蔦重として最後まで心を燃やし続けた──横浜流星さん特別インタビュー【NHK2025年大河ドラマ べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~メモリアルブック】
蔦屋重三郎役・横浜流星さん特別インタビュー
人物を「演じる」というより、「生きる」ように心がけていると常々語っている横浜流星さん。大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺~」で蔦屋重三郎の47年の生涯を生ききった今、何を思うのか──?
2026年1月30日発売となった『NHK2025年大河ドラマ べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~メモリアルブック』に掲載のインタビューの一部を、本誌のアザーカットとともにお届けします。
(※NHK出版公式note「本がひらく」から抜粋)
さまざまな役を生きてきた、そのすべてが今作に活きた
──蔦屋重三郎(以下、蔦重)役に決定後、どのような準備をしましたか? 準備期間と映画「国宝」の収録が重なった時期もありましたが、「国宝」での経験が「べらぼう」で活きた点はありますか?
まず、大衆文化の基礎を築き上げ、エンターテインメントを発展させた蔦重に敬意を払い、今に残る資料を読み込み、専門家の先生の話を聞いて、“蔦屋重三郎”を追求し続けました。そのうえで、脚本の森下佳子先生が作る世界の中で蔦重として生きることだけを考えていました。なので、映画「国宝」に限らず、自分の携わってきた作品、生きてきた人物、すべてが活きていると思います。
──蔦重の好きなセリフがあれば教えてください。
たくさんありますが……。「遊びじゃねぇから遊びにすんじゃねぇですか!」「おもしろくねぇ仕事こそ、おもしろくやんねぇと」(ともに第25回)というセリフは、蔦重らしさが出ていますし、何事においても物事に取り組むうえで大事なことで、自分自身ハッとさせられました。ほかには、「世のほとんどは素人じゃねぇか。素人もおもしれぇ、けど『通』も唸る。そういうもんにしねぇと『大当たり』なんか無理だろ」(第29回)というセリフ。すべての創作や娯楽に通ずる理想論かと思いますが、自分は役者として、作り手として、世に作品を届けるうえで大切なことだと感じました。それから蔦重のセリフではないのですが、須原屋市兵衛(里見浩太朗さん)の「知らねぇってのは怖ぇことなんだよ。物を知らねぇと知ってるやつにいいようにされちまう。間違ってることも正しいって信じたまま進んでっちまう。それこそ国益だって損なう。本屋にはな、より良い世のために知らねぇことを知らせてまわるって役目があんだよ。平賀源内風に言えば『書を以(も)って世を耕す』ってこった」(第41回)というセリフは、現代にとても刺さる言葉だなと思います。そして、最終回に蔦重が言った、「俺ゃ、死んだあと、こう言われてぇのでございますよ。『あいつは本を作り続けた、死の間際まで、書を以って世を耕し続けた』って」というセリフ。蔦重の気概を感じますし、自分も役者として、芝居をし続けたい、死の間際まで、作品を通して世を耕し続けたい、と強く思いました。
──蔦重がよく口にしていた“地口(じぐち)”の中で、お気に入りは?
「ありがた山」です。親しい仲間に気兼ねなく使えるので、一般にも広がるとおもしろいのではないかと。地口はユニークな言葉遊びで、娯楽の一つ。それを使いこなした江戸っ子は感性豊かだなと思います。
――蔦重は劇中、「写楽は平賀源内」という評判を広めるために奮闘しました。横浜さんはずっと「源内は生きていると信じている」と語っていましたが、台本がまだ手元になかったとき、先々の展開について制作陣から何か聞いていましたか?
基本的にドラマの台本は映画と違って最初からすべてが出来上がっていることは少なく、今回も特に先の展開については知らされていませんでした。そのため、「この展開になるならあの時こうしていたのに」と思うことは多々ありました。でもだからこそ、今を生きるしかない。自分は蔦重を生きていたからこそ、「源内先生の亡きがらを見ていない。生きている」と信じていました。これは私見ですが、作品が始まる前に、ある程度の流れを役者も理解できるようになると、日本のドラマの質はグッと上がると感じています。
──蔦重は劇中、松平定信(井上祐貴さん)、三浦庄司(原田泰造さん)、高岳(冨永愛さん)などと連携して、一橋治済(生田斗真さん)の“退治”に動きました。この展開をどう思いましたか?
正直、最初に脚本を読んだときは、一商人が“退治”に関わることに違和感がありました。しかも、蔦重が反発していた定信からの依頼という流れだったので、自分の中で葛藤がありました。でも、その展開がなければ「べらぼう」の世界で写楽は生まれなかったわけで、結果として感銘を受けています。森下先生の脚本は、町方の動きと政治の動きの混ぜ具合が巧みで、例えば、蔦重の生き方と田沼意次(渡辺謙さん)の生き方を相似形として描いています。蔦重と定信は、身分が同じなら馬が合っていたかも、と思えるような関係性に変わっていきました。森下先生の脚本ならではのおもしろさだったと思います。
1月30日に発売となった『NHK2025年大河ドラマ べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~メモリアルブック』は、
・主演・横浜流星の特別インタビュー
・名場面を振り返ることができる豊富な劇中写真
・今だから語れる出演者メッセージ
・オフショット
・衣装やセットなどの美術大特集
・心に残る劇中音楽ガイド
・全48回ストーリーダイジェスト
など、「べらぼう」の世界を満喫できる1冊です。
取材・文=髙橋和子 撮影=山田大輔
ヘア&メイク=永瀬多壱(VANITÉS) スタイリング=根岸 豪
横浜流星(よこはま・りゅうせい)
1996年生まれ、神奈川県出身。2011年、俳優デビュー。主な出演作に、ドラマ「初めて恋をした日に読む話」「私たちはどうかしている」「着飾る恋には理由があって」「DCU」、映画「きみの瞳が問いかけている」「嘘喰い」「流浪の月」「アキラとあきら」「線は、僕を描く」「ヴィレッジ」「春に散る」「正体」「片思い世界」「国宝」など。大河ドラマは初出演。