神奈川県知事にインタビュー - 神奈川県知事 黒岩祐治の現在地
「湘南の地図」をつくる旅の折り返し
2025年3月に始まった『湘南人』の首長インタビューシリーズは、湘南エリアをかたちづくる自治体の現場を1つずつ訪ね歩き、これまでに鎌倉市・逗子市・葉山町・平塚市・藤沢市・寒川町・横須賀市の7首長に話を伺ってきました。
首長の言葉から各自治体の現在地が少しずつ立ち上がり、観光と暮らしの調和、自然環境の保全、都市基盤づくり、地域経済・人口構造の変化といった論点が重なり、湘南エリアを立体的に捉えるための素地が整いつつあります。
折り返しとなる今回は、市町を越えてエリア全体を俯瞰する視点を持ち込みます。話を伺ったのは、2011年から県政を率いる黒岩 祐治(くろいわ ゆうじ)知事です。
取材地となったのは、神奈川県庁本庁舎の3階南隅に位置する第3応接室(旧貴賓室)。昭和天皇が行幸の際に滞在した由緒ある部屋であり、創建当時の内装と調度品がほぼそのまま残っている空間です。格天井に吊るされた特注のシャンデリア、ドア飾りや家具にまで施された宝相華の文様など、戦前モダニズムと交差する和の意匠が目を引きます。
通常は一般に公開されていないこの部屋で知事へのインタビューを行えたことは、大変貴重な機会でした。歴史的な重みをまとった空間での対話は、今回の企画に独特の緊張感と厚みを与えるものとなりました。
湘南が共有する海の魅力、都市と自然の接点、オーバーツーリズム、多文化共生、そして"いのち輝く"県づくり。7つのまちで聞いてきた言葉を手がかりに、神奈川県のトップは湘南をどう見ているのかに迫ります。
夕暮れが近づき、窓の外の光がゆっくりと落ちていくなかで、ニュースキャスター出身の知事が見る湘南の全体像を伺いました。
湘南の可能性はどこまで広がるのか—— Feel SHONAN、海上交通、"湘南論争"を超えて
Q1 県では「かながわシープロジェクト/Feel SHONAN」や江の島起点の海上交通「かながわシーライド」、「三浦半島はイタリア半島」プロジェクトといった魅力づくりを推進する一方、湘南海岸の侵食対策(茅ヶ崎・二宮の養浜など)や「かながわプラごみゼロ」に基づく海洋ごみ対策といった課題対応にも取り組んでこられました。
湘南エリアの可能性と課題をどのように捉えてこられましたか?
湘南というのは日本でもっとも有名な海岸で、みんなの憧れなんです。神奈川の最大の財産の1つだと思いますね。
一方で、そもそも「湘南というのはどこなんだ」といういわゆる"湘南論争"があったわけです。大磯が発祥の地だとか、湘南といえば茅ヶ崎だろう、平塚だろう、逗子だろうとかいろんなことが言われてきました。
「かながわシープロジェクト」の立ち上げ
私が知事になってすぐに始めたのが「かながわシープロジェクト」(※)。神奈川の海の魅力をもっともっと高めていこう、限りない可能性をもっともっと高めていこう。
※神奈川県の海の魅力を発信し、国内外からの観光客を呼び込むためのプロジェクト。キャッチフレーズは「Feel SHONAN」。
海に関わるありとあらゆる関係者に集っていただきました。漁業をやられている方、それからレジャーですね、セーリングの担当者からダイビングの担当者、海遊びの担当者——幅広いステークホルダーに集まっていただいた。
そしてジャーナリストの木村太郎さんに座長になっていただき、議論を始めた。その時一番最初に議論になったのが、そもそも湘南とはどこなんだと。
"湘南論争"と「SHONAN!」
こういう論争にはいったん幕を下ろそうと。どういうことなのかと言うと、海外に向けて発信していこうじゃないかと。「Feel SHONAN!」という言い方をしようじゃないか。
「湘南」と書くからいろんな意見が出てくるんだけれど、「SHONAN!」と英語にしてしまえば論点を回避できる。「SHONAN!」は神奈川の沿岸部全部ということにしました。
利害調整の現場
そんななか、ステークホルダー同士が利害関係でぶつかることもありました。典型的なのはダイバーと漁業関係者の折り合いの悪さ。
もうそういうことは克服していこうじゃないかと。内向きで争っていても、湘南の魅力は磨かれていかない。
