就学後、トラブル続出でメンタル限界。「しつけが足りない」だけ?気づけなかった発達障害【新連載】
監修:藤井明子
小児科専門医 /小児神経専門医/てんかん専門医/どんぐり発達クリニック院長
小学校1年生の終わりに発達障害の診断を受けました
息子のタクは小学校1年生の終わりに発達障害の診断を受けました。精神障害者保健福祉手帳は2級です。
タクは在胎30週で産まれてきた極低体重児で、赤ちゃんの頃はとても心配しましたが、元気すぎるほど元気いっぱいに育ってくれました。
現在は中学3年生! 義務教育も終わりに近づいてきて、これからの生き方を模索中です。
人の話を最後まで聞くのが苦手で、後先考えずに衝動的に動いてしまう……などの特性はまだまだ色濃くありますが、とっても優しい息子です! 今ハマっていることは、卓球と小説を読むこと。
個性豊かな家族を紹介します
妹こっちゃん・定型発達です。いわゆるきょうだい児です。
私はもっつん ・大人になってから発達障害と診断されました。精神障害者保健福祉手帳は3級です。
学生時代はずっと天然ちゃんと呼ばれていて、自分ではポンコツ人間だと思っていました。時間管理が特に苦手!!!
旦那パパもつ ・ハチャメチャな私と子どもたちを受け止めてくれる頼りになる夫。
ポジティブなんだけど、考え方が固くて発達障害への理解はまだまだ……。
常に走り回って騒がしい…激しすぎる幼少期で、母のメンタルは限界でした
初めての子育てで毎日疲労困憊でしたが、「あれ? この子って育てづらい?」 と思ったのは2歳頃。
2歳頃はイヤイヤ期と言われているので、ある程度覚悟はしていましたが、
・5cm程の段差を怖がる
・三輪車を後ろから押そうとするだけで泣きさけぶ
・ごはんを食べる手伝いをしようとすると猛烈に怒る
・後追いがなく、すぐ迷子になる
など、私は悩みに悩む日々でした。
そんな時にインターネットで見た「発達障害・多動児」という言葉が気になり、もしかして……と思うようになりました。
しかし周りに相談できる人がおらず、1人で悩む日々。
3歳児健診で保健師さんに相談したところ「考えすぎですよ、本当の多動の子はもっと大変ですよ」とアドバイスが。そのタイミングでたまたまタクはイスに座って遊んでいたのです。
それからは、どこかに相談しようと考えなくなりました。
私生活では離婚や引越しなども重なり、息子の発達障害のことをじっくりと考える余裕がなくなっていきました。あの時、保健師さんがおっしゃった「もっと大変な人がいる」その言葉が心に引っかかったまま数年過ごしました。
精密機械や鉱石が大好き! ガラクタは彼の宝物
小学1年生で発達障害の診断を受けたあとも、特性ゆえの行動なのか、悪いことと知っていてわざとやってる行動なのか判断が難しいことが多々ありました。
精密機械が好きだから、壊れた家電を分解用に与えると大喜び! しかし、だんだん壊れていない家電にも手を出すようになってしまい大変な目にあいました。
しつけが足りないんだと周りから叱咤されたことも。
私は、どうにかして息子をきちんと育ててあげたい! という思いが強くて感情が暴走したこともあります。思うように行動してくれない息子に対して、強烈な怒りが抑えられなくなったのです。それがキッカケになり、児童相談所のお世話になった時期もあります。
あの頃は本当につらくて……思い出すだけでも涙が出てきます。
それらのお話は今後、紹介させていただきますね。
つらい日々もあったけど、過去があるから今がある
子育ては大変なことも多く、発達障害があるとさらに何十倍も悩むことがあると思います。
1人で抱え込まずに、たくさんの人に相談することや助けを求めることがとても大切だと私は思います。
私自身の失敗談ですが、以前は実親には心配をかけたくないと思って相談をしていませんでした。「うまくやってるよ」「楽しくやってるよ心配しないで」と良い面ばかりを見せて自分にも言い聞かせていました。 しかし強がっていても問題を解決することはなく、どんどん悩みは大きくなる一方でした。
人に弱音を吐くのは、決して悪いことではありません。むしろ助けを求めることは、状況を改善する第一歩!現在の私は、実親を始め、学校の支援の先生や県の家庭支援センターに定期的に面談に行っています。
人の助けを借りながら、子育てを楽しいものにしていきたいですね。
執筆/もっつん
(監修:藤井先生より)
初回のコラムありがとうございます。
現在は中学3年生になるタクさんの育児を通して、さまざまな経験をされたと思います。一人で抱え込まず、相談すること、大切と分かっていてもなかなか行動しにくかったり、以前嫌な思いをすると行動に移すのを躊躇されることもあるかと思います。
「もっと大変な人もいる」の言葉にひっかりながらも、再度相談され、発達障害と診断された経緯なども今後お伺いしたいなと思いながら読みました。
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。