外国人のマンション購入 実態把握を優先し規制はペンディング│中山登志朗のニュースピックアップ
日本は世界貿易機関(WTO)発足加盟時にサービス貿易協定の留保条項を非設定
自民党の外国人政策本部は、外国人の不動産取得、特に市街地中心部でのマンションを念頭に置いた購入について、特段の規制を実施しない方針を固めた。現時点ではマンション価格高騰の一因と推測されるレベルであり、少なくとも主要因と判断できるだけの材料(データや調査結果)が整っていないというのがその理由だ。併せて、国の安全保障上重要な土地の売買について、国籍を問わず審査が必要な許可制を検討するなどの対策を優先する方針を政府に働きかけることが決まった。政治のスタンスは、経済対策・生活対策としての住宅取得ではなく、安全保障面での課題を優先したということになる。
ただ、この方針決定には異論を差し挟む余地はないとも言える。理由に示されている判断材料に乏しいとの文言は、確かなデータやエビデンスがないまま議論し方針を決める危うさを回避するという点で評価できる。
2025年11月に国交省が公表した2025年1~6月の海外に住所がある人が国内の新築マンションを取得した割合は、東京23区で3.5%、大阪市で4.3%といずれもわずかなシェアにとどまっていることが判明している(日本に居住する外国人がマンションなどの不動産を所有する割合は継続調査)。少なくとも不動産価格高騰の主要因ではないとのコンセンサスが得られているため、引き続き外国人所有の実態を調査・把握することが最優先事項となる。
そもそも、日本は1995年の世界貿易機関発足時にサービス貿易協定(GATS)が発効した際、外国人による土地や不動産の取得を制限する留保条項(例外規定)を設定しなかった。つまり、原則として完全な内外無差別というポジションを取ったことにより、日本はWTO加盟国の個人・法人に対して日本人と同等に土地・建物の売買を認める義務を負っていることになるため、規制することは極めてハードルが高い。
マンション価格高騰は外国人取得が一因なのか マネーゲームを背景とした買い進みか
新築マンション価格は周知のとおり、東京23区の平均価格が1億円を大きく超える水準でここ数年推移している。相続税対策として、また高水準で推移する株価を反映した資産の付け替え対象として、さらには値上がりすることが短期的にほぼ確実とみられるマンションへの投機需要(都心では竣工後の転売価格が分譲時の3倍以上となる例が少なくない)など、実需とは異なる需要も旺盛だ。価格が高くても、もしくは価格が高いほど購入の動機となるケースも多く、東京23区では“実需と投資の二段重ね”の分厚い需要が存在している。そのため、そもそも分譲価格は上がりやすい市場構造となっている。
また、円安による資材価格の高騰、人手不足による人件費の上昇、地価の安定的な上昇に加え、中東情勢の不安定化・長期化懸念による資材の供給懸念(ナフサショック)もあり、建設・供給コストも下がる見込みがないことが、マンション価格高騰の継続に拍車をかけていると言えるだろう。
したがって、都心近郊でのマンション価格急騰を抑制することを検討するのであれば、外国人の不動産取得について協議・検討する以前に、マンションの短期売買を抑制するべく、現在5年以内の売買に課される譲渡所得税39.63%を、例えば1年以内なら75%、3年以内なら50%などと短期であればあるほど課税率を引き上げるという方法もある。ただし、転売目的ではなく購入した人にも一律課税を引き上げるのかという問題が残っており、申告時の確認方法の策定など弾力的な運用も検討しなければならないため、議論の余地は残されている。
外国人の不動産取得を規制する方向に議論を重ねるのか、それとも投機的な動きを抑制するべく国籍を問わず短期売買に対する課税強化を打ち出すのか、国の慧眼が試される事案となる。
中山登志朗のニュースピックアップについて
LIFULL HOME'S総合研究所副所長兼チーフアナリストの中山登志朗が、不動産業界に関わる方なら知っておくべきという観点でニュースを厳選し、豊富な経験に基づくコメントとともに伝えるコーナー。業界関係者はもちろん、不動産に関心がある人にとっても、重要な動きを理解できるほか、新たな視点を得ることができるはずだ。
中山 登志朗
[オピニオンリーダー]株式会社LIFULL / LIFULL HOME'S総合研究所 副所長 兼 チーフアナリスト
出版社を経て、 1998年より不動産調査会社にて不動産マーケット分析、知見提供業務を担当。不動産市況分析の専門家としてテレビ、新聞、雑誌、ウェブサイトなどメディアへのコメント提供、寄稿、出演多数。2014年9月より現職。
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