漁連の会長の高橋さん(神奈川県漁業協同組合連合会 高橋征人氏)が「漁業関係者とダイバーとのいざこざはもうやめましょう。一緒にやっていきましょうよ」と言われた。それによって実際に動いた。
たとえば葉山のダイビングショップは、浜から行くビーチダイビングしかできなかった。ボートダイビングをやろうとすると漁業関係者が反対するということがあった。
それをプロジェクトの議論の中で、ダイバーが乗る船を漁業関係者が出す、漁船でお客さんを連れていくということを始めた。まさに一体となって動き出したわけです。
協働が生んだ副次効果
ボートダイビングを始めてみると、新たなダイビングスポットが生まれ、葉山の海の魅力が高まった。
そればかりか、これはやってみて初めて気づいたことだが、ダイバーの船が出ている時には実は密漁者が来ない。私もダイビングをするからよく知っていますが、ダイバーはとても行儀がいい。絶対に海産物などを捕らないしね。
そうやってみんなで潜っていると密漁者が来ないことがわかり、漁業関係者にとってもメリットがあった。
"海上移動"という発想
このようにして湘南の魅力はまだまだ高めていくことができる。
ただ、いろいろとアイディアを出していくなかで、特に夏になると渋滞が激しいということが議題に上がった。移動が困難であるということ。人気の裏返しではあるが、渋滞は厄介。
その問題を解消するために、海で移動しようじゃないかと。「かながわシーライド」——水上タクシーで移動してはどうかと。
私も乗りましたが、逗子マリーナから江の島まで、海上を移動すると絶対に渋滞はないばかりか、移動プロセスがセーリングですからね。
ちょうど私が乗った日は天気がすごく良くて、マリーナを出た瞬間、江の島にバーッと向かって進んでいくボートの真正面には、巨大な富士山が見えるというね、絶景ですよ。
今では逗子マリーナ、葉山マリーナ、そして江の島を繋ぐ流れを作ったが、それを小田原や真鶴にまで、もっともっと海上移動の範囲を拡げると、湘南が持つ海の魅力がなおいっそう拡がっていくだろうなと。
民間からのアイディアも出てきていて、逗子マリーナを運営するリビエラグループさんが提案してくださったんですが、2年に一度「湘南国際芸術祭」というのをやると。まずは逗子マリーナから始めると言って、2023年11月、そうそうたる芸術家に集まってもらってシンポジウムや展覧会をやった。
将来的には湘南各所に地域ごとの特徴的な芸術の拠点を作って、海上交通で巡っていく。湘南全体を巻き込んだ芸術祭にできたらといった構想も、民間から出てきている。
海岸侵食と養浜
他方で、海岸が侵食される問題もあった。自然との闘いということだが、大きな台風が来た際に西湘バイパスの下がえぐられ、砂が持っていかれる。養浜をしっかりやっていかないと、せっかくの海岸線が守られない。魅力も何も言っていられない。
養浜に力を入れていくとなると、県の事業だけでは立ち行かないから、国にも申し入れて、国の直轄事業として進める。こうしてみんなで湘南の海岸線を守っていく体制が整ってきている。
オーバーツーリズムと多文化共生——"排除"ではなく、"設計"で乗り越える
Q2 オーバーツーリズムの議論が、移民政策の是非と交錯する場面があります。最近では、自民党総裁選での高市現首相の発言(奈良公園の鹿への暴力に関する言及)や、JICAの「アフリカ・ホームタウン」構想の撤回が話題になりました。一方、湘南では鎌倉高校前(江ノ電踏切)周辺の混雑・マナー問題が連日のように報じられています。
こうした社会的文脈を踏まえ、知事ご自身は移民受入れや外国人との共生に関して、どのようなスタンスや価値観をお持ちでしょうか。
多文化共生は神奈川が掲げてきた非常に重要な柱だと思いますね。横浜港を抱える神奈川県ですから、日本のいろんな文明・文化、サービス・商品が横浜から最初に入ってきた。横浜を代表として、国際的なまちとしての神奈川県。
いま179の国と地域の方が住んでいる。外国人は約28万人が住んでらっしゃる。その方々と共に生きるということが我々にとって一番大切な理念。我々はこれを守り通していく必要がある。
鎌倉高校前駅の混乱
