人気声優・福山潤さんのプロとしての思いが詰まった対談集 『福山潤 プロフェッショナルトーク』
SBSラジオ「TOROアニメーション総研」のイチオシコーナー、人気アニメ評論家の藤津さんが語る『藤津亮太のアニメラボ』。今回は福山潤さんの対談集『福山潤 プロフェッショナルトーク』についてお話を伺いました。※以下語り、藤津亮太さん
声優・福山潤さんが『監督』『脚本家』『アニメーター』と語る
『福山潤 プロフェッショナルトーク』は2021年に双葉社から出ています。双葉社の声優雑誌で連載していた対談をベースに加筆されたもので、アナウンサーの吉田尚記さんや音響監督の鶴岡陽太さん、お笑いコンビ・ハライチの岩井勇気さん、メカアニメーターとして超有名なアニメーターの山根理宏さん、芸人で日本語学者のサンキュータツオさん、脚本家の上江洲誠さん、富野由悠季監督との対談が掲載されています。
アニメスタッフ関係だと、鶴岡さんは『∀ガンダム』のときの音響監督で、福山さんの代表作である『巌窟王』でも音響監督を務め、上江洲さんは『暗殺教室』の脚本家、富野監督は『∀ガンダム』の監督と、みなさんそれぞれ福山さんと濃厚な接点があります。
山根さんも『超重神グラヴィオン』に原画で参加していて、当時制作現場とキャストで仲がとてもよかったというお話も出てきます。 だから、それぞれ全部話が深く、どういうことがプロフェッショナルか、どういう思いでそれぞれの仕事をやってるのかみたいなことがすごく丁寧に語られています。福山さんは対談のホストとして、インタビュアーにもなるし、逆に自分が聞かれたら答えもするという感じで、そこもすごくうまく回っていました。
その中で、福山さんが『∀ガンダム』の打ち上げのときに富野監督に言われた言葉を、改めて監督に語っています。その打ち上げでは、監督が参加したキャスト全員に表彰状を送るというイベントがあったそうです。そのとき福山さんは「君はもっと普通にやることを覚えた方がいい」という言葉をもらったと。
福山さんはそこからずっとそのことを考えていて、数年後に『リーンの翼』のオーディションを受けるとき、監督が「普通」と言っていたことの答えを知りたいと思って会場に行ったんだという話をされていました。
『∀ガンダム』も『リーンの翼』も作品の取材をいろいろしましたが、僕がこっち側で取材していたことの裏側で当時、福山さんがどんな思いで仕事をしていたかがわかって、そこがすごく面白いところでしたね。 ジャンル外の方との対談でも「プロフェッショナルとは何か」など、いろいろ興味深いお話が出てきます。そして、その向こうに当然、福山さんが声優という仕事をどう思っているのかが非常によく伝わってきます。
やっぱりアニメって、キャラクターひとつとってもリレーみたいなところがあるんですよね。脚本家が書いて、演出家が絵コンテを描く、アニメーターがお芝居をつけ、最後に声で命が宿る。キャラクターのバトンを次々渡していく。福山さんが、そういう意識をもってプロの声優として仕事をしていることがわかるので、改めて読んですごく面白かったです。気になる方は、ぜひ読んでみてください。