所に入っていくのか」という、ホラーもののお約束を踏襲してくれる。とりあえず昼間に出直したらいいんじゃないのかなぁ、ねぇ!?
決して豪邸ではないのだが、中はめちゃくちゃ広い。リアルでも田舎の中古売買物件は7LDKとか普通にあるからな。蔵と呼ぶほどではない室内物置や、磨りガラスの窓など「これ、ばあちゃんちにあった!」という構造物がてんこ盛りだ。生活用品はそのまま、主だけが急に姿を消して時間が止まったような空間だ。
作中には実在の掃除用具が多数登場する。異形の怪物が出現してもまったく動じない鋼メンタルの主人公が、「これが噂の○○洗剤か……!」みたいにいちいち大げさに驚くのがおかしい。読者に戦況を伝えるためだけに「周囲3km四方が吹き飛び草木も残らない、使えば術者も無事ではいられないという必殺技をまさかあいつはここで出すのか……?」とか説明するマンガのモブキャラだよ。
洗剤は、吹きつけてから一定の時間経過後に洗い流さなければいけないなど現実に即したルールがある。突然大きな音で脅かすようなジャンプスケアはなく、「早く早く、あいつが来ちゃう……!」とじわじわ焦らせる演出。
汚れがすっきりキレイになるのは気持ちよく、進捗状況もマップに表示されるので励みになる。しかし、いかんせんヤツが邪魔だ。いいところで茶々を入れやがって……
うわぁぁぁぁ、また来たぁぁぁぁ!!
反撃手段はなく、怪物が来たらとにかく逃げるしかない。しかし一般住宅の狭い廊下や縁側では逃げ場もない。筆者は50回くらい死んだ。直前に遊んでいたのがゾンビサバイバルの『7 Days to Die』だった筆者は、思わず手に持っていたマジックリンをマシンガンのごとく噴射しようとしたが、そんなアクションはなかった。
デスペナルティはとくにないので、何度でもやり直しが可能。ただし途中セーブができないことと、進行不能バグに遭遇して筆者は3時間くらいロスした。
鍵穴のない扉や隠し部屋など、バイオハザードのような「謎解き要素」もあり。これが意外に難しくて、暗号のありかなど最後まで見つけられないものもあった。ちょっとズルして、総当たりでパスコードを突破したのはここだけの話だ。
クライマックス、プレイヤーは無数の便器やバスタブが並んだ研究室に放り込まれる。これまでに得た道具と知識を総動員して汚れに対処するのだ。そうか、花王の社員はこういう場所で日夜、洗剤の洗浄力実験をやらされているに違いない。SAN値が削られるな……!
屋敷から無事に脱出できたらクリア。「入ってきた入口から素直に出たらいいんじゃね?」とか「こんな事故物件を平然と売っていいのか?」とかツッコミどころはあるが、もっともブッ飛んでいるのはエンディング曲だ。「なぜ!?」と言いたくなるようなミスマッチな音楽がエンディング到達者を讃えてくれる。
こればかりは記事でお伝えできないので、ゲーム実況などを探してみて欲しい(本作は配信許諾不要・収益化もOKなコンテンツとなっている)。
・最強武器「マジックリン EXPOWER 水アカ用スプレー」
ところで、物語の最終局面で手に入る「マジックリン EXPOWER 水アカ用スプレー」が気になる。終盤に登場するからには、RPGなら伝説級とか究極とか呼ばれそうな強力な武器だし、洗面ボウルにも蛇口にも鏡にも使えるという万能洗剤のようなのだ。
買っちゃった。実売価格965円と購入にはなかなか勇気がいる高機能製品で、普段だったら手を出さない。だけどゲーム中のウソみたいな汚れ落ち具合を見てしまうと、気になって仕方ない。
ずーっと掃除をさぼっていたリアル風呂場の蛇口。
スプレーして5分放置したら、スポンジなどで軽くこする。なお、ゲーム中では5分ではなく、ちゃんとゲームに即した秒数になっているので安心だ。
ウソだろ……!
「しずかなおそうじ」は2026年8月7日(金)までSteamにて無料配布中。互換性確認はまだだが、筆者の環境ではSteam Deckでもプレイできた。
ゲーミングパソコン持ってないよ、という人はゲーム実況を見ても楽しめると思う。ネタゲーかと思いきや、本格的なホラーを堪能できる「しずかなおそうじ」。筆者も一応クリアはしたものの、取りこぼしがたくさんあるのが明らかなので、周回プレイ確定。Steamでは「非常に好評」の評価を獲得中だ。
参考リンク:Steam「しずかなおそうじ」
執筆:冨樫さや
Photo:PR TIMES、RocketNews24.