これまで外国のお客様に来てほしいということで、いろいろなお願い、プロモーションをしてきた。結果、たくさん来てくださるようになった。その増え方があまりに急なため、一時混乱している部分もあるかもしれない。
しかし、お客様が来てくださるということは喜ばしいこと。それを迷惑そうな顔をして排除するなんてことはあってはならない。
端的な例が鎌倉高校前駅の踏切。"スラムダンクの聖地"ですね。単なる踏切なのに、人が殺到し、地元の皆さんも困惑されている。
そこに対して、ただ茫然と手をこまねいているわけではなくて、みなさんに見ていただくためのスペースを確保して、人を配置してそこへの誘導策を講じることで、この問題を乗り越えていこうとしている。
乗り越えていく姿勢
問題はあったとしても、知恵を絞って乗り越えていくことが大事であって、オーバーツーリズムで生活を脅かされるからみんな来るなと拒否する、そんな発想だけは絶対にしちゃいけないなと、私自身は思っています。
「ご自身らしさ」が表れた施策とは——すべては「いのち輝くマグネット神奈川」につながっている
Q3 首長の皆さま全員にお伺いしている質問です。
未病、犬・猫の殺処分ゼロ、コロナ禍での「かながわモデル」、神奈川版ライドシェア(かなライド@みうら)、再生・細胞医療の産業化(ライフイノベーションセンター)など、先進的な施策を数多く進めてこられました。
これまで実施したすべての施策の中で、ご自身の考え方・政治姿勢が最も表れていると感じるものはどれでしょうか。
全部ですね。
大きく言うと、「いのち輝くマグネットかながわ」という言い方をしていますけど。ひらがなで書いた"いのち"——これが輝く神奈川にしたい。「いのち輝くマグネットかながわ」。この言葉にすべての意味が込められている。
いのちが輝くためには何が大事か。医療の充実は大事だが、医療の充実だけではいのちは輝かない。農業、豊かな農作物が採れて、安全で美味しい農作物が採れて、それを食べていのちが輝くこともあるでしょうし、エネルギーの問題ですよね、クリーンなエネルギーが充分にないといのち輝かない。まちづくりの問題もある。まちを衛生的で文化的な暮らしができるようにしていかないと。
また、産業の下支えがないといのち輝かない。労働の問題、労働条件が過酷だったらいのち輝かない。教育だってそう、教育が充実していないといのち輝かない。
ありとあらゆるもの、全部が揃ってはじめて「いのち輝く」。
縦割りを超えてつなぐ
ところが、いま私が述べたそれぞれの項目というのは、国でいうと全部担当する役所が違う。役所が違うとどうしても縦割り行政の性質が出てきてしまう。隙間で「それはあっちの話だ」「これはこっちの話だ」というのがどうしても出てきてしまう。
我々が取り組んでいる「いのち輝く」は、たとえば医療の問題とエネルギーの問題を一緒に考えていこうじゃないか、健康の問題と農業の問題、福祉の問題と農業の問題、全部絡めていこうじゃないかと。これが我々のやってきたことなんです。
ですから、「いのち輝く」というコンセプトの中に、やってきた施策が集約されているんです。
そのなかでも超高齢者社会を乗り越えるモデルということで、ME-BYO(未病、みびょう)という考え方を出していますが、真っ白な健康があって真っ赤な病気があるのではなくて、白から赤、グラデーションで繋がっていますよね、健康と病気の間に境界はないですよね、これが未病ですよ。
"未病"という考え方
病気になってから治すのではなくて、未病の状態で、どこへ行っても少しでも白い健康の状態に持っていこうとすることが肝心で、それが「未病改善」(※)ということ。
※病気になってから対処するのではなく、日頃の生活において「心身を整え、健康な状態に近づける」という考え方。県では「未病改善」のための基本的な行動指針として、食生活の改善、運動、社会参加と3つの生活習慣の改善を県民に呼びかけている。
そのためには食事、運動、社会参加が不可欠。その未病を改善するためのアプローチと、最先端のテクノロジー——再生細胞医療やビッグデータ、ロボット技術、こういった最先端のものと融合させる。そうすることによって産業界が反応するだろうと考えています。
