Yahoo! JAPAN

未来につなげ、前を向いて頑張る輪島塗

TBSラジオ

実は今、輪島塗を応援するためのクラウドファンディングが立ち上がっていて、多くの支援が集まっています。(今日現在、残り38日で、目標額の216%!)

復活の意志のある漆器屋さんが、再び作れるために

このクラウドファンディングを立ち上げた、輪島市にある田谷漆器店10代目の田谷昂大さんにお話を伺いました。

「未来の輪島塗を注文していただくような形になってます。たくさんのお客様から、何か支援をしたいと言われまして、最初はお断りはしてたんですけども、小倉にある、うちの輪島塗を使って下さっているお寿司屋さんの大将から、人の気持ちに対しては、素直に受け取るべきだ、と言われまして、確かにそうだな、と。

で輪島の壊滅的な状況を見てて、自分たちの努力だけで、どうにか出来る問題でもないなというのはちょっと思ったので、これはやっぱり、助けて下さる方に素直に甘えるのが必要だと思って立ち上げました。

いや、ほんとにあの、もちろん金額も嬉しいんですけど、コメントが一番嬉しくて、それがやっぱり希望の光かなと思います。頑張ってください!復活してください!大好きです!とか、応援コメント見てるだけで泣けるんですよね。輪島塗のファンっていうのが可視化されてるっていうのが、このクラウドファンディングの一番いいことかなと思ってます。まあ現実を見ると未来に向けないんですけど、本当にたくさんの人の応援のおかげで前に向けてる、未来に向けてるような感じです。」

大変な状況で応援の声は嬉しいですよね。

輪島塗は高額なので、前払いしたら、いつ届くか絶対気になるはずなのに、いつでもいいよ、待ってるよ、と言ってくれることに、本当に感激していました。

今回のクラウドファンディングで頂いた注文は、できる限り多くの漆器屋さんに、均等に仕事が行き渡るように努力すること。つまり、復活する意思のある全ての漆器屋さんが、再び輪島塗を作れることが、輪島塗を継続できる最大のポイントになる、と考えていらっしゃいます。

分業で、それぞれの工程に職人がいる輪島塗

多くの人が応援する輪島塗。改めてその魅力について教えていただきました。

東京・日本橋にある和家具・漆器の製造販売・修理のお店、小林寶林堂の代表、國分孝一さんのお話です。

「輪島の場合はね、みんな分業で、下地師さんがいたり、中塗り師さんがいたり、上塗り師さんとか、みんな分かれて分業でやるのでね。

まあ綺麗さで言ったらば、他のものには代えられない美しさがあると思いますよ。深みがあるんですよ。やっぱり漆を何重にも重ねていってますのでね、そいで艶も漆を塗って、艶上げしてますから。ほんとに深みというのがあるのでね。それが他にない美しさですよね。

日本ではね、各地で漆器は作ってますけどもね、やはり塗りの中ではね、まあ私は一番上かな、と思ってるのでね、これはもう、無くなってはならないものだと思いますのでね、日本の代表的な伝統文化、その技術をしっかりと継承していっていただきたいなと思いますしね、世界に誇る輪島塗だと思いますよ。」

歴史もあるし、代表的な漆器ですよね。輪島の縄文時代の遺跡から漆器が出た、と國分さんが教えてくれましたが、これには驚きました。

小林寶林堂の店先には、輪島に送る修理を待つ家具や漆器が、梱包されて並べられていました。輪島塗は、工程ごとに細かく分業がされており、それぞれの技術を持った職人がいる。なので、輪島でないと、出来ない技術も多いのです。

(小林寶林堂で扱っている輪島塗のお椀。黒、美しいですよね!)

(漆黒の輪島塗。鏡のような艶がすごい!)

また、それぞれの職人の技術が重なっている輪島塗はとても丈夫なので、修理をしながら長く使えるのも魅力。だから、復興して技術が継承されるよう応援したい、とおっしゃっていました。

必ず、復活させたいと思ってます!

もちろん、田谷さんも、輪島塗を無くすわけにはいかない、と力強く話していました。

「この美しい日本の漆器文化を次世代に継承していくのが、普通の経営者と違って、それが俺らの社会的責任なんだ、っていうのは、父親がずっと言ってまして、その言葉も僕はすごくピンと来てるので、次の世代にそれを継承していきたいですし。

一番好きなのは、一人の職人じゃ作りきれないという、みんなで力を合わせて作っていくのが輪島塗の文化なんで、一つの器を作るのに6人から7人の職人が必要なのが輪島塗なんですね。どっか一つでも欠けると輪島塗じゃなくなるので、みんなでこの危機を乗り越えるっていうことが大事かな、と思ってます。

で、特に僕ら塗師屋っていうんですけれども、漆器の総合プロデューサーなんですが、塗師屋の中では僕が若い方なので、元気に「復興する」っていうのを、言っていくっていうのが大事かなと思いますし、必ず、復興させたいなと思ってます。」

何百年と受け継がれてきた輪島塗の伝統の技術。何としても次の世代へ継承したい、と一歩ずつ動き出しています。

田谷漆器店も、事務所も工房も地震で倒壊、一月に引き渡し予定だったギャラリーも朝市の大火事で燃えてしまいました。

(田谷漆器店 工房)

(田谷漆器店 事務所棟)

(田谷漆器店 ショールームと被害に遭った輪島塗)

だから、修理のために預かっているものが、まだすべては見つかっていない。大事にしているから、思い入れがあるものだからこそ、修理に出してくれたと思うから、非常に心が痛い。でも、待っていてくれる人がいるので、一日でも早く、少しづつでも、前に向かっていく、と話す32歳の10代目の声が、頼もしかったです。

【関連記事】

おすすめの記事