だからこれは産業施策でもある。案の定、未病産業研究会(※)には1200社を超える企業が参加している。さまざまな業態が参加しています。
※神奈川県が県民の未病改善の促進および未病産業の市場拡大を目的として、2014年8月にスタートした取り組み。
「マグネットかながわ」
もうひとつ、「マグネットかながわ」というのは、マグネットはもちろん磁石、つまり磁石のように惹きつける力を持った神奈川になろう。もともと神奈川はそういう力をポテンシャルとして持っていると思うんですけどね。
神奈川全体がマグネット力を持つだけではなく、各自治体がそれぞれのマグネット力を持つ。行きたくなる、住んでみたいと思う、そう思わせる力。
新たな観光の核と"マグカル"
三浦半島で言えば三浦半島の魅力をもっともっと活性化させていく、東京からこんなに近いところにこんなに自然豊かなところがあるのかと。
観光拠点は非常に重要という思いがある。私が知事になった当初、神奈川の観光地ってどこなんだろうなと考えた時に、まず浮かぶのは横浜、箱根、鎌倉。それ以外はどこなんだろうなと考えた時に、なかなか浮かばなかった。
それならコンペで選ぼうということになって、新たな観光拠点として、城ケ島・三崎、大山、大磯と3点が選ばれた。以降、これらの地域を観光の核づくり事業の要所として取り組みを続けています。
さらに言えば、文化・芸術の力によって人を惹きつける。マグネットカルチャー——マグカル(※)という施策ですね。
※文化芸術の魅力で人々を惹きつけ、地域のにぎわいを生み出すことを目指す、神奈川県独自の文化事業の名称。
このようにして、「いのち輝くマグネット神奈川」という施策の中ですべてが繋がっている。だから、「黒岩知事らしさとは?」と聞かれると「全部である」となる。
メディアと公共コミュニケーション——ファクトへのこだわりと、県民に「伝えてなんぼ」の姿勢
Q4 知事はフジテレビでキャスターを務められ、ワシントン駐在のご経験もお持ちです。そのご経験を踏まえ、メディア不信や誤情報が蔓延する"SNS時代"における「オールドメディア」の役割をどのように見ておられますか。
私がフジテレビのキャスターをやっている時に、一番こだわったのはファクト。事実に基づいているかということ。そこに対するこだわりというのは、相当徹底的にやっていた部分がある。
なんとなくみんなが言っているとか、なんとなく聞いてきたぞとかいう、"なんとなく"の話はいくらでもあるんです。そうではなくて、ファクトは何なのか、ということを徹底的にいちから調べなおす。これに対しては相当な力量を割いていましたね。
テレビ局というのは免許事業でもあり、公平公正ななかでやっていく必要があります。ある種の厳しい制約の中で、勝手なことを言っちゃいけない、デタラメなことを言っちゃいけない、というのが大きな使命感としてありましたよね。
いわゆるオールドメディアだなんだかんだと言われても、それを失ったらだれも見向きもしなくなってしまう。
一方で、ネットなどで次々に新しい情報が出てくる時代になった。この時代、一番怖いなと思うのはファクトチェックというものの曖昧さ。どれが事実でどれが事実でないのか、それが曖昧になってきていることに恐ろしさを感じる。
私自身、元フジテレビの社員だというだけで、ネット上でまったく身に覚えのないことを勝手に書かれることがある。どのファクトでそれを述べているのかと。一度出てくると、それが当たり前の情報のようになって拡がっていく怖さ。反論しようにも、反論するとますます注目が集まってしまう恐れがある。こういう情報の質に対して担保が取れない時代というのは、私は恐ろしいなと思う。
既存メディアへの思い
だからこそ、既存のメディアは今こそしっかりと歯を食いしばって、ファクトに対する徹底的なこだわりのもとに、ここに来れば、ここに書いてある内容はファクトに基づいた話なんで安心なんだという、それをキープすることに全力を注ぐべきなんだと思います。それができれば、ネットのメディアに負けることはない、負けちゃいけないというふうに私は思います。
その考え方は県の情報発信にも反映されていますか?
私が知事になってからね、「戦略的広報」というのを掲げています。広報に相当力を入れています。私自身がメディアの出身、キャスター出身でしたから、伝えてなんぼ、みんなに知ってもらってなんぼというところがある。
県の情報発信での実践
私が来た当時の県庁職員というのは——県庁職員は基本的に真面目な人が多いですから、全力をあげて政策を作り上げてくるわけですね。作り上げたらもう息が切れてしまって、「はいおしまい」というふうになっていた。
そうではなくて、それをどうやってみんなに知ってもらうのかということが本当はすごく大事なことなんだと。政策を作り上げるのと同じくらいの熱量でもってそれを伝えるということをしなくてはならないんだと。
しかも約920万人も人口があると、どんなに頑張って伝えようとしても、簡単には伝わらない。だから、徹底してやるしかない。各媒体を総動員して今やっている。
"攻め"の発信
私が知事になってすぐに開設した「かなチャンTV」、県が自分のネット番組を持っている。こういうのを県庁でやったのはたぶんわれわれが初めてだったと思う。
私自身は「教えて!黒岩さん」というコーナーで、県民の皆さんの疑問にこたえている。県庁アナウンサー(※)というのを作って、県からどんどん発信する。県民のみなさんが知りたいことを伝えると同時に、知ってもらいたいことを伝える。
※公募等により選考された県庁若手職員が、通常業務の傍ら、番組企画やレポーターを担当する。現在、10名の職員が活動している。
「県のたより」ひとつにしても、デザインとか構成とか、私が全部最後までチェックしていますから。そういうのも重要な媒体だと考えています。
また、私にはテレビ神奈川でレギュラー番組があるし、ラジオも横浜エフエム放送で2本レギュラー番組を持っています。1つは毎週、もう1つは月に1回発信している。
加えて、ネットでの多種多様な形での配信のほか、 J:COMで「月刊KANAGAWAタイム」という番組もやっていて、これは私が「キャスターと知事の二刀流で参ります」というのがコンセプト。ゲストを呼んで、県がやっているテーマについてじっくり掘り下げていく。
つづけてきた県民との対話
媒体での発信に加えて、直接的な県民との対話の場も重視していて、県民との「対話の広場」(※)もずっとやってきていて、15年間で1万5000人を超えた。
※知事が県内の各地域で県民と直接対話を行い、県政課題について意見交換をする場。2011年に始まり、2025年11月に100回目を迎えた。
この場でも私が司会進行と知事の二刀流で行くんです。キャスターとしての経験と知事の立場、この2つを合体させてやっているんですよ。
結びに——集まった声が示すもの
黒岩知事の言葉から見えてきたのは、湘南を一つの観光圏としてではなく、複数の価値と課題が重なり合う「動的な地図」として捉える視点でした。海岸線の保全、移動の仕組み、多文化共生、文化や産業の育ち方──いずれも個別のテーマに見えますが、実際には相互に影響し合い、地域の未来像を方向づけています。
これまで7つの自治体で聞いてきた声は、この大きな地図のなかで新しい意味を帯びはじめています。まちごとの個性は際立っており、その違いこそが湘南エリアのバイタリティであることも改めて感じました。
シリーズはこれから後半に入ります。次にどのまちを訪ね、どの視点が描き加えられるのか。
変化し続ける湘南を、これからも丁寧に追いかけていきたいと思います。
黒岩祐治プロフィール
氏名: 黒岩 祐治(くろいわ ゆうじ)
生年月日: 1954年9月26日
出身地: 兵庫県神戸市
趣味: 歌、ミュージカル、ダイビング
座右の銘: 「愚直」
【略歴】
1980年3月 早稲田大学政治経済学部卒業
1980年4月 株式会社フジテレビジョン入社
2009年9月 同退社
2009年10月 国際医療福祉大学大学院教授
2011年3月 同退職
2011年4月 神奈川県知事に就任(現在4